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ルキアを攫ってしまおう 虚圏の女王

ルキアが破面になったことを、恋次は結局白哉に打ち明けれなかった。

義妹が、破面になったことを知れば、白哉は命に代えても、ルキアを殺そうとするだろう。そして、強大ばな力をもちすぎた一護に敗れさるだろう。

「恋次?どうしたのだ・・・・」

「もしも、ルキアが生きているとしたらどうしますか」

「ありえぬ。あれはもう死んだ」

白哉の中で、ルキアはすでに死んでいた。

失踪した時は、白哉も必死になって探したが、年を経るごとにそれはなくなっていき、10年が経って殉職という扱いになった時、白哉はルキアの遺体がない棺を葬式に出して、喪に服した。

今更、生きているといっても、白哉を混乱させるだけだろう。

「ルキア・・・・・・」

全く20年前から変わっていなかった。ただ、胸には破面の証である穴があいていた。仮面は髪留めのようだった。

「ルキア、ルキア、ルキア・・・・・」

「ふふ、恋次、好きだぞ」

そう言って、微笑んでいた姿が今でも脳裏にこびりついている。

今の妻を愛していないわけじゃない。

でも、ルキアは家族で特別で・・・・恋次の初恋の相手だった。

もう、戻ってはこないだろう。

ルキアは、一護を選んだ。

虚圏の王になった一護を。


その頃、井上の魂は尸魂界にきて、若いままの魂魄の姿で、真央霊術院を卒業し、4番隊に配属されていた。

迷ったが、井上にも真実を告げた。

「そう。黒崎君生きててくれたんだ。朽木さんと、今も生きてるんだ・・・・」

ボロボロと、涙を零した。

「やっぱり、だめだね、私。黒崎君から朽木さんのこと、忘れさせることができなかった」

それは、恋次の分の涙でもあった。

「会いに行くか?井上、お前くらいなら、虚圏に連れていける」

「ううん、いいの!黒崎君に会って、拒絶されるのが怖いから!」

「井上・・・」

どこで、どう間違ったのだろう。

ルキアは恋次と。一護は井上とそれぞれ結ばれた。

二人とも、お互いの伴侶を愛していた。

でも、ルキアは一護を。一護はルキアを、ずっと好きで愛していたのだ。

それに気づいてやれなかったから、こうなった。


虚圏で、王となった一護は、グリムジョーと戦っていた。

ハリベルやネリエルの姿もあった。

「王となったからには、その力、落とすなよ!」

グリムジョーが虚閃(セロ)を放つ。

それを、一護は卍解もしない斬月防いでしまった。

「ちっ、力の差が大きくなりすぎて全然楽しくねぇ!やめだやめだ!」

グリムジョーが去っていく。ハリベルも去っていくが、ネリエルだけが残った。

「一護、今のあなたは破面になってまで、幸せを手に入れたといえるの?」

「人間もだめ、死神もだめ・・・・じゃあ、破面になるしかねーじゃねぇか」

「探せば、もっと他の選択肢もあったはずよ」

「ありがとな、ネル。でも、俺は今の俺に満足してるんだ。何者がきても、攫っていったルキアを取り戻させねぇ」

「朽木ルキア・・・・あなたが選んだ道だわ。私たちの王でもある。私たちは、ただ黙してあなたに従うだけ」

「ネル、もしも死神がきたら真っ先に教えてくれ。追い出す」

「あなたは、相変わらず甘いのね。殺すと言わない」

何度か虚圏に死神が紛れ込んだことがあったが、ザエルアポロが残した薬で記憶を消して尸魂界へと戻した。

誰かを傷ついてたいのでも、殺したいのでもないのだ。

ただ、ルキアと一緒にいたい。

その願いは、現世、尸魂界、虚圏を巻き込んだ。


「ルキア、起きてるか・・・・」

「ああ・・・・」

「この前、恋次がきた時、尸魂界に帰る気持ちは少しも起きなかったか?」

「この姿だ。行っても、殺されるだけだ」

「もう、俺もルキアもかなり力をつけた。ルキアには、王である俺の力も注ぎ込んである。護廷13隊の隊長だろうが、返り討ちにできる」

「もう、戻ろうなどと思わぬよ。貴様が破面になった時、私の運命も決まった」

「ルキア・・・・好きだ・・・・」

「ん・・・一護・・・・」

体を何度も重ねた。

でも、破面の体には子はできなかった。

子が欲しいと思い、ザエルアポロの残した方法で、子を作った。

「だぁあああ」

「お前は、今日から俺とルキアの娘だ。名は・・・ウルキ」

死んでいったウルキオラの名前を、つけた。

破面の赤子は、男児だった。

いずれ、数百年後、一護の後を継いで、虚圏の王になるだろう。

「ふふ・・・赤子か。かわいいな」

虚圏では、食事は必要なかったが、一護とルキアは好んで人間の食事を口にした。

ああ。

恋次と白哉と食卓を囲んでいたあの頃が懐かしい。

私は、もう尸魂界には戻れぬ。

恋次も兄様も、元気にしているだろうか。

「何を考えてんだ?」

「いや・・・昔のことを」

「もう、昔を振り返るのはやめろ。お前は俺の妻で、虚圏の女王だ」

もう、戻れぬのだ。

こうなるくらいならば、あの高校時代に一護の手をとっていればよかった。そう思うルキアがいた。

一護は虚圏の王として、数百年君臨した。その傍には女王であるルキアの姿もあった。

破面になり、一護と結ばれたことを幸福には思うが、恋次や白哉ともう会えぬだけあって、悲しみにも打ちひしがれた。

ウルキと名付けられた破面の男児は、美しい青年に成長していた。

「ウルキ・・・・よくぞここまで成長してくれた」

ルキアは、ウルキを抱き締めた。

そんなルキアの様子を見て、一護は満足そうだった。

理を捻じ曲げ、虚である破面に落ちてまで-----------------ルキアを愛した男、黒崎一護。

だめだと分かっていながら、それについていって自ら一護と同じ運命を辿った女、朽木ルキア。

共に結婚していた。けれど、お互いだけを見ていた。

ハッピーエンドにはならぬ物語。

そう分かっていて、二人は常に傍にいた。

数百年もの間、お互いだけを必要として。

「愛している、ルキア」

「私も愛してる、一護」


世界が軋む。

星が落ちる。


それでも、狂った二人の愛は続く。

ただ、永久(とこしえ)に。

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