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勇者と魔王

新勇者はイメチェンした。

鼻毛を伸ばして、三つ編みにしていた。

どこをどうすれば、鼻毛が三つ編みになるほど伸びるのかというと、最近贔屓にしている魔女の作った毛生え薬を頭に塗ったのだが、なぜか鼻毛がもさもさ生えてきたのだ。

苦情をいうと、「あなたの毛根は死滅しているから、代わりに鼻毛が伸びた」と言われて、鼻毛がなぜか愛おしくかんじて、伸ばしていた。

三つ編みにできるくらい伸びたので、毎日ケアを欠かさず、風呂に入る時はトリートメントまでした。

ちなみに、一部の鼻毛がちぢれてアフロになっていた。

そんな恰好で、魔王浮竹のと勇者京楽の元を、新勇者はパーティーで訪れた。

「ふ、このふさふさした鼻毛のように、大物になった俺を見ろ!」

頭は、はげていた。

かつらを被ることを止めた新勇者は、ありのままの姿だった。

パンツを頭にかぶり、女物のブラジャーとパンツをはいていた。

「なぜこんな変態な恰好をしているかだと!?それは、驚く相手の顔が面白いからだ!」

「ちょっと、魔王さん、こいつどうにかしてくれよ」

「そうよ、魔王さん、こいつのおつむを元に戻す魔法はないの?」

新勇者のパーティーは、魔王魔王と浮竹を頼ってきた。

4月に花見パーティーをして以来、浮竹は新勇者のパーティーメンバーと少しだけ仲が良くなったのだ。

「そうは言われてもなぁ。ここまで変態が重症だとなぁ」

「いっそ、全部燃やしちゃえば?」

「そうだな。バーストロンド!」

「ふっ、甘いな!」

「何!?」

新勇者は、魔法のバリアを作って、浮竹の魔法を防いでしまった。

「この俺が・・・・・新勇者に魔法を防がれた?」

レベル500に近い浮竹は、特別魔法を弱くしたつもりはなかった。

普通なら、一発で全身が焦げて、着ているものは燃えていただろうに。

「ほれほれほれほれ」

なぜか長い乳毛を見せてくる勇者に、浮竹は悪寒を感じて、京楽の後ろに隠れた。

「ちょっと、新勇者くん。君が変態すぎて、うちの浮竹が怖がってるじゃない」

「ふはははは!俺のこのいかした姿に、全世界が感動した!」

「勘当の間違いじゃないの?バーストロンド!」

ぼっ。

今度こそ、新勇者のかぶっていたパンツに火がついた。

「あちゃーーー!!」

新勇者は、パンツを投げ捨てて、股間に吐いていたパンツを頭に被った。

「頭は防御しなければいけない」

あまりの変態な姿に、新勇者のパーティーはかける言葉もない。

「ふっ。この俺がそんなにセクシーだなんて、今更だろう?」

「きもいんだよ、この新勇者!」

「乳毛ひっこぬいてやる!!」

「あああん、やめてええ!乳毛はだめえええ」

くねくねする新勇者に、みんな悪寒を感じて、一斉に攻撃を始める。

「フレアウィンド!」

「エアリアルエッジ!」

浮竹と京楽が魔法を使うと、女僧侶は祈りをこめた。

「ホーリーブレス!」

祈りは天に届き、罰を新勇者に与える。

「ああん、股間がふるおっきするううう」

おっきした股間めがけて、天の雷がくだる。

「ぐぎゃああああああ!!」

少年魔法使いが、最後の一枚であったブラジャーを、魔法で焼いた。

「ファイアブレス!」

新勇者は、素っ裸になった。

「ああ、この開放感、これぞまさに勇者!」

「どう思う、京楽」

「いや、どう思うって聞かれても」

「お前があんな勇者になったら、俺はお前と別れるからな」

「いや、まずあんな風にはならないよ」

京楽は、フルチンでくねくねしている新勇者を指さす。

「このかんじ・・・・呪いか」

浮竹の魔力探知に、新勇者の魔力が少し歪であるのが分かった。

「全く、面倒くさい・・・キュアカース!」

浮竹は、フルチンの新勇者のために、呪いを解除する魔法を使ってやった。

「いやあああああ!!裸だああああああ!俺の服はどこだあああ!!」

正気に戻り、裸であることに恥を感じる、元の新勇者がいた。

「ああ、元にもどった」

「戻りやがった」

青年戦士と獣人盗賊は、ポテチをポリポリと食べながら、二人で新勇者の変態ぶりに呆れて、会話にも参加しないでいた。

「あの魔女か。おい新勇者、お前あの魔女の作った薬を使ったな?あの魔女は露出度高いしぼんきゅっぼんで、ここにいる女僧侶のような寸胴な体ではなく、魅惑的だが、あの魔女は魅了(チャーム)の魔法をかけて、変な薬を服用させて、その様を水鏡で見ながら笑っているぞ」

少年魔法使いの言葉に、寸胴呼ばわりされた女僧侶が怒る。

「ちょっと、あたしはそんなに寸胴じゃないわよ!」

「そんなこと、どうでもいい」

「どうでもよくないわ!」

「黙ってろ。新勇者、鼻毛を三つ編みにしだしたのも、あの魔女のせいだろう。いい加減、目を覚ませ」

少年魔法使いにビンタされて、新勇者は。

「ぶった!親父にもぶたれたことないのに!」

とかほざいていた。

とりあえず、まだおっきしたままの股間を隠すために、少年魔法使いはマントを貸してやった。

「あの魔女のせいなのか。あの魔女、俺に気があるそぶりしてたのに」

「お前みたいな変態に気がある女なんていない」

「酷い!」

「本当のことだ」

浮竹と京楽は、新勇者も、新勇者のパーティーも無視して、午後のティータイムを過ごしていた。

「どうでもいいから、帰れ」

「そうそう、帰って」

「魔王、お前が俺の呪いを解除してくれたんだろう!俺の面倒を見る義務がある!金貨10枚くれ!!」

「バーストロンド!!!」

新勇者は、浮竹の魔法吹き飛ばされて、窓の外からはるかお星さまになるのであった。

新勇者のパーティーは、そしてまた何の収穫もないまま帰るのであった。

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