25話補完小説
「いやいや、どこもかしこも壊してくれちゃってまぁ」
京楽は、ひょいひょいと瓦礫の上を歩く。
「って、今のこれはあちらさんの建物だっけ」
もう、建物のどれがどれの残骸であるのかさえ、わからない。
「これ先々、敵さんたちを追い返したらちゃんと瀞霊廷の建物に戻ってくれるのかねぇ・・・戻ってくれたとして、戻った建物は壊れちゃってるのか元のままなのか・・・」
黒い影が、地面に落ちる。
「元のままだといいんだけど・・・ねぇ」
背後を振り返りもせずに、名を当てる。
「浮竹」
ふわりと、白い長い髪が風に靡いた。
浮竹は無表情だった。胸から首にいたるまで、包帯が巻かれていた。
「・・・・そうかな。壊れていたなら、また直せばいいじゃないか」
「そう言うと思ったよ」
「霊王宮への侵入を許したようだな」
浮竹は、空を真っすぐに見上げた。
白い髪が、さらさらと音をたててこぼれていく。
「気づいてたかい」
「それを見越しての「神掛」だ」
浮竹は、ふうと息をついた。
「・・・・・たしかに」
「神掛は成功したみたいだ」
「それなら、多少の無理もききそうだね」
京楽は、笠をぐいっと深くかぶった。
「医者のような口を聞く・・・・」
「浮竹」
ぱしっと、深くかぶりなおした笠をあげて、京楽は浮竹の手を取った。
「死ぬ、つもりだね?」
「ああ」
なんの躊躇もない答えに、京楽の眉が寄る。
「僕を、置いて行ってしまうのかい」
「そうなるな」
「君は・・・本当に、ずるい。こんなに僕は君のことを愛しているのに、君は瀞霊廷のために死のうとしている」
「それが、死神の義務だ」
「義務ね」
できることなら、浮竹を連れて何処かに逃げ出してしまいたい。
でもできない。
自分は護艇13隊隊長だ。
一人の命と、大勢の命を計りにかけることはできない。
「浮竹」
「なんだ」
「愛してるよ」
「ああ、俺も愛してる」
触れるだけの口づけを交わす。
「俺の分まで、生きろよ」
「僕が死ぬことは許されないんだね」
「一緒に最後の最後で死んだら、絶対お前を許さない」
浮竹は、翡翠の瞳で京楽の黒い瞳を睨んだ。
「あっちで待ってるから、千年くらい経ったら迎えにいくから」
浮竹は笑顔を浮かべた。
京楽も、笑顔を浮かべる。
ただ、京楽の瞳からは涙が溢れていた。
「泣くな」
大柄な体を抱き込んで、浮竹は京楽の背中を赤子をあやすようにぽんぽんと叩いた。
「泣きたくもなるよ。君を失いたくない」
京楽は、思い切り力をこめて浮竹を胸にかき抱いた。
細い。
神掛のために食べることも寝ることもせずに、過ごしていたのが分かる。
「京楽。これを返す」
京楽の腕から逃れた浮竹が、京楽の手に何かを投げた。
それは、京楽が院生時代に浮竹に送った翡翠のお守り石だった。
「俺は、もう持てないから。きっとその石が、お前を守ってくれる。俺の分まで」
「浮竹、僕は君を・・・・」
「京楽。我儘を言うな」
「でも!」
「尸魂界の、瀞霊廷のために死なば本望」
浮竹は、京楽の癖のある黒い髪を一束とって口づける。
「先に逝く。ただそれだけのことだ」
翡翠の瞳は、穏やかだったが、悲しさと寂しさも持ち合わせていた。
できることなら、一緒に隊長を続けて引退して、死ぬまで一緒にいたかった-------------。
叶うことのない願いは、口に出さない。
「じゃあ、俺は行く。元気でな、京楽」
「僕も行くよ。さようなら、浮竹」
京楽は、もう涙を零していなかった。
逢瀬はすでに済ませていた。
後はこうやって、最後の別れをするだけ。
浮竹は神掛のためにこれから命を散らしていく。
それを知っていても、京楽には止めることができない。
ああ。
神様って酷いね。
もっとも、信じているわけじゃあないけどね、神様の存在なんて。
もっともっと、浮竹と一緒に時間を過ごしたかった。
けれど、それは浮竹も同じで。
僕は浮竹が死ぬと決めたのを、止めることはできない。
浮竹は、ただこの時のためだけに、命を長らえさせてきたのだから。
ああ。
本当に運命って残酷だ。
命を長らえさせるために宿した神を、手放すと死ぬだなんて。
それが神掛だなんて。
ユーハバッハさえいなければ、こんなことにはならなかったのに。
ユーハバッハに対する怒りがわいてくるが、いずれにせよユーハバッハは時間が経てば復活する運命にあったのだ。
ただ運命を、真実を憎んだ。
憎んだ末の結論が、藍染を利用すること。
例え他者に憎まれても、少しでもユーハバッハの命を刈り取る可能性があるならば、手段は択ばない。
浮竹に言葉をかける。
「また、後で」
もう、後なんてないことは分かっているのに。
去っていく浮竹に手を振って、歩き出す。
例え愛しい存在が死んだとしても、歩き続けなけれなならない。
なぜなら、僕は総隊長だから。
ねぇ、浮竹。
本当に、愛しているよ。今まで、ありがとう。
たくさんの愛の言葉を君に送ろう。
愛しているよ。
そして、さようなら・・・・・・・・・・。
ねえ。
浮竹。
愛しているよ。世界で一番愛してる。
君に出会えて良かった。
そして、さようなら。
永遠の安らぎが、君にあらんことを。
愛しているよ・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・涙が止まらない。
僕は、涙を流しながら四十六室に向かう。
四十六室につくまでには、涙をふかないと。
そう思っても、また涙が溢れてくる。
四十六室の部屋の前に来る頃には、なんとか涙は止まっていた。
僕は、僕がするべきできるべきことをするのみ。
浮竹が護るために死んでいくように。
僕もまた、命をかけて瀞霊廷を護ろう。
京楽は、ひょいひょいと瓦礫の上を歩く。
「って、今のこれはあちらさんの建物だっけ」
もう、建物のどれがどれの残骸であるのかさえ、わからない。
「これ先々、敵さんたちを追い返したらちゃんと瀞霊廷の建物に戻ってくれるのかねぇ・・・戻ってくれたとして、戻った建物は壊れちゃってるのか元のままなのか・・・」
黒い影が、地面に落ちる。
「元のままだといいんだけど・・・ねぇ」
背後を振り返りもせずに、名を当てる。
「浮竹」
ふわりと、白い長い髪が風に靡いた。
浮竹は無表情だった。胸から首にいたるまで、包帯が巻かれていた。
「・・・・そうかな。壊れていたなら、また直せばいいじゃないか」
「そう言うと思ったよ」
「霊王宮への侵入を許したようだな」
浮竹は、空を真っすぐに見上げた。
白い髪が、さらさらと音をたててこぼれていく。
「気づいてたかい」
「それを見越しての「神掛」だ」
浮竹は、ふうと息をついた。
「・・・・・たしかに」
「神掛は成功したみたいだ」
「それなら、多少の無理もききそうだね」
京楽は、笠をぐいっと深くかぶった。
「医者のような口を聞く・・・・」
「浮竹」
ぱしっと、深くかぶりなおした笠をあげて、京楽は浮竹の手を取った。
「死ぬ、つもりだね?」
「ああ」
なんの躊躇もない答えに、京楽の眉が寄る。
「僕を、置いて行ってしまうのかい」
「そうなるな」
「君は・・・本当に、ずるい。こんなに僕は君のことを愛しているのに、君は瀞霊廷のために死のうとしている」
「それが、死神の義務だ」
「義務ね」
できることなら、浮竹を連れて何処かに逃げ出してしまいたい。
でもできない。
自分は護艇13隊隊長だ。
一人の命と、大勢の命を計りにかけることはできない。
「浮竹」
「なんだ」
「愛してるよ」
「ああ、俺も愛してる」
触れるだけの口づけを交わす。
「俺の分まで、生きろよ」
「僕が死ぬことは許されないんだね」
「一緒に最後の最後で死んだら、絶対お前を許さない」
浮竹は、翡翠の瞳で京楽の黒い瞳を睨んだ。
「あっちで待ってるから、千年くらい経ったら迎えにいくから」
浮竹は笑顔を浮かべた。
京楽も、笑顔を浮かべる。
ただ、京楽の瞳からは涙が溢れていた。
「泣くな」
大柄な体を抱き込んで、浮竹は京楽の背中を赤子をあやすようにぽんぽんと叩いた。
「泣きたくもなるよ。君を失いたくない」
京楽は、思い切り力をこめて浮竹を胸にかき抱いた。
細い。
神掛のために食べることも寝ることもせずに、過ごしていたのが分かる。
「京楽。これを返す」
京楽の腕から逃れた浮竹が、京楽の手に何かを投げた。
それは、京楽が院生時代に浮竹に送った翡翠のお守り石だった。
「俺は、もう持てないから。きっとその石が、お前を守ってくれる。俺の分まで」
「浮竹、僕は君を・・・・」
「京楽。我儘を言うな」
「でも!」
「尸魂界の、瀞霊廷のために死なば本望」
浮竹は、京楽の癖のある黒い髪を一束とって口づける。
「先に逝く。ただそれだけのことだ」
翡翠の瞳は、穏やかだったが、悲しさと寂しさも持ち合わせていた。
できることなら、一緒に隊長を続けて引退して、死ぬまで一緒にいたかった-------------。
叶うことのない願いは、口に出さない。
「じゃあ、俺は行く。元気でな、京楽」
「僕も行くよ。さようなら、浮竹」
京楽は、もう涙を零していなかった。
逢瀬はすでに済ませていた。
後はこうやって、最後の別れをするだけ。
浮竹は神掛のためにこれから命を散らしていく。
それを知っていても、京楽には止めることができない。
ああ。
神様って酷いね。
もっとも、信じているわけじゃあないけどね、神様の存在なんて。
もっともっと、浮竹と一緒に時間を過ごしたかった。
けれど、それは浮竹も同じで。
僕は浮竹が死ぬと決めたのを、止めることはできない。
浮竹は、ただこの時のためだけに、命を長らえさせてきたのだから。
ああ。
本当に運命って残酷だ。
命を長らえさせるために宿した神を、手放すと死ぬだなんて。
それが神掛だなんて。
ユーハバッハさえいなければ、こんなことにはならなかったのに。
ユーハバッハに対する怒りがわいてくるが、いずれにせよユーハバッハは時間が経てば復活する運命にあったのだ。
ただ運命を、真実を憎んだ。
憎んだ末の結論が、藍染を利用すること。
例え他者に憎まれても、少しでもユーハバッハの命を刈り取る可能性があるならば、手段は択ばない。
浮竹に言葉をかける。
「また、後で」
もう、後なんてないことは分かっているのに。
去っていく浮竹に手を振って、歩き出す。
例え愛しい存在が死んだとしても、歩き続けなけれなならない。
なぜなら、僕は総隊長だから。
ねぇ、浮竹。
本当に、愛しているよ。今まで、ありがとう。
たくさんの愛の言葉を君に送ろう。
愛しているよ。
そして、さようなら・・・・・・・・・・。
ねえ。
浮竹。
愛しているよ。世界で一番愛してる。
君に出会えて良かった。
そして、さようなら。
永遠の安らぎが、君にあらんことを。
愛しているよ・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・涙が止まらない。
僕は、涙を流しながら四十六室に向かう。
四十六室につくまでには、涙をふかないと。
そう思っても、また涙が溢れてくる。
四十六室の部屋の前に来る頃には、なんとか涙は止まっていた。
僕は、僕がするべきできるべきことをするのみ。
浮竹が護るために死んでいくように。
僕もまた、命をかけて瀞霊廷を護ろう。
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