オメガバース京浮シリーズ 「出会い」
ずっと、自分のことをβだと思っていた。
家族は父を除いた全員がβで、父はαだった。
αとβの長男として生まれ、病弱で肺の病を患っていたが、最初の検査ではβであると言われた。
霊圧があるので、死神統学院に入り、やがては死神となって、α、Ω、βなどとは関係なしにいずれ誰かと恋愛して、結婚するものだと思っていた。
βにしては整いすぎた容姿と、何故か同じ男を魅了するその姿に、念のためと再検査されて、自分がΩであることを知った。
世界には、男女の他にα、β、Ωという3つめの性がある。
αは上流階級の貴族に多く、一般的に多いのはβだ。Ωは今でこそ保護されているが、3カ月に一度1週間は続くヒートや、αやβをその意思関係なく惑わすフェロモンを出すことで、忌諱され、社会に冷遇されてきた。
強姦されてもΩが悪いのだとされて、社会の底辺のゴミとして見られてきた。
それが変わりだしたのは、ヒートに対する抑制剤ができ、αやβもΩに対する抑制剤を飲むことでΩ のフェロモンに当たりにくくなるという医療技術の発展だった。
「あいつ知ってる?」
「ああ、確かに主席で合格した浮竹十四郎だろう?Ωなんだってさ」
「いくら優秀でも、Ωじゃなぁ・・・」
影口を叩かれるのには慣れていた。
田舎から合格と一緒に引っ越してきて、寮に入ることが決まっていた。
同じ部屋に入る子は、同じΩだと聞いていた。
コンコンと、ノックがされて出ると、背の高い男性がいた。
「僕は京楽春水。君と同じ寮の部屋に入る相手だ。よろしくね」
「俺は浮竹十四郎。Ωなんだ。お前も同じΩだろう?お互い苦労するな」
「え、僕αだけど」
「え」
二人して、固まってしまった。
「君、Ωなの」
「ああ。寮の部屋、変えてもらうか?」
「山じいの配慮で僕が同じ部屋になったんだよ」
「先生の、配慮で?」
「君を他のαやβから守ってくれって。なんのことだろうって思ってたけど、そうか、君はΩだったんだね」
「強めの抑制剤を飲んでいる。多分、ヒートは来ない」
「僕も定期的にΩのフェロモンに当たらないようになる抑制剤を飲んでるから、きっとうまくやっていけるよ。もしもの時になっても、僕なら君を強姦したりしない。抱くしか解決方法がない時は責任をもって番になるから」
「そんなこと、言わないでくれ」
浮竹は、自分がΩであることで、他人に迷惑がかかるのが嫌だった。
「ヒートなんて、きっとこないから・・・・」
Ωだと分かって、一番強い抑制剤を出してもらい、毎日のように飲んでいた。
肺の薬も飲んでいるし、金がかかると思ったが、Ωが抑制剤を買う金は学校側が負担してくれた。
優秀な者なら、たとえΩでも学院に迎える。
少し前なら、Ωだと学院にも入れなかった。
世界は変わっていく。
浮竹は、自分がΩであることを忘れるように、授業に出て剣や鬼道の腕を磨いた。
いつしか、さぼりまくって花街に行ったりする京楽のさぼりをつきとめて、授業に強制参加させるようになっていた。
αである京楽と親友になり、対等の立場を手に入れていた。
だが、Ωであることには変わりない。
初めてヒートが訪れたのは2回生の夏休み。
抑制剤を飲みまくり、なんとか凌いだ。
けれど、一度発情期を迎えてしまえば、ヒートは定期的に訪れて、やがて抑制剤の意味も薄くなってくる。
「大丈夫。俺は、大丈夫」
病院で新たに処方された抑制剤をがりがりとかじって飲んで、浮竹は初めてのヒートを耐えた。
「君・・・・発情期だね。ヒート、きてるでしょ」
「なんで・・・・」
「抑制剤飲んでも、フェロモンが漏れてるんだよね。僕は対Ω用の抑制剤を飲んでるから大丈夫だけど、ヒートが終わるまで外出しちゃだめだよ」
京楽は、初めてヒートをおこした浮竹を病院に連れて行ってくれたり、食事を運んでくれたりといろいろ世話を焼いてくれた。
「すまない、京楽。俺がΩのせいで、お前に迷惑ばかりかける」
浮竹は、翡翠の瞳に涙を浮かべていた。
美少女にしか見えない浮竹の、泣いている姿は心に響いた。
あ。
まずいかも-----------。
そう思った時には、京楽は浮竹にキスをしていた。
「なんで?」
浮竹が、目を見開く。
「いや、これはフェロモンに当たったわけじゃなくって・・・・泣いている君をなぐさめたくって・・・・その、ごめん。突然すぎたね」
「ううん。京楽には、いろいろ世話になっているか・・・ら・・・」
ボロボロと、浮竹の翡翠の瞳から涙が溢れた。
「俺は・・・Ωになんて、生まれたくなかった!」
京楽は、震える浮竹の体をそっと抱きしめた。フェロモンの甘い香りがしたが、抑制剤を飲んでいるので自我は保てた。
「大丈夫。君は大丈夫だよ。Ωでも、今までやっていけたじゃない。きっと、大丈夫」
泣き続ける浮竹を抱きしめて、京楽は浮竹を慰めた。
いつか。
番になる相手を選ばされる時がくるなら、僕は浮竹の番になりたい。
京楽は、そう思った。
家族は父を除いた全員がβで、父はαだった。
αとβの長男として生まれ、病弱で肺の病を患っていたが、最初の検査ではβであると言われた。
霊圧があるので、死神統学院に入り、やがては死神となって、α、Ω、βなどとは関係なしにいずれ誰かと恋愛して、結婚するものだと思っていた。
βにしては整いすぎた容姿と、何故か同じ男を魅了するその姿に、念のためと再検査されて、自分がΩであることを知った。
世界には、男女の他にα、β、Ωという3つめの性がある。
αは上流階級の貴族に多く、一般的に多いのはβだ。Ωは今でこそ保護されているが、3カ月に一度1週間は続くヒートや、αやβをその意思関係なく惑わすフェロモンを出すことで、忌諱され、社会に冷遇されてきた。
強姦されてもΩが悪いのだとされて、社会の底辺のゴミとして見られてきた。
それが変わりだしたのは、ヒートに対する抑制剤ができ、αやβもΩに対する抑制剤を飲むことでΩ のフェロモンに当たりにくくなるという医療技術の発展だった。
「あいつ知ってる?」
「ああ、確かに主席で合格した浮竹十四郎だろう?Ωなんだってさ」
「いくら優秀でも、Ωじゃなぁ・・・」
影口を叩かれるのには慣れていた。
田舎から合格と一緒に引っ越してきて、寮に入ることが決まっていた。
同じ部屋に入る子は、同じΩだと聞いていた。
コンコンと、ノックがされて出ると、背の高い男性がいた。
「僕は京楽春水。君と同じ寮の部屋に入る相手だ。よろしくね」
「俺は浮竹十四郎。Ωなんだ。お前も同じΩだろう?お互い苦労するな」
「え、僕αだけど」
「え」
二人して、固まってしまった。
「君、Ωなの」
「ああ。寮の部屋、変えてもらうか?」
「山じいの配慮で僕が同じ部屋になったんだよ」
「先生の、配慮で?」
「君を他のαやβから守ってくれって。なんのことだろうって思ってたけど、そうか、君はΩだったんだね」
「強めの抑制剤を飲んでいる。多分、ヒートは来ない」
「僕も定期的にΩのフェロモンに当たらないようになる抑制剤を飲んでるから、きっとうまくやっていけるよ。もしもの時になっても、僕なら君を強姦したりしない。抱くしか解決方法がない時は責任をもって番になるから」
「そんなこと、言わないでくれ」
浮竹は、自分がΩであることで、他人に迷惑がかかるのが嫌だった。
「ヒートなんて、きっとこないから・・・・」
Ωだと分かって、一番強い抑制剤を出してもらい、毎日のように飲んでいた。
肺の薬も飲んでいるし、金がかかると思ったが、Ωが抑制剤を買う金は学校側が負担してくれた。
優秀な者なら、たとえΩでも学院に迎える。
少し前なら、Ωだと学院にも入れなかった。
世界は変わっていく。
浮竹は、自分がΩであることを忘れるように、授業に出て剣や鬼道の腕を磨いた。
いつしか、さぼりまくって花街に行ったりする京楽のさぼりをつきとめて、授業に強制参加させるようになっていた。
αである京楽と親友になり、対等の立場を手に入れていた。
だが、Ωであることには変わりない。
初めてヒートが訪れたのは2回生の夏休み。
抑制剤を飲みまくり、なんとか凌いだ。
けれど、一度発情期を迎えてしまえば、ヒートは定期的に訪れて、やがて抑制剤の意味も薄くなってくる。
「大丈夫。俺は、大丈夫」
病院で新たに処方された抑制剤をがりがりとかじって飲んで、浮竹は初めてのヒートを耐えた。
「君・・・・発情期だね。ヒート、きてるでしょ」
「なんで・・・・」
「抑制剤飲んでも、フェロモンが漏れてるんだよね。僕は対Ω用の抑制剤を飲んでるから大丈夫だけど、ヒートが終わるまで外出しちゃだめだよ」
京楽は、初めてヒートをおこした浮竹を病院に連れて行ってくれたり、食事を運んでくれたりといろいろ世話を焼いてくれた。
「すまない、京楽。俺がΩのせいで、お前に迷惑ばかりかける」
浮竹は、翡翠の瞳に涙を浮かべていた。
美少女にしか見えない浮竹の、泣いている姿は心に響いた。
あ。
まずいかも-----------。
そう思った時には、京楽は浮竹にキスをしていた。
「なんで?」
浮竹が、目を見開く。
「いや、これはフェロモンに当たったわけじゃなくって・・・・泣いている君をなぐさめたくって・・・・その、ごめん。突然すぎたね」
「ううん。京楽には、いろいろ世話になっているか・・・ら・・・」
ボロボロと、浮竹の翡翠の瞳から涙が溢れた。
「俺は・・・Ωになんて、生まれたくなかった!」
京楽は、震える浮竹の体をそっと抱きしめた。フェロモンの甘い香りがしたが、抑制剤を飲んでいるので自我は保てた。
「大丈夫。君は大丈夫だよ。Ωでも、今までやっていけたじゃない。きっと、大丈夫」
泣き続ける浮竹を抱きしめて、京楽は浮竹を慰めた。
いつか。
番になる相手を選ばされる時がくるなら、僕は浮竹の番になりたい。
京楽は、そう思った。
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