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ルキアを攫ってしまおう 虚圏の王

虚圏に、二人はいた。

虚夜宮(ラス・ノーチェス)に、二人はいた。

「このようなこと・・・」

「ルキアは、もう死神じゃない」

ルキアを攫った一護は、その力で虚圏の王になっていた。

ルキアは、その妻になっていた。

ルキアの魂を落として、破面にした。一護もまた、自分の中にある虚を引き出し、破面となった。

もう、お互い死神と人間には戻れない―-―――。


霊圧を完全に虚のものに変えた二人に、従わない破面はいなかった。もっとも、王となったといっても名ばかりで、虚圏の支配権は未だにハリベルにあり、反乱はなかった。

一護は、破面となりさらに圧倒的な力を身につけた。ルキアは最後まで死神で在ろうとしたが、虚化していく一護を放置しておくことができず、自ら破面となった。

もう二度と、恋次や兄様には会えない・・・・。

そうだと分かっていながら、一護の隣にいて必要とされることが嬉しかった。

「お前の言葉通り、お前を攫った。お前はもう、俺のものだ」

ルキアを閉じ込めて、強制的に連れてきたわけではない。

ただ、ルキアを抱き上げて黒腔(ガルガンタ)までの道を浦原にあけてもらい、このことは他言無用とした。


変わって、現世では。

何時まで経っても戻ってこないルキアと一護に、井上は心労から病にかかった。

恋次はルキアを求め探し歩いた」が、現世も尸魂界にも、痕跡は残されていなかった。

霊圧を消して、何処かに隠れているのだと思っていた。

でも、一護は霊圧を消すのが下手で、どんな場所でもどこにいたのかすぐに分かった。

やがて、二人の捜索は打ち切られ、死亡したものとして処理された。

それから20年の月日が流れた。

井上は、心労がたたり、若くして亡くなった。

恋次は、ルキアを求めて探しまくったが、ルキアの心の中に一護がいるのを知っていた。

ルキアとの籍を抜き、恋次は同じ6番隊の違う女性と結婚した。

「なぁ、一護。こんな何もない場所で、何時まで過ごすのだ」

「ルキアと俺が完全に死んだてことになるまで」

「それなら、もうなっている。消息を絶って10年以上が過ぎると、死神は殉職したものとされる」

「そうか・・・・一度、現世に戻ってみるか」

破面だというが、見た目はほとんど昔と変わっていなかった。

ただ、胸の真ん中に破面の証である穴があった。

ルキアも、顔に破面としてのものがない。ただ、胸に大きな空洞があった。

二人は、黒腔を開き、現世にやってきた。

霊圧を0にする技を習得した。

黒崎家にくると、隣人から井上が死んだ話を聞かされた。

悲しいとも、思わなかった。

20年以上が経過しても、我が家は我が家だった。

もう遊子も夏梨も結婚して家を出てしまった。

家にあがると、父親の一心がいた。

「一護、お前生きていたのか!ルキアちゃんまで!」

初老にさしかかっている父親には、昔の覇気が感じられなかった。

「見た目が変わっていない・・・・どういうことだ?」

「俺は、人間でも死神でもない。ルキアもだ。破面だ」

「おい、お前!」

殴りかかってくる父親をいなすのは、簡単なことだった。

「恋次君や白哉君にばれたら、殺されるぞ」

破面は、虚の一種だ。

死神の敵だった。

「もう無理だ。それ以上の力を手に入れた。俺からルキアを取り上げようとするなら、恋次や白哉であれ許さない」

「恋次、兄様・・・・今頃、どうしておられるだろう」

「いくぞ、ルキア」

「あ、待て一護!」

一護とルキアが破面になっていた。

そんなこと、とてもじゃないが尸魂界には伝えれなかった。

だが、その二人の様子を見ていた者がいた。

恋次だった。

波長は全然違うかったが、愛したルキアの霊圧に似た霊圧を僅かながらに感知した。

黒腔をあけて、戻っていく二人に紛れて、恋次も虚圏に来てしまった。

「ルキア・・・愛してる」

「ああっ、一護」

睦み合う二人を、遠くから見ていた。

もう、俺の知る純情なルキアは死んだのだ。

せめて、俺の手で葬ってやろう。

いや、涅マユリに見せれば元に戻る方法もあるかもしれない。

そう思って、ルキアの腕をとって逃げ出そうとした。

「恋次?ああ、懐かしいな・・・貴様は死神だから、あまり見た目が変わらぬのだな。兄様はどうしている。元気か?」

そう口早に言われて、恋次は歩みを止めた。

「なんで破面なんかになった!俺を愛してたんじゃねーのかよ」

「私はな・・・・ずっと、一護を見ていたのだ。一護が破面になる道を選び、私も同じ道を選んだ。今の破面は大人しい。私も一護も、手を出されない限り、何もせぬ」

恋次は、ルキアを抱きしめて、口づけた。

すると、ゆらりとあのユーハバッハさえこす、凄まじい霊圧がぶつけられた。

「何、俺の世界に紛れ込んで、俺の妻を手を出してるんだ!」

「恋次!逃げよ!」

一護は基本無害だ。だが、ルキアのこととなると、人が変わる。

「ルキア、破面になるなんて!涅隊長のところに行けば、元に戻す薬を作ってもらえるかもしれない!俺と一緒に行こう!」

さぁと、元夫であった愛しい恋次が手を差し伸べてくる。

「破面から、死神になど戻れぬ。一度落ちたのだ。それに、涅マユリの実験体にだけはなりたくない」

ルキアは、涙を零しながら、恋次の手を取らず、一護の隣に並んだ。

「兄様には、このことは伏せておいてくれ。今の一護の力はすさまじい。あのユーハバッハや藍染以上だ。たとえ兄様でも、一護には勝てぬ」

「ルキアああああああああ!」

恋次の叫びは、黒腔におちいく。

「それでいい、ルキア」

隣に在ることを選んだルキアを抱き締めて、口づける。

「このような、罪深い存在・・・・・」

「お互い、妻と夫がいた。でも、もう昔のことだ」

ルキアには、もう一護しかいなかった。一護の隣で、何もない虚圏で時を過ごす。




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