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朽木白夜と浮竹3

高熱で臥せっていた浮竹は、熱がなくなったので、さぁ仕事をしようとしたところを、京楽に言いくるめられて、また仙太郎と清音に泣きながら懇願されて、熱もないのに寝ていた。

昼間から深夜にかけて寝ていたため、夜になっても寝れないでいた。

こんな時間に誰かを起こすのもなんだしと思って、散歩にでかけた。

「また、兄か・・・・」

向こうからやってくるのは、夜の散歩が趣味だという白哉ではないか。

「やあ、白哉。夜の散歩か?今日は月が綺麗だな」

「浮竹、兄はそんな薄着でいるべきではない。上着を羽織ってこなかったのか」

「ああ、そういえば少し寒いかな?」

鈍感な部分のある浮竹は、隊首会も病欠してたくらいなのに、今はとても元気だった。

「これでも、羽織っていろ」

薄い色の着物の上着をかけられた。

「白哉が寒くなるんじゃないのか?」

「兄とは違う。ちゃんと鍛錬している。風邪などひかん」

その言葉に、少しむっとなった。

「俺だって、好きで風邪をひいているわけじゃないぞ」

「兄は、体質であろう。病弱なのは仕方ないことだ」

いつもより饒舌な白哉に、浮竹は首を傾げた。

「何処に行くつもりだったんだ?」

「双極の丘まで」

「あんな場所へか!」

義妹のルキアが、処刑されそうになり、藍染の企みが発覚したいわくつきの場所だ。

今はその藍染も封印されているが。

「どうした。何故ついてくる」

「いや、俺も行ってみようかなと思って」

「行っても何もないぞ」

「分かっている」

二人で、のんびりぶらぶらと散歩する。

昼間であれば、こうやって散歩をしていると、途中で誰かに捕まって、行き先を制限される。

月の綺麗な夜は、好きだった。

「満月もいいが、下弦の月もいいな」

「兄にしては、情緒的だな」

「む。俺にしてはは、言いすぎだぞ」

クスリと、分かるか分からないかの声で、白哉が笑う。

「すまぬ」

「白哉も大きくなったものだなぁ。昔はあんなにやんちゃ坊主だったのに」

「兄は、昔のことなど忘れろ」

「いや、無理だろ。夜一にむきになって挑んでいた頃のお前は可愛かった」

「もう、そんな年ではない」

「そうだな。貴族らしく気品があり誇り高く美しい。それが今の白哉だ」

「褒めすぎだ」

「そうか?」

首を傾げる浮竹。白い髪がさらさらと零れ落ちた。

星の光が瞬く。

下弦の月は雲に隠れて、見えなくなっていた。

「兄は、京楽隊長とは相変わらずか」

「ああ、相変わらずできてるぞ。最近抱かせてやってないから、きっと溜まってるだろうな」

「何故妻を娶らぬ?」

「なんでだろうなぁ。好きな女性がいないからじゃないか。俺も京楽も。お互い、二人でいれればいいって考え方だから」

「緋真は・・・・・」

「ああ」

「緋真も、下弦の月が好きだった」

「そうか。って、この着物!」

女ものであることは知っていたが、まさかと思った。

「そうだ。緋真が着ていたものだ。兄にやる」

「そんな大事なもの、受け取れない!」

「もう、誰も着ることのなくなったものだ。処分しようにも、緋真との思い出まで処分するようで、手放せなかっただけのこと」

「なんで俺に・・・・・」

「兄は、儚いからな。病弱なのに芯が強いところなど、緋真によく似ている」

「白哉・・・・」

雲が切れて、下弦の月がまた顔を出した。

月光に輝く浮竹の白い髪は、銀色に見えた。

やがて、双極の丘へたどり着いた。

そのまま、何をするでもないしに数分間佇んだ後、きた道を逆に辿っていく。

「眠くなってきたので、これで失礼する。兄は、くれぐれも風邪などひかぬように」

瞬歩で、白哉が去って行った。



「でな、聞いてるのか京楽」

「はいはい。深夜に朽木隊長と出会って、デートしたんでしょ」

すねた京楽は、がたいがいいが可愛かった。

「デートじゃない。あれはただ、一緒に散歩しただけだ」

「それで、緋真ちゃんの大切の上着をもらったんでしょ」

また京楽はすねた。

「俺がデートするのも、好きなのも、抱かれたいのも、全部お前だけだ」

耳元でそう囁くと、すねていた京楽は、浮竹を腕の中に抱きしめた。

「今日は、体調は平気?」

「ああ」

「今日は、してもいい?半月はお預けくらってる」

「いいぞ」

そう答えると、京楽は深い口づけをしてきた。

「ただし、夜だ」

「分かったよ」

また、夜になると白哉は散歩に出かけるのだろうな。

そう思いながら、浮竹をかき抱いた。






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