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ボクだけの翡翠2

「雪だ!」

浮竹は、院生服のまま外にでて、雪兎を作っていた。

「だめだよ、浮竹。ちゃんと上着着なきゃ」

「でも、雪だぞ。瀞霊廷では滅多に降らない。俺が生まれた流魂街でも降らなかった」

本当に雪が積もるほど降るのは珍しく、京楽は浮竹に上着とマフラーと手袋をさせて、浮竹が雪だるまを作るのを手伝った。

「けっこう重労働だね。雪だるま作るのって」

「目は・・・この木の実でいいか。枝を腕にしよう」

適当な位置に茂っていた、葉のない枝を折って、浮竹は雪だるまの腕にした。

「っくしょん」

「ああ、浮竹、もうだめだよ。雪遊びはおしまい。これ以上してたら、風邪をひく」

「多分、もうひいてるかもしれない」

その言葉通り、浮竹は次の日には熱を出し、咳をしていた。

「おかゆ、作ってもらったよ。病院で風邪薬もらってきたから、食べたら飲んでね」

「京楽、そのすまない。せっかくの冬の長期休みなのに、お前は家族のところにも帰らず、俺が寮で過ごすと言い出したから、一緒にいてくれるんだろう?」

「違うよ。ボクの家族はボクをこの学院に放りこんだからね。放蕩息子に嫌気がさしたんだろうさ。今頃実家に帰っても、いい顔をされないよ」

本当は、ずっと浮竹の傍にいたいから、とは言い出せなかった。

浮竹は、困ったような顔をしてから、おかゆを少し食べて風邪薬を飲むと、眠ってしまった。


「ねぇ、浮竹。ボクが、君のことを抱きたいくらいに君が好きって言ったら、どう思う?」

意識のない浮竹の少し伸びた白髪を、手ですいてみる。

浮竹は自分の白い髪が嫌いなのだそうだが、綺麗だから伸ばせばいいと京楽が言ってから、髪を切るのを止めてしまった。

「ねぇ、なんで髪伸ばしてくれてるの?ボクが綺麗だからって言ったせい?」

浮竹の眠りは深く、起きない。

「浮竹・・・・好き、だよ」

意識のない浮竹に、触れるだけの口づけをしてから、京楽は頭を冷やすために風呂に入るのだった。



季節は移りかわり、春になった。

2回生になっていた。

相変わらず浮竹の傍には京楽がいて、浮竹狙いの女子には邪魔な相手だった。

浮竹は、女の子にそれなりにもてた。病弱で下級貴族だが、可憐な容姿をしていて、彼女になりたがる女の子はけっこういた。

でも、みんな告白する前に京楽に告白されて、しばらく付きあったのち振られた。

「もう、春水ってばさいてー。浮竹君狙いだったのに」

「浮竹には、無垢なままでいてほしい」

「なにそれー。あたし、わかんなーい」

馬鹿な頭の女の子を振って、浮竹を守った。

浮竹は、その見た目のせいで男にまでもてた。

男の先輩からラブレターをもらった日には、どうしようと相談してきた。

その気はないと言えばいいというと、怖くて一人では会えないというので、京楽がついていった。

「すみません、俺にはそういう気はないので」

「じゃあ、その側の京楽ってのはなんだよ。お前狙いなんだろ?」

「京楽を侮辱しないでもらいたい。京楽はかけがえのない、俺の親友です」

親友。

そのポジションは、心地よかった。

「ちっ、俺は諦めねーからな」

男の先輩を振った数日後、女の名前で浮竹は呼び出された。

浮竹に変な虫がついてほしくないので、そっと後をつける。

「きたきた。なかなか上玉じゃん。はやく、まわしちまおうぜ」

「え?」

浮竹はいきなり無人の教室の床に押し倒されて、手首を縄で戒められて、院生服をびりっとやぶかれた。

「は、破道の・・んんん」

口にタオルをつっこまれて、浮竹はあまりさらさない白い肌を、男たちの前で見せることになる。

「俺は諦めねーっていっただろ。お前、一度自分のこと理解すればいいんだ。一部の男は、お前をこうした目で見てるってことにな!!!」

「んんーーー!!!」

びりっと更に院制服を破かれて、浮竹は涙を流す。

「そこまでだよ」

ゆらりと、京楽が凄まじい霊圧でその場を支配した。

「ちっ、またお前かよ!邪魔すんなよ。あ、そっか。お前も仲間に入るか?」

「んーーー!!」

浮竹は、京楽と叫んでいるらしかった。

「その汚いいちもつ、直してくれない?そのかっこのまま、気絶したくないでしょ?」

「うっせぇな。もういい、こいつたたんじまおうぜ。それから、こいつが見ている前で浮竹を輪姦だ」

「んんん!!!」

浮竹は、泣きながら恐怖に震え、京楽を見ていた。

数は五人。対して、こちらは京楽一人。

「やっちまえ」

「おう」

京楽は、鬼道を唱えた。

「破道の4、白雷」

本来なら、人に向かって使用してはいけない、鬼道だった。

「ぎゃああああ」

「ぐぎゃああああ」

感電して動けない相手を蹴り飛ばして、顔面を殴る。鼻血が顔面を汚すまで、殴ったり蹴ったりした。

「もう、君たちは学院にはいられないからね?浮竹が、理事長である山じいのお気に入りだって、知らなかったでしょ。この件は山じいに訴える。あと、京楽家の、上流貴族の力で退学後もしばらくは豚箱行きだからね」

「ひいいい」

京楽が気づいた時には、全員床の伸びていた。

「んん・・・・・」

「浮竹!ごめんね、すぐにタオルとってあげるし、縄もといてあげる」

「ん・・・京楽、京楽!怖かった!」

浮竹は、肌も露わな上半身をさらして、京楽に抱き着いた。

涙で揺れる翡翠の瞳に、思わずぞくりとなる。

「寮の部屋に帰ろう。こいつらの始末は、京楽家の人間に任せて?」

「うん・・・・・・」

浮竹は、いかにも強姦未遂されましたという出で立ちで、困った京楽は、医務室にいって誰もいないのを確認すると、シーツで浮竹を包んで、瞬歩で寮の部屋に戻った。

破れた院生の服を室内着に着替えさせて、ショックでガタガタ震えている浮竹を抱きしめる。

「怖かった・・・・怖くて、怖くて・・・」

「大丈夫、君の傍にはボクがいる。ボクが、君を守るから」

「京楽・・・・ありがとう」

京楽に抱きしめられながら、浮竹は眠ってしまった。





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