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マッサージ否、いかがわいいこと

「きもちいい・・・・」

ぴくり。

海燕の耳が動いた。

「あーいい。すごくいい」

ぴくぴく。

「ここかい?」

「あんっ」

がらっ。雨乾堂の戸をあけて、海燕はずかずかと入りこんでくると叫んだ。

「あんたら、朝っぱらから何卑猥なことして・・・・・」

「え、なんだ?」

浮竹が驚く。京楽も驚いた。

「朝っぱらから・・・・マッサージだけど?」

京楽の言葉に、早合点した自分を呪った。穴にあったら入りたい心境だった。

「なになに、僕たちがいかがわしいことしてると思ったの?」

「そうなのか、海燕?」

「ああもうそうですよ!よくいかがわしいことしてるでしょ、あんたら!」

「否定はしないけどね」

「同じく」

「いや、普通否定するでしょ!」

「いや、だって本当のことだしね?」

「ああ。一昨日も海燕のいういかがわしいことしてたしな」

浮竹は畳に座って、お茶を飲みだした。

「一昨日・・・・・道理で、入室禁止をいいわたされたわけだ」

京楽が、お茶を飲んでいる浮竹の腰を抱いて、自分のほうに引き寄せる。

「だってこんなにかわいいんだよ」

「確かに隊長は愛らしいですが、だからって俺はその気にはなりません」

「まぁ、それが普通の反応だろうな。京楽は目と脳が腐ってるから」

「何それ!まるで乱菊ちゃんみたいじゃないの!」

「いや、だって男の俺をかわいいとかいうの、お前くらいだぞ」

「さっき海燕君も愛らしいとか言ってたよ」

浮竹は、ごろりと横になった。そして、畳の上を転がりだす。

ごろごろごろごろ。

二人とも、何このかわいい生物と思った。

「た、隊長は男らしいいですよ」

「うん、そうそう」

ごろごろごろごろ。

「絶対そう思ってない。嘘ついてるな、お前ら」

ごろごろごろごろ。

意味不明な行動をとる浮竹。京楽の傍までくると、その膝に頭を乗せた。

「鍛えても筋肉はつかないし、すぐ熱は出すし、肺の病で吐血するし・・・・全然男らしくない。だからもういい」

京楽の膝の上で、甘えだす。

「京楽、壬生の甘味屋のおはぎが食べたい・・・・」

「海燕君、今すぐ買いに行きなさい」

「なんで俺なんですか!頼まれているのは、京楽隊長でしょう!」

「だって、こんなかわいい浮竹を放置できないよ!!!!」

思いっきり、断言した。

じとー。

2つの視線が、京楽に注がれる。

海燕のうわーという視線と、浮竹のこいつなんなのって視線が。

「いや・・・そんなに見つめられると照れるんだけど」

「まぁいい、京楽、壬生の甘味屋まで行くぞ」

「お、珍しい。隊長が自分から行きたがるなんて」

「そうでもないよ。甘味屋だと、よく僕と一緒に食べにいくからね。支払いはもちろん僕もちで」

ああ、やっぱり。

あれだけ家族に仕送りして、肺の病の高い薬を買っているんだ。残った金で飲み食いできるのも難しい。

「海燕には、おはぎを3こだけお土産に持って帰ってあげよう」

「3こだけなんですね」

「後は俺が食べるために残しておくんだ」

そう言って、浮竹は京楽と出かけた。

「ああもう、布団ひきっぱなしで・・・・・」

布団を片付ける。

多分2~3時間は帰ってこないだろうと、雨乾堂の中の掃除を始めた。

きっかり3時間して、二人は帰ってきた。

「浮竹、やっぱり食いすぎだよ」

「まだまだだ・・・・」

「おかえりなさい」

「何してたんだ?」

「掃除です」

「そんなことしなくても、俺が定期的に掃除してるのに」

「隊長の掃除は雑なんです。みてください、こんなに埃がとれました。あと、長い白い髪とか」

「海燕、土産だ」

おはぎ3つ。そう言っていたおみやげだろう。

「ありがたくいたただきます」

手を洗って、箱の中をあけると、おがぎが2つしかなかった。

「3つって言ってませんでしたっけ?」

「ああ、浮竹が小腹がすいたとかいって、途中で1個たべちゃたんだよ。白玉餡蜜3人前食べて、ぜんざい4杯にお汁粉に・・・・・」

「食べすぎですね。そのうち、糖尿病になりますよ。あと、虫歯にも気をつけてくださいね」

「だってさ、浮竹」

ぷくーっと頬を膨らませる浮竹は、仕草が子供っぽかった。

そこが、京楽がいうかわいいといところの一部なのだろう。

「とりあえず、おはぎいただきますね」

2つを食べて、夕餉の時刻が近いことに気づいた。

「湯あみ、すませてきてください。夕餉の準備しときますんで。京楽隊長は今日は泊まりで?」

「うん、そうだよ。前から言ってたからね」

ふくれた浮竹を連れて、雨乾堂専用の湯殿に消えていく二人。

「夕餉の準備しなくちゃな」

今日の夕餉はちらし寿司。あなごがのっかっていた。

「あなごかぁ。食べるのは久しぶりだねぇ」

「俺のあなごが京楽のより小さい」

「はいはい、交換してあげるから」

食べだす二人にお茶を入れたりして、世話を焼く。

食事をし終えた膳を、海燕が下げていった。

ようやく、海燕も夕餉の時間だ。

ふと、忘れ物をして雨乾同に戻る。

「あっだめだ・・・海燕がきたらどうする」

「大丈夫だよ。もう来ないでしょ」

「ああんっ」

またマッサージかと、ガラリと戸をあける。

半裸の京楽と、それに押し倒されて、ほとんど裸に近い恰好の浮竹がいた。

「な、何も見てません!」

顔を真っ赤にして、海燕は回れ右をした。

「ああっ」

浮竹と京楽は、なかったことにして続けるらしい。

かなり図太い神経をしているものだと思いながら、忘れ物がそのままであったが、明日とりにこようと思う海燕だった。







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