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エンシェントエルフとダークエルフ40

人間社会と、魔王率いる魔族との戦争がいよいよ始まった。

だが、こんな日でもあくまで冒険者は冒険者で、傭兵ではないので戦争には出兵しない。

するのは王国や帝国の騎士や、兵士たちだ。

そんなこんなで、壊滅的ダメージを受けつつ、回復しつつあったイアラ帝国の騎士団も、またきな臭いことに巻き込まれようとしていた。

今回は、出兵する騎士たちに変わって、ダンジョンでスタンピード、いわゆる異常繁殖によるダンジョン外へのモンスターが溢れるを駆除する、定期的なモンスター駆除の仕事が回ってきた。

本来なら騎士団の仕事なのだが、魔族との戦争のせいでそれどころではないのだ。

浮竹と京楽は、Aランクダンジョンの異常繁殖したモンスターの群れを一掃していた。

「エターナルフェニックス!」

「カラミティファイア」

主に火属性の魔法で、出てくるモンスターを駆除していく。

魔石は念のため回収しておいた。

そのダンジョンは氷属性のモンスターが中心に出没するダンジョンで、氷女、アイスタイタン、アイスウルフなどが過剰繁殖していた。

倒しても倒しても、後から湧いてくる。

「寒いね」

「炎の魔法を出しているのに、敵が突っ込んでくる。こりゃ、今回駆除しておかなきゃ絶対スタンピード起こしてたな」

「そうだね。おっと、ダークフレア」

京楽は闇魔法の禁忌を放つ。

アイスウルフの群れに、闇の炎を投げると、それは巨大な炎となってアイスウルフの群れを消滅させた。

「京楽、魔石はちゃんと回収しておけ」

「ええ、こんな大量にいるんだし、めんどくさいよ。ダークフレア」

今度は氷女の群れを消滅させた。

「エターナルフェニックス!」

浮竹は、かろうじで魔石を回収できる程度の威力で殺していく。

普通のエターナルフェニックスでは、魔石ごと消滅しているが、大分威力を加減していた。

「ああ、もうめんどうだ。ダークフレア、ダークフレア、ダークフレア」

結局、京楽の魔法のせいで異常繁殖していたモンスターだけでなく、通常のモンスターも消し炭に変えられて、そのAランクダンジョンはしばらく深層までモンスターが沸かなくなるのであった。

浮竹が回収した魔石は、倒したモンスターの4割といったところだろうか。

それでも、冒険者ギルドで買いとってもらうと、大金貨400枚にはなった。

かなりの数を倒したので、しばらくの間あのAランクダンジョンではモンスターの沸きが甘く、深層まで行ってしまい、ラスボスにやられる冒険者がでてくるのだが、それはまぁ冒険者自身の責任となった。

「ええと・・・次はSランクダンジョンのモンスター駆除か。これは本腰を入れないとね」

「そうだな。行くぞ」

すでに何度かチャレンジしたことのあるダンジョンなので、空間転移でいけた。

キマイラ、コカトリス、バジリスクといった強力なモンスターが異常繁殖していた。

「ワールドエンド!」

京楽は魔法を放つ。

「クリエイトアークエンジェル、クリエイトロードオブサタン、3重詠唱【グラビティ・ゼロ】

ワールドエンドの禁忌でほとんどのモンスターの魔力を吸い込んで、3重詠唱の呪力魔法で異常繁殖したモンスターたちが、中身を大破させてひしゃげていく。

モンスターは、死ねば放置しておけばダンジョンが吸収してくれる。

冒険者の死体もまた然りであった。

「グラビティ・ゼロ」

また、3重詠唱の重力の魔法で、異常繁殖したモンスターたちを駆除して、ついでに魔石を抜き取った。

これといって素材になるモンスターではないので、死体は放置だ。

まだ、このダンジョンの深層には入っていない。

120階層まであるだが、80階層までしか到達していなかった。

80階層のボスが倒せずにいた。

80階層のボスは、エンシェントドラゴンであった。

いつか、ドラゴンを倒す、ドラゴンキラーを夢見て、二人は冒険を続けている。

「今度、エンシェントドラゴンに、挑むか」

「そうだね。80階層まではこれるけど、80階層を突破できずにいるからね」

ちなみに、最深部のボスはヒドラだった。

今はスタンピード対策で、ブルンを連れてきてはいない。

ちゃんと勝負を挑むなら、ブルンの神ヒールはどうしてもいる。

「なぁ、魔族と人間の戦争・・・お前の母親は、どうなるんだろうな?」

「さぁ?人間種族は弱いから、きっと大丈夫なんじゃないの」

「でも、師匠がいるだろう」

「そうだね。剣士の僕が、きっとなんとかしてくれるさ」

頼られないのは哀しいが、Sランク冒険者程度が首を突っ込んでいい戦争ではないのだ、今回は。

小さな小競り合いなら、依頼が回ってくることがあるが、全面戦争だ。

人間社会も魔族側も、どちらも大きな犠牲を払うだろう。

「とりあえず、Sランクダンジョンのモンスタ―駆除もおわった。一度、戻ろうか」

「うん。転移魔法かけるよ」

浮竹と京楽は、転移魔法でイアラ帝国の帝都アスランの冒険者前まできていた。

61~79階層ででた、ブラックサーペントやレッドサーペントを、大量にアイテムボックスに収納していた。

サーペント種族は肉が美味しい上に、皮は高級材料だ。

解体工房で100匹ほどのサーペントを出すと、解体工房の長が泣いていた。

「多すぎる・・・・解体には、2日ほど時間をくれ」

「うん、急いでないから」

「肉は少しだけ残しておいてくれ。料理に使いたい」

「あいよ。何人分を何食分だ?」

「2人分を3食分でいい」

魔石の買取り額は、大金貨1700枚だった。

2日後、ギルドの解体工房を訪れると、100匹分のサーペントの皮と肉を買い取ってもらい、2人分を3食分だけ残してもらった。

「100匹で、ちょうど大金貨1万枚だ」

「うわお、金になるねぇ」

「サーペントを定期的に狩る冒険者はいないからな。それができる奴は、ドラゴンを定期的に狙う。お前さんら、ドラゴンは倒せるんだろう?」

「さぁ?まだ、本気で挑んだことは2回くらいしかないから」

それには、災害ドラゴンのファイアドラゴンも含まれていた。

「いつか、ファイアドラゴンを退治してみたい」

「おお、叶うといいな。あれの討伐報酬金は白金貨2000枚だ。千年生きるエルフでも、3回以上は人生遊んで暮らせる」

「まぁ、今はこつこつ依頼をこなして実力をつけつつ、まずは普通のドラゴン退治だな」

「お前さんらなら、きっと近いうちにドラゴンも倒せるさ」

「そう言ってくれると嬉しいね」

こうしてスタンピード対策は終わり、騎士団の仕事は終わるのであった。

師匠である京楽の家には、魔族との戦争が起こってから、行っていない。行ってはいけないのだと、おぼろげながらに分かった。

藍染との決着をつけるのが、待っている。

師匠である剣士の京楽とその妖刀の精霊である浮竹と最後に会ったのは、半月前だ。

魔族関係で忙しくなると言っていた。

きっと、この戦争でもどこかで活躍しているのだろう。

「全てが終わったら、ぱーっと騒ぎたいな」

「あ、僕もそれに賛成」

「とりあえず、ブラックサーペントの肉で料理でも作るか」

「そうだね。高級肉だから、おしいくなるよ」

二人はマイホームに帰り、ブラックサーペントの肉でから揚げを作ったりするのだった。

本当なら、師匠のところに差し入れしたいのだが、今は叶わない。

早く、平和な時代がくればいいのにと、二人は思うのだった。

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