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ボクは壊れているのだろうか

ボクは壊れているのだろうか。

君を失って、世界は色を失った。

君を失って、それでも生きていかなければならない世界にうんざりした。

そしてボクが決断した答えは。


君を、もう一度愛すること。

12番隊の隊長である涅に、金をつんで秘密裏に作り上げたのは、君のクローン。

君の遺髪から作り出した、君だった。

君・・・・浮竹の記憶を再現した義魂丸を作り出して、そのクローンの義骸に入れた。

はじめて目を覚ました時、浮竹はこう言った。

「京楽、どうして泣いているんだ?」

ボクは、邪道な手で君を蘇らせたことに心を痛めてはいたが、もう一度浮竹を愛せるならどうでもよかった。

また生きてる浮竹を目の前にして、涙が止まらなかった。

「浮竹、愛しているよ」

浮竹を抱きしめると、羊水でぬれていた浮竹は、長い髪から雫をしたたらせていた。

「何故か知らんが、裸で濡れている。京楽、お前も濡れるぞ」

「はい、バスタオル。それに、死覇装だよ」

「ああ、ありがとう」

浮竹は、バスタオルで体と髪をふき、死覇装を着た。

隊長羽織はなかったが、見た目ははどこからどこまでも浮竹だった。

「俺は、何をしていたんだ?」

「君は、大戦で怪我をおって、長いこと眠りについていたんだよ。あまりに長いから、涅隊長の考案したカプセルの中で、怪我を癒していたんだ」

「4番隊では、治らなかったのか?」

「うん」

ボクは、嘘をつく。

浮竹は、納得した様子でボクと一緒に外に出ようとした。

「だめだよ、浮竹。世間では、君は死んだことになっているんだ。だから、人目につかないように、瞬歩でボクの館にいこう」

「俺が死んだことになっている?どうして?」

「君は、ミミハギ様を解放して神掛をおこなった」

「・・・・・覚えていない。何故だ」

「それだけ、精神的にも肉体的にもダメージを負ったんだよ」

「そうなのか」

ああ。

君が・・・・偽りであれ、君がいる。

世界は色を取り戻し、ボクはようやく生きている気分を味わった。

「雨乾堂に行きたい」

「だめだよ。君は、ボクと一緒に、ボクだけのために生きて」

「分かった。京楽のために、京楽と一緒に生きる」

あらかじめ、義魂丸にはボクがマスターであり、ボクの命令を聞くような仕掛けをほどこしてあった。

だから、この浮竹は素直だ。

ボクを疑いもしない。

ボクは、最低だ。

自分でもわかっている。

でも、どうしても君を失いたくなかった。

だから、作り上げた。君を。偽りであれど、もう一度君を愛するために、君のクローンを作った。

ボクの館につくと、浮竹は抱きついてきた。

「京楽、愛している。この館を出てはだめなんだな?」

「うん。夜は毎日ここに帰ってくるし、休みの日はここにいるから、ボクが仕事中の間は寂しかもしれないけど、我慢してね?」

「京楽がそう言うなら、我慢する」

浮竹は微笑んだ。

翡翠の瞳に長い白い髪、中性的に整った美貌。

どれも、生前の浮竹そのものだった。

「君を愛してもいいかい?」

「野暮なことを聞くな。抱きたいなら、そう言え」

「君を抱きたい」

「その、久しぶりだからちょっとわからんのだが、がんばる」

そっと、君をしいた布団の上に寝かせて、さっき着たばかりの死覇装を脱がして、肌を愛撫していく。

「ん・・・・んあっ」

浮竹は喘ぐ。

その声は、まさしく君を抱いている時の声。

「ああっ」

ボクは、浮竹のものを口に含んで、生前の時のように舌をはわせて、手でしごいて精液を吐き出させた。

「ああああ!!」

「ふふ、きもちいい?」

「あ、きもちいい。もっと、京楽、もっと・・・胎の奥がきゅんきゅんしてる。お前の子種が欲しい」

浮竹は、淫らだった。

そんなところまで、君にそっくりだった。

君のクローンなんだから、当たり前なのだが。

ボクは、浮竹の蕾を潤滑油をまとった指でほぐしながら、浮竹のものを舐めた。

「あああ、だめぇえ、前も後ろも一緒はだめえええ」

浮竹は、涙を滲ませる。

「ふふ、いっていいよ?」

「ひああああ!!」

浮竹は、精液をびゅるびゅると布団の上に吐き出していた。

「あ、京楽、早くきてくれ」

浮竹は唇を舐める。

そんな些細なところまで、君そっくりだった。

ボクは、熱く昂っったもので一気に君を貫いた。

「ひゃあああん!!!」

背中に爪をたてられるが、その痛みよりも浮竹の中にいる快感のほうが強くて、ボクは久しぶりに味わう浮竹の熱い中を堪能しながら、浮竹を突き上げた。

「あ、あああ!」

突き上げるリズムと一緒に、浮竹は声を漏らす。

その声に、ボクはまた自分のものが大きくなるのを感じした。

「ああ、や、中で、京楽が大きくなってるう」

「子種、欲しがってた胎の奥に、たっぷり注いであげるからね?」

ボクは、もう随分と自分で自虐もしていなかったので、濃くて大量の精子を浮竹の胎の奥に出した。

「いああああああ!!」

浮竹は、ボクのものを受け止めながら、中いきしていた。

「あ、京楽、愛してる」

「ボクも愛してるよ、浮竹」

君は、浮竹。君は、ボクのもの。


その日から、なるべく早く浮竹の待つ館に帰るようになった。

残業は一切しないで、休みの日は館で浮竹と一緒に過ごした。

仕事中、浮竹一人では寂しいだろうからと、猫とうさぎを飼うことにした。

浮竹はけっこう動物好きで、はじめは威嚇されないかとびくびくしていたが、買ってきた猫は人懐っこく、浮竹の腕の中でゴロゴロと喉を鳴らす。

猫は夜行性でもあるから、猫だけでは寂しいかもしれないと、うさぎも買った。

浮竹は昔、うさぎを飼っていたらしく、懐かしそうにしながら、うさぎの世話もした。


「ただいま、浮竹」

「おかえり、京楽」


ボクは、罪をおかしていると分かっていながら、今の幸せを享受していた。

ボクは、毎日のように浮竹を抱いた。

1日1回。

それが暗黙のルールになっていた。

その日はたまりにたまった仕事があり、どうしても残業しなくてはならなくて、浮竹に地獄蝶を飛ばして連絡をいれた。

浮竹には、霊圧がほとんどない。

だから、他の隊長副隊長が気づくことはなった。

狂った箱庭の中で、ボクは浮竹を愛する。

浮竹も、それに答えてくれる。

残業を終えて帰ると、深夜になっており、浮竹は死覇装姿のまま、猫を抱いて眠っていた。

「にゃああん」

「静かに。浮竹が眠っているから、あっちにいこうね?」

「にゃおん」

猫を抱いて、ボクは移動する。

浮竹はよく眠っていた。

その唇に、触れるだけのキスをする。

「ん・・・京楽?」

「ごめん、起こしちゃった?」

「別にいい。遅かったな」

「うん。独りぼっちにさせて、ごめんね」

「俺には猫とうさぎがいるから、寂しくはない」

家人を雇ってはいたが、皆口が堅い者ばかりで、浮竹の存在を外もらすことはなかったし、家人には浮竹の存在を外に漏らすと命はないと言い聞かせていた。

浮竹のためなら、ボクはどこまでも冷徹になれた。

「京楽、今日は睦み合えないが、一緒に寝よう」

「うん」

浮竹の体温は高く、健康体なので肺を患っていることもない。

最初はそのことを不思議に思っていた浮竹だったが、神掛で全て治ったと思わせることに成功して、ボクは心から安堵した。

浮竹がまだ病弱で肺を病んでいたら、ボクは心配ばかりでもちそうになかったから。

「浮竹、愛しているよ」

「俺も愛してる、京楽」

狂った箱庭の中で、ボクは今日も君のクローンに愛を囁く。

「君との愛は、永遠だ。何が起きても、ボクは君を守る」

「大袈裟だな」

「愛してるよ」

その昔、君に贈った翡翠の髪飾りを、再び君に贈った。

「あ、これ、なくしたと思っていたのに」

「君の荷物は、保管しているよ。何か欲しいものがあったら、言って。あと、何かしたいことがあったら・・・・」

「外に、出てみたい」

「ごめん、それだけはだめだよ」

「どうして?」

不思議がる浮竹に、ボクは言い聞かせる。

「君は、死んだことになっている。存在がばれたら、処分されてしまうかもしれない」

「え」

それは、本当のことだった。

今の浮竹が見つかれば、最悪処刑もありえた。無論、ボクも。

だから、浮竹をなだめて、欲しいものは全部与える。

狂った箱庭の中で、ボクたちは狂った愛を囁きあう。

この時が、永遠であればいいのに。

ただ、願った。

ボクは、とっくの昔に壊れているのだろうか。

いや、壊れているんだろう。

でも、そんなことどうだっていい。

浮竹と、一緒にいられるならば。


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