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勇者と魔王 年末って

「はぁ。クリスマスが終わったと思ったら今年も終わりだな」

「そうだね。クリスマスパーティー楽しかったね」

「また、来年も開こう」

「クリスマスの前には君の誕生日があるのだって、すっかり忘れてたよ」

「誕生日、そういえば教えてなかったからな」

むくれる京楽に、浮竹は微苦笑を浮かべて、翡翠の瞳でのぞきこんだ。

「お前の誕生日には、俺を好きにしていいから・・・・・」

「言質、とったよ」

にんまりと笑う京楽に、浮竹は早まったことをしてしまったかと、少し後悔した。

まぁ、愛する者のためなら、それくらいどうってことはないかとも思うが、お互いもう若すぎるわけでもないし、限度というものを互いに知っていた。

「おう、魔王!お年玉くれ!」

二人で昼食をとり終わり、仕事の休憩のお茶の時間に新勇者はパーティーを連れてそう言ってやってきた。

「は?なんでお年玉?」

首を傾げる浮竹に、新勇者はえっへんと腰に手をあてる。

「俺はぴちぴちの16歳だ!まだお年玉をもらえるはずだ!未成年だからな!」

「仕方ないねぇ」

そういって、京楽は勇者の手に大根を乗せた。

「なんだこれ」

「何って、お年玉。兵士のダイコーンこと大根。庭で栽培してるよ。ちなみにまだ年明けてないからね。本物のお年玉は「LVアガール」をあげよう」

「何!LVアガールだと!」

「はははは。嘘~」

ちなみにLVアガールは、使うだけで文字通りLVがあがる1個で金貨1000枚はする代物である。

京楽は、めっちゃ嬉しそうな新勇者の頭を大根で殴って、血染めにした。大根の中には金属の棒が入っていた。

「あっはっはっはっは。面白い」

「おい、京楽。あんまり新勇者をいじめるなよ」

浮竹が止めるが、その右手には油性マジックがあった。

「そういう浮竹だっていじめる気満々じゃない」

「芸術を爆発させるだけだ」

浮竹は、油性マジックで新勇者の顔の眉毛をつなげて、うんこまーくを額にかいて、ひげをかいて、最後に顔中にうんこをかいて私はうんこですと、頬にかいた。

「ファイアー!」

少年魔法使いが、魔王である浮竹に魔法を使うが、標的となったのは浮竹でなく新勇者だった。

「あっちーー!」

気を失っていた新勇者は、どくどくと出ている血を女僧侶の呪文で治癒してもらいながら、らくがきだらけの顔のままずうずうしく、浮竹と京楽の席の向かいに座り、茶を飲み干した。

浮竹と京楽は、新勇者の顔を見て爆笑していた。

「あははははは!」

「ひははは!」

「ん?なにがおかしいんだ?とにかく、年があけたらお年玉くれ!」

「LVサガールをあげるでもいいか?」

「嫌だ!どうせなら本物のLVアガールをくれ!」

「てい」

浮竹は、新勇者の頭をハリセンで殴った。

ヅラの縦巻きロールが地面に落ちる。

何故に縦巻きロールなのか。

いつもアフロか縦巻きロールと、ヅラと分かるヅラをつけている新勇者。

「ファイアー!」

「ああ、俺のヅラが!」

浮竹がヅラを燃やして、魔王らしく偉そうにふんぞりかえるが、にこにこ笑っているのでその優しい笑顔のせいで悪いことをしたように見えない。

「俺はこれでも魔王だぞ、新勇者」

「宿命のライバルめ!」

そういう新勇者に、京楽が手鏡を新勇者にもたせた。

新勇者はレインボーカラーのアフロを荷物から取り出してかぶると、手鏡で自分の顔を見た。

「うわあああああああ!?うんこマークだらけじゃないか!」

「ぎゃははははは!」

「ぷっ」

「だっせー」

「いつもの行いのせいだな」

親勇者のパーティーたちが、新勇者を詰る。

「うわああああああん!ママにいいつけてやる!」

「それ、油性ペンの特殊なインクに魔力通したやつだから、ラクガキ洗ってもしばらくはとれないぞ」

浮竹の言葉に、新勇者は涙を流しながら叫んだ。

「なんでいつもこんな扱いなんだ!」

「いや、お前が新勇者だから」

「新勇者、敵対勢力だからじゃないの?」

浮竹と京楽は、茶をすすりながらそう言った。

ちなみに今日の二人の茶は緑茶だった。

浮竹は、白い紐をひぱった。

ガコン。

音がして、新しく作った坂道を丸い岩が転がり落ちてくる。

「のぎゃああああああ」

「きゃあああああああ」

「アイスウォール!!」

少年魔法使いが、必死で岩を止めるが、氷の壁はあっけなく破壊されて、新勇者とそのパーティーは岩の下敷きになってペラペラになった。

「さようなら~~~」

浮竹は、ペラペラになった新勇者一行を窓から風に流した。

「反物にしたほうがよかったかな」

「やめなよ。どうせすぐ元に戻るんだから」

「それもそうだな」

浮竹はからからと笑って、京楽と一緒に茶をすすりながら和菓子を口にした。

「来年もまた、賑やかになりそうだなぁ」

年末とあと少しで終わり。

そんな季節だった。




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