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堕天使と天使

「にゃあ」

ある日浮竹は、道端で黒い猫を見つけた。

その黒猫は、浮竹の足元にすりついて、離れない。

「こら、早く行け」

「にゃあああん」

右足を怪我しているようで、獣医に連れて行こうと思ったのだが、あいにく日曜でどこの獣医も休診だった。

深い傷ではなかったので、とりあえず家に連れて帰り、前の飼っていた猫用のケージいれて、ペットショップへいって、猫缶詰とカリカリとチュール、ペットシーツ、砂などを購入して帰宅した。

「にゃあにゃあああ」

ケージに閉じ込めっぱなしだったので、黒猫は外に出してくれと訴える。

前の愛猫が死んで、まだ3カ月だ。

ペットロスにも悩んでいたことだし、浮竹はその黒猫を飼うことにした。

猫缶詰をあげると、ぺろりと平らげてしまった。カリカリもあげたが、興味はチュールのほうにむいていて、仕方なくチュールをあげると、黒猫はにゃあにゃあと喜んで食べた。

「お前の名前は黒いからクロだ」

「にゃああああ」

その日から一人と一匹の生活がはじまるはずであった。

浮竹は独身で、現在一人暮らしをしている。

職業は翻訳家で、ドイツ語を翻訳していた。出版社から仕事内容がパソコンで入ってくるので、出社するというサラリーマン人生とは無縁だった。

愛猫を15年間飼っていたのだが、老衰で死んでしまい、ペットショップに寄っては、次の子を迎えるか悩み、保護猫も見てみたが、いまいちぴんとくる子がいなかった。

前に飼っていた猫も、黒猫だった。

まとわりついてきた時、前の猫を思い出して、怪我もしているしついつい連れ帰ってしまった。

「とりあえず、明日獣医に連れて行こう」

浮竹は、その日の夜普通に寝た。クロがにゃあにゃあいうものだから、自分のべッドの隣を譲ると、そこでクロは眠ってしまった。

朝起きると、ベッドが狭かった。

「んー、なんだ?」

クロのせいかとも思ったが、何やらもっとでっかい物体に抱きしめられているらしい。

「ぎゃああああああああああああ」

浮竹は悲鳴をあげていた。

べッドの隣では、布団をかぶっているとはいえ、明らかに裸の男性が、眠っていて、自分を抱きしめていたのだ。

「ふあー。もう朝?おはよう」

「ぎゃあああああ、お前は誰だああああああああ!!警察、警察を!!」

「ちょっとよしてよ。僕を拾ったのは君でしょ?」

男性の言葉に、浮竹はとりあず距離をとる。

「そんなに威嚇しないでよ。僕だよ。君が名付けたクロさ。本名は別にあるけどね」

ちょうど、右足の怪我をしているところに、昨日浮竹はハンカチを巻いて応急手当をした。

ちょうと右手首に、そのハンカチがあった。

「はぁ!?クロが人間!?そんな馬鹿な・・・変な夢だ。寝直そう」

現実逃避する浮竹に、クロはクスりと笑って、背中の翼を広げた。

「僕の名前は京楽春水。黒猫は一時的な姿で、本当は天使だよ。おっと、元天使というべきか」

「はぁ!?」

浮竹は、壁でゴンゴン頭を殴っていた。

「僕は堕天使さ。人間と悪魔と天使の女性や男性と遊びまくっていたら、神様に怒られて天界から追放されちゃったんだ」

「よくできてる翼だな」

浮竹は、京楽の翼を触ってみた。

暖かく、ばさりと動いた。

「本物・・・・・」

「ということで、今日から君が僕のご主人様だから、よろしくね」

「よろしくね・・・・・じゃない!警察、警察!!」

京楽は、その辺にあった浮竹の服を着て、とりあえず裸でいることを止めて、浮竹を背後から翼で抱きしめた。

「ああ。俺の人生、これからどうなるんだろう。とりあえず、自己紹介だけはしとく。浮竹十四郎だ」

こうして、二人の生活が始まった。

京楽は気ままにふらりといなくなる。とりあえず、浮竹は仕方なく京楽の服を下着から靴下、靴に至るまで、買いそろえてやった。

そうでもないと、勝手に浮竹の服や靴で消えてしまうのだ。

黒猫でいる時間も長く、基本は猫なのだが、食事の時間になると、家事がへたくそな浮竹の代わり、京楽が家事をしてくれた。

たまっていた洗濯物とか洗い物をしてくれて、何故か一緒に買い物に出かけて、その日の食べるものを購入する。

京楽は人間の食事をした。

料理の腕は、お前そこらへんのレストランのコックかよってくらい、おいしい物を作ってくれた。

シャワーも浴びるし、服も着替えるし、寝る時はベッドが狭いので、猫になってもらった。

浮竹は収入はいい方なので、京楽一人くらいを養える収入はある。

でも、京楽は無職のまま、だらだらと過ごして1カ月が経った。

「なぁ、京楽」

「なんだい、浮竹」

もう見慣れてしまったので、浮竹は京楽が堕天使であることを受け止めていた。

「お前、昼の時間とかいないのに、何をしてるんだ?」

「やだ、僕に興味もちゃった?」

「違う、ただ純粋に」

「人間の女の子と遊んでる」

そう聞いて、浮竹はむっとなった。

「・・・・家賃を払え」

「ええっ、急にどうして」

「昼間からぶらついてナンパしているなんて・・・・」

浮竹は、心の何処かで寂しいと感じた。

「ごめん、余計な心配をかけたね?これからは、ちゃんと昼もいるから、泣き止んで」

その時、初めて自分が涙を流しているのだと分かった。

「これは、目にゴミが!」

「うん、そうだね」

京楽はどこまで優しかった。

浮竹は孤児であった。高校まで施設で過ごし、大学生になると同時にドイツ語の語学を習得して、ドイツに留学もした。

大学を卒業する頃には、英語もドイツ語もペラペラになっていた。

奨学金で学校に通っていたので、生活費だけをなんとかバイトで賄って、無事ドイツ語翻訳家として、小さいながらも立派な出版業界に入った。

仕事は自宅でOKだったので、浮竹は愛猫と一緒に、気が向いた問に締め切りまでに翻訳して、猫みたいな気ままな人生を送っていた。

「泣かないで」

抱きしめられて、浮竹の中で何かが弾けた。

「ああ、やっぱり、君はそうだったの。匂いで分かったんだよね。君は、天使だ。しかも上位の」

「はぁ!?俺が天使!?冗談も休み休み言え」

「じゃあ、その背中の翼は何?」

気づくと、背中には6枚の翼があった。

「それは最上位天使、セラフの証。君には、セラフと人間の匂いが混じっている。片親のどちからがセラフで、どちらかが人間だったんだろうね。人間とのハーフの天使は、幼少期まで育てられると、天界から追放されるから」

「俺が、セラフ・・・・・・」

京楽と接触したことで、これまで封印されていた浮竹の記憶が蘇る。

母であった大天使ガブリエルの元で、育った。たくさんの人間と天使のハーフたちと共に。

年齢が8歳になると、大天使ガブリエルは上からの命令で、子供たちを人間界に置き去りにした。

記憶の全てを奪って。

そうして、保護されて人間の施設で育ち、人間と天使のハーフは人間として生きていく。

ただ、天使と接触すると、記憶が戻る。

その時は天使として生きるのも自由とされた。

「ガブリエル母さん・・・・・・」

「おや、君の母役はあのガブリエルかい。あの乙女は優しいからね。それにすごくうまそうだった。あの子に育てられた君も、僕好みですごくおいしそうだ」

「俺を、食べるのか?」

「食べたいね。でも、別の意味で」

浮竹は顔を赤くして、京楽をクッションで殴った。

「俺はセラフと人間とのハーフだが、人間として生きる」

「ええ!セラフになれば、永遠を約束されるよ。平和な魂の番人として」

「俺は、今の生活が気に入っているんだ。今更、天使に戻る気なんてない」

浮竹は、そう言って翼をしまうと、寝てしまった。

「僕が君を食べたい言った意味、本当に分かってるの?」

眠っている浮竹の唇に唇を重ねた。

京楽は、今まで何十人の女性や男性と、種族を問わず交じりあった。

京楽の今のお気に入りは、浮竹だった。

だが、無理やり手に入れはしない。

こちらへゆっくり落ちてくるように仕向けるのだ。

京楽と浮竹の二人暮らしが始まって、3カ月が経とうとしていた。

京楽は昼にナンパにいくのをやめた。

昼は黒猫姿でひなたぼっこをしていた。

「にゃああ」

「なんだ。言いたい事あるなら、人型になれ」

「一度僕と交わってみない?きっと、天国にいけるから」

浮竹は、顔を真っ赤にして、京楽の鳩尾に拳を入れる。

「そういう会話は、女性にしろ」

「僕は男の子でもいけるんだよ?ただし、攻めだけど。浮竹が受けかな」

浮竹は更に真っ赤になって、京楽の顎に右ストレートを決めた。

「俺は、初めてだから、その」

「僕が優しく教えてあげるよ」

「お前は、今まで爛れた生活を送ってきたんだろう。その時だけの関係になるなんて、嫌だ」

「僕は、今君に恋をしているよ?君しか、今は欲しくない」

「俺は・・・・・・」

浮竹は、とさりと京楽の横に座った。

「どうすればいいのか、分からない」

「ただ、僕に身を委ねていればいいよ」

その日、浮竹は京楽に抱かれた。

「あ・・・・」

反応を示す浮竹のものをすりあげて、京楽は浮竹に吐精させる。

「ああああ!!」

何処で買ってきたのか、京楽はローションを用意していた。

とろとろになるまで解されて、前立腺ばかりをいじられて、浮竹はまた精液を放っていた。

「んあああ!!」

「君の中に入っていい?」

「バカ、聞くな」

ズッと、京楽のものが入ってくる。

痛かったが、浮竹は我慢した。

「ごめん、初めてだもんね?でも、これからメロメロにしてあげる」

「ああああ!!」

後は、もう快楽しかなかった。

何度も奥をこすりあげられて、抉られて、人生ではじめて女のようないきかたを知った。

「ひあああ!!」

「君の中に放つよ?」

「やああ、やあ!」

「ちゃんと後始末はしてあげるから。僕、基本ナマじゃないとだめなんだよね。でも、子種はないから、女性と関係をもっても、子ができる可能性もないし」

「んあああああ」

ぐちゅぐちゅと京楽の硬いものが出入りしていく。

京楽は、浮竹の胎の奥で精を放っていた。

「やああああ」

京楽のものは、まだ硬さを失っていなかった。

最後までつき合わされて、浮竹はぐったりとなった。

「ごめんね?久しぶりだし、君が恋しいから激しくなっちゃた」

「そういうことは、言うな、バカ!」

真っ赤になりながら、浮竹はクッションを京楽の顔面に投げつけた。

すでに後処理は終えてあり、二人は狭いベッドでお互いを抱きしめ合うように寝た。

次の日、起きると朝食の用意がしてあった。

「んー。今何時だ」

「9時だけど?」

「うわ、やばい!今日は出版社に行く予定だったんだ」

「時間ないの?」

「そんなことはないが」

出社するのは10時半だ。車で迎えば30分でつく。

「じゃあ、朝食食べていって。自信作なんだ」

朝食から、どこぞのコックの料理かというものを食べて、浮竹は車に乗り込む。

「じゃあ、すまないが留守を頼む」

「腰、平気?」

「殴るぞ。平気だ!」

「じゃあ、いってらっしゃ」

「ああ、いってきます・・・・」

こんな会話をしたのは、久方ぶりだと思いつき、浮竹は昨日のことを思い出して、真っ赤になりながら安全運転で車で出版社に向かうのだった。

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