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黒猫と白猫の亜人外伝1

サタナシア・オルタナティブ。

それが、本当の名前だった。

通称サタン。

猫人の里で愛され育ってきた少年の中にいるモノ。

生まれた時、父の手によってサタンへの供物として、その少年は生贄にされた。臓物を捧げられた。

その生贄に、サタンは宿り、命をもった。捧げられた臓物を巻き戻りするように、赤子の腹に入れて、おぎゃあと泣いた。

サタナシア・オルタナティブ。通称サタン。

父が望むものとは違うナニカが、少年の中に宿るが、父は成功だと喜んだ。

少年は、魔人だった。

それを隠して生きる。

サタナシア・オルタナティブは、京楽春水という名を与えられて、今を生きる。

もう、自分の中にいたナニカが、サタンであったのかも忘れてしまっていた。

「ボクは‥‥‥誰、だっけ」

一人、ぽつんと月を見上げる。

「ここ、いいか?」

「うん」

浮竹が隣に座る。

浮竹十四郎。ボクだけでなく、ボクの中にいるナニカも愛する、ボクの伴侶。

一緒の時間を生きるうち、ボクの中にあったナニカは、ボクと同化してしまった。

ただ、サタナシア・オルタナティブという名前だけは忘れなかった。

「今日も、君を愛しているよ、浮竹」

少年は青年になり、白猫の亜人を伴侶とした。



それは、遠い過去のできごと。

サタンは、魔人であり魔神であり、人食いの化け物だった。

虐げられ、一部では崇められた。

サタンは、自分の一部をきりとって、サタナシア・オルタナティブとそれに名を与えた。

通称サタン。

でも、サタンではない。

サタンは、悪魔の国で、深い眠りにつく。

時折、黒猫の亜人の臓物を捧げられては、目を覚ます。


「自由に生きるがいい。我が、最愛の‥‥‥」

プツリ。

そこで意識は途切れて、ごちゃごちゃになり、サタナシア・オルタナティブが青年の中でふと意識を取り戻す。

「ああ、ボクは‥‥‥‥」

ボクの中に混じった、ナニカ。

それは、通称サタン。

「ボクは‥‥京楽、春水。浮竹、君を愛する、者」

京楽は、金色で光る瞳で浮竹を見る。

浮竹は疲れてしまっているのか、眠っていた。

「愛してる愛してる愛してる」

まるで、壊れたラジオ。

同じことを繰り替えす。

空を見上げると、星が降ってきそうだった。

星が掴みたくて、手を伸ばすが届かない。

どれだけ望んでも。


「ボクはもう、ナニカじゃない。京楽春水だ」

ボクは同化してしまった。

魔力も、ただの黒猫の亜人のもの。

片割れの、伴侶に大半の魔力を譲渡した。

もう、禁忌の魔法を1、2回使うのがやっと。

昔は、大きな大地を焦土に変えるほどの力があったが。

今は、京楽春水。

京樂春水として、浮竹十四郎を愛して生きよう。

ボクは、もう京楽春水なのだから。







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