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ハロウィン

「ハロウィンですね、兄さま、一護!」

ルキアが、朝食の時間に一護と白哉を見た。

「あーそうだなぁ。もうそんな季節かー」

「ハロウィン?なんだそれは?」

「あ、兄さまはご存じなかったかもしれませんね。現世の人間のイベントです。10月の最後に、トリックオアトリートと言って、子どもがお菓子か悪戯かというやりとりをするのです。悪戯されたくなければ、子どもにお菓子を与えます。ちなみに仮装するのも大々的なイベントで、魔女や化け物の衣装をした姿に扮装したりするのです」

「魔女・・・かぼちゃ・・・・・」

白哉にはちんぷんかんぷんであった。

その日は、ちょうど10月の終わり頃。

白哉は朝食を食べ終わると立ち上がった。

「そのイベント、我が朽木家で行うとしよう!」

「ええ!白哉、ハロウィンに興味なんかあるのか!?」

「ルキアの仮装がみたい」

白哉は言い切った。

シスコンの白哉は、朽木家の名にかけて、素晴らしい衣装を用意するだろう。

一護の衣装も用意するだろう。きっと、何か変な仮装をさせられるだろう。

そんなこんなで話は進み、朽木家でハロウィンパーティーが行われることになった。



「おい、恋次その恰好はなんだ?」

「見ての通り、狼男だ。ってかぎゃははははは、一護てめぇのかっこ!」

一護は、黒い色の魔女の恰好をさせられていた。流石にスカートだけなのは嫌なので、下にハーフパンツを着ているが、ひらひらには変わりない。

片手にはほうき、肩には黒猫のぬいぐるみ、頭には黒いとんがり帽子・・・・普通、魔女ならルキアだろうと思ったのだが、ルキアは違う恰好をさせられていた。

頭には黒い猫耳、お尻には黒い猫の尻尾・・・全部作り物かと思ったら、本物でなんでも白哉が涅マユリに作らせた薬の効果のせいらしかった。

「あまり、見るな・・・・・・」

ルキアは顔を赤くして、もじもじしていた。

一護も恋次も、ドキドキしていた。

かわいい。めっさかわいい。

「ルキア、似合ってるぜ」

一護がそういうと、ルキアの黒い猫耳がピクピクと反応し、尻尾がゆらりと揺れた。

「貴様の仮装は、女装か。趣味が悪いな」

「白哉に言いやがれ!これ以外の服隠したんだぞ、あいつ!」

そういう白哉は、パーティー会場となった朽木家の庭の隅で、日番谷と松本と一緒になって酒を飲んでいた。

ちなみに白哉の仮装はドラキュラ。

よく似合いすぎていて、嫌気がさしてくるほどだ。

日番谷も狼男で、松本も魔女だった。

「兄さま流石です。魔女としての恰好を一護にさせるなんて、笑いはばっちりですね!」

ルキアが、白哉から酒器に酒を注いでもらい、一気飲みした。

「ルキア、よく似合っている」

「兄さま・・・・・」

「ルキア・・・・・・」

日番谷と松本は、二人を放置して他の仮装した隊長副隊長クラスの者に声をかけていた。

「何いい空気だしてんだ!」

ルキアと白哉の間に一護が入り、二人をべりっと引きはがした。

「ルキアは俺のものだ!」

「兄のものではない」

「俺のものだ!」

「この変態女装魔女が!」

「キーーーー!この恰好させたのはお前だろうが!」

「兄の言葉の意味が分からぬ」

白哉はしらばっくれようとしていた。

「まぁまぁ、隊長も一護も、せっかくのパーティーなんだし、楽しみましょう」

恋次の言葉に、二人はふんと、顔を背けあった。

ルキアは、酒をどんどん飲んでいた。

「ふにゃあ・・・・・・・・」

一護のところにくると、とろんとした瞳で見つめられて、しなだれかかられて、一護は息子さんが反応しそうになって焦った。

魔女の仮装しておったてるなんて、どこの変態だ。

いや、魔女の仮装をしている段階で変態と言われても仕方ないのだが。

白哉のようにヴァンパイアとまではいかないが、恋次のように狼男か、フランケンシュタインのような仮装のほうがまだ何倍もましである。

「なぁ、ルキア、今晩・・・・・・・」

「ふにゃ?」

ぴくぴくと動く猫耳につい手を伸ばすと、ルキアはびくんと反応した。

「い、一護、耳はだめだ。耳は弱いのだ」

「じゃあ尻尾は?」

ゆらりと揺れる尻尾を掴むと、ルキアは一護に抱き着いた。

「尻尾もだめなのだ!」

「へぇ・・・・」

バシャリ。

一護は、白哉に水をぶっかけられた。

「何しやがる」

「パーティー会場で盛るな」

「こんの、白哉、てめぇ!」

ヴァンパイアの衣装に手をかけようとすると、ひらりとかわされてしまう。

そして、会場にあったパイ投げ用のパイを、白哉は一護の顔に投げた。

べちゃりと、クリーンヒットする。

「くそ!」

一護も負けじとパイを持って投げるが、白哉は巧みによけて、全然当たらない。

「ちくしょー!」

パンパンパン。

くやしがっている間に、白哉がパイを投げてきた。全身パイまみれになって、魔女の仮装も見る影もない。

「ムキーーーー!」

ルキアの腕をつかんで、パイを投げてくる白哉の前に立たせる。

白哉は動きを止めた。

すかさず、一護がパイを白哉の顔面に投げた。

「あはははは、ざまーみろ!」

ルキアは危ないからと、恋次に連れられて水を飲まされていた。けっこう酔っぱらっているようだ。

「散れ、千本桜・・・・・・・」

「おい、まじになりすぎだろ!パイ投げたのはそっちが先で・・・・・もぎゃああああ!!」

朽木家のハロウィンパーティーは、最後は皆でパイ投げで終わった。

なぜパイ投げが入っていたのかは、最初分からなかったが、多分白哉が一護にぶつけるために用意したのだろう。したたかに酔った隊長副隊長たちは、パイまみれになって帰っていった。


宴も終わり、風呂に入って衣装を処理して、パイまみれの髪や顔を洗った一護は、寝室にやってきた。

すでに湯あみを終えているルキアが、猫耳と猫の尻尾を揺らして、煽情的な眼差しで一護を見つめてくる。

「今日は・・・・するのであろう?」

「ルキア・・・好きだ。かわいい」

一護は、ルキアの猫耳をもふもふしながら、ルキアを抱きしめる。

体温が高かった。

ゆらりと揺れる尻尾を手で撫でながら、褥にゆっくりとルキアを横たえる。

「んあ」

口づけを交わしていると、ルキアが高い声をあげた。

体全体のラインをなぞるように手を動かして、耳と尻尾をくりくりといじると、真っ赤になったルキアは一護に抱き着いた。

「あ!」

ちゅっと、頬にリップ音を立ててキスをする。

「貴様のせいだぞ・・・・・責任をとれ」

真っ赤になって、欲望を覚えたルキアの紫紺の瞳に見つめられて、一護はルキアに囁いた。

「愛してる、ルキア。世界で一番かわいい、俺の奥さん」

「あ、一護・・・・・私も、愛している」

パーティーでは散々だったが、甘い夜を過ごせたので、10月の終わりの一護の機嫌はとてもハッピーなものであったそうな。

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