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一護がルキアを好きな理由9

井上の存在を無視しながら、授業を受ける。

浦原が、これ以上騒ぎを起こす前にと、井上に記憶置換を使い、井上から一護を好きな記憶を全て奪ったのだ。

自業自得とはいえ、哀れだった。

「黒崎くーん、朽木さーん、屋上でお昼ご飯たべよ」

無害になった井上は、前までのような明るさと優しさを取り戻した。

これでよかったのだと、二人とも納得した。

クラスメイト達には記憶置換を使い、何事もなかったことにしていた。

烈火の如く怒っていたたつきも、平常運転だ。

屋上で昼食をとりにいこうとすると、水色と啓吾もついてきた。水色と啓吾も、記憶置換をで元に戻されていた。

「朽木さんに井上さんと一緒にとは・・・・両手に花とはけしからん!」

「うっせーな、啓吾。蹴るぞ」

すでに蹴っていた。

「うるとら酷い!」

「あー、あと卒業まで半月かー。高校3年、長いようで短かったなぁ」

水色の声に、一護も思いを馳せる。

ルキアと出会ったことで、人生の全てが変わった。

ルキアと付き合いだしていろいろあったが、好きだと打ち明けて、恋人同士になれてよかったと思っている。

きっと、一護が好きだと言わなかったら、ルキアは恋次と交際を始めていただろう。恋次がルキアのことを好きなのは知っていた。

でも、これだけは譲れない。

ルキアは俺のものだ。

その日の昼食は、購買で買った焼きそばパンとカレーパンだった。

「一護のお弁当の方がおいしい・・・・」

「え、何、一護のやつ、朽木さんの分の弁当も作ってくるの?」

「そうだぞ。一護の手料理は美味いのだ」

「まぁ、一緒に住んでるからな」

それを二人は知っていたが、ここまでできているとは思っていなかった。

「ああ、二人は親公認の同棲・・・・もう、結ばれたのだろうか」

啓吾の言葉に、ルキアが首を横に振る。

「私と一護は、高校卒業までは清い関係なのだ!卒業旅行で、処女を失うことになっている」

ルキアの爆弾発言に、井上も啓吾も水色も固まって赤くなった。

「あーあーあーあーあーなんでもねぇよ!行くぞ、ルキア!」

「あ、まだカレーパンが・・・・」

ルキアをずるずると引きずって、人気のない教室に入る。

その間にルキアは、残っていたカレーパンを全部食べてしまっていた。

「ルキア、卒業旅行のこと、あんまり公にするな」

「何故だ?」

「その、恥ずかしいだろう!」

「私は恥ずかしくないが」

「俺が恥ずかしいんだよ、バカ!」

ルキアを抱き寄せて、キスをする。

カレーパンの味がした。

「いいか、卒業旅行のことは、親父にも妹たちにも、友人たちや知人にも内緒だぞ!」

「もう、兄様に連絡済みだ」

一護は、天を仰いだ。

でも、白哉は特に何も言ってこなかった。

「白哉は、卒業旅行について、何か言ってなかったのか?」

「一護が、私を捨てて他の女に乗り換えるようなら、千本桜の錆にすると仰っていた」

「おお、こええ・・・・・」

まぁ、一護がルキア以外の女と付き合うはずがない。

井上に記憶をいじられても、結局は元の鞘に収まったのだ。

「卒業旅行は、私と貴様だけの秘密なのだな?」

「もう大分秘密じゃなくなってるけど、一応秘密な」

「恋次に、一護に初めてをあげるのだと言ったら、悔しがっておった」

「おいおいおいおい、ルキア。何恋次にまで爆弾発言してるんだよ!」

「だって、恋次は家族だ」

「恋次は、お前のこと好きなんだぞ」

「そうなのか」

別段、驚きはしなかった。

「言っとくけど、俺みたいにルキアのことが好きなんだぞ」

ぶーーーー。

飲んでいた、紙パックのオレンジジュースの中身を、ルキアは吹き出していた。

「れ、恋次が?」

「そうだ」

「そうで、あったのか。道理で、よく「好きだ」とか言ってきただな」

「もう、昔みたいに恋次にもあんまり気を許すんじゃねーぞ。恋次は襲ったり、井上みたいに記憶をいじってきたりはしねーだろけど、念のためだ」

「分かった・・・・恋次と二人きりになるのは、なるべく避けるようにする」

昔は、よく恋次と一緒に同じベッドで眠っていたと言ったら、一護は怒るだろう。

そうかと、思い出す。

恋次との時間は、甘い恋人同士のようなものだったのだ。

だが、一切手を出してこなかった。

抱き締められることや頭を撫でられることがあったが、キスもしなかった。

「兄様に、恋次が元気か聞いてみよう」

白哉専門伝令神機で、白哉に電話をして恋次のことを話すと、ちょうど隣にいたので、恋次が出た。

「恋次、元気にしておるか」

「おう、なんか用でもあったのか?」

「いや特には・・・・」

「一護の奴は、優しいか?」

「ああ、とても優しい」

「ないとは思うけど、振られたらいつでも尸魂界に帰ってこいよ!俺が待ってるから!」

ルキアから伝令神機を取り上げて、恋次に噛みつく。

「恋次にルキアを渡すような真似はしねーよ」

「うお、一護いたのか。びっくりするじゃねーか」

「ルキアは俺のものだ!」

「そんなこと、わーってるよ。井上に記憶いじられて、少しルキアを泣かせたそうだな」

「う・・・・・」

「ルキアを泣かせるなよ!あんまり酷いと、俺がさらっていっちまうからな」

「そんなこと、させるかよ!」

「たわけ、一護、貸せ」

ルキアが、伝令神機を奪い返す。

「一護とは、結ばれる。それが私の望みだ、恋次」

「そうか。振られた俺は、大人しくやけ酒でも飲んで、彼女候補でも探すか・・・5席に綺麗な子が入ってきたんだよな・・・・・ねらい目か?」

「そうだぞ、恋次!貴様は副隊長だし、見た目も悪くない!ガンガン攻めて落としてしまえ」

「おう!じゃあな、ルキア」

恋次が、白哉と変わる。

「そこにいるか、黒崎一護・・・・・・」

「なんだよ、白哉」

「ルキアのために、全てを捨てる覚悟はあるか?家族も友さえも」

「ある」

「では、卒業旅行が終わったら尸魂界に来い。身辺整理をして」

「どういうことだよ、白哉」

「兄には、本物の死神になってもらう。私やルキアと同じ時間を生きるのだ」

「え・・・・・」

一護が、言葉に詰まる。

「嫌ならば、ルキアは渡さぬ」

「わーったよ。突然すぎてびっくりしただけだ。ルキアのためになら、死神にでも悪魔にでもなってやらぁ!」

「一護・・・・・」

ルキアが、泣いていた。

「じゃあまたな、白哉」

急いで伝令神機を切って、ルキアと目線を合わす。

「どうしたんだ、ルキア」

「家族よりも私をとってくれるのか・・・・・愛している、一護」

「死神になっても、家族と絶対に会えないわけじゃねぇだろ?それに、ルキアとずっと一緒にいたい。死神なれと言われるなら、なるさ」

一護の決意は固い。

ルキアとの別れと家族との別れ、どちらを選ぶと言われた、家族との別れを選ぶ。

「貴様と、永遠の愛を・・・・・」

ルキアの、一護があげたアメジストをあしらったヘアピンが、窓の外から入ってきた太陽の光を受けて、キラリと輝いた。

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