凍った砂時計 軋む世界
世界は廻る。
軋む音を立てて。
ルキアは見合いをしていた。
豪華な振袖を着て、黒い髪をまとめあげ、翡翠の髪飾りをしていた。
元流魂街の出身ではあるが、4大貴族朽木家の姫君として扱われた。
ルキアは見合いなどしたくないと言っていたのだが、どうしてもと何度も念をおされて、白哉が貴族の体裁をたもつためにOKしてしまったのだ。
身目麗しい人で、市崎ナガレという名の、4大貴族に勝るとも劣らない上流貴族の当主だった。
長々とした話を、ぼんやりと聞いていた。
ナガレには両親がついていたし、ルキアには白哉がついていた。
「ルキアさん、どうか私と結婚してください」
「すみんせん、私には心に決めた人が」
「それでも構いません。あなたには、私の子を産んでほしい」
ぎょっとした。
心の決めた相手がいるといったのに、全然動じることがなかった。
ああ、貴族の婚姻とはこういうものなのかと思った。
「私はあなたとは結婚しません。好きな方と結ばれます」
ナガレは、少しを顔をしかめた。
「私はあなたを手に入れる。どんな方法を使っても」
「無駄です。私の想い人は人間ですが、私はその方を慕っています」
「言ったでしょう。どんな方法を使っても手に入れると」
ルキアの顔が青白くなった。
この男、本当に何か卑怯な手段を講じてルキアをさらっていきそうな気配がする。
「今日の見合いはなかったことにしてください。それでは」
ルキアは席を立つと、去っていった。
朽木家で行われた見合いであった。
ナガレは両親に止められていたが、それでもルキアを手に入れてみると豪語していた。
「ルキア・・・・先ほどの見合いを破談にするのはいい。私が、ナガレ殿の謝罪しよう。だが、想い人が人間というのは・・・」
白哉は知っている。一護とできているのを。だが、しょせん人間だ。一緒に生きていくことなどできない。
だから、見合いをさせて平穏な死神としての幸せを享受してほしいと思っていた。
「兄様・・・・私には、一護がいるのです。もう、見合いはしません」
「ルキア、本気なのか。黒崎一護人間なのだぞ。結ばれることなどない。例え結ばれたとしても一時的なもの。先にいってしまう。幸せにはなれぬのだぞ」
「兄様。私はもう今十分に幸せなのです。一護の傍にいれる。それだけで幸せなのです。たとえ先にいかれても、魂魄はやがて尸魂界にくるでしょう。いつかまた、巡り合えます」
「ルキア・・・・・」
白哉は長い溜息を零した。
「お前がそこまで言うのであれば、心はもう決まっておるのであろう?ルキア、黒崎一護と本当に付き合うのなら、死神をやめてただの人間になってもらう。それでも、黒崎一護を選ぶのか?」
白哉は思った。
これで泣きついてくるようなら、市崎ナガレとの婚姻を進めようと。
市崎家の当主だ。きっと、ルキアを幸せにしてくれる。身分も確かだし、妾を作るような男でないことは、少しだけ交流のある白夜が知っていた。
ただ、少し我儘なところがあって、欲しいと思ったものは手段を選ばず手に入れきた。でも、そんなこと貴族としては当たり前のことだった。
「人間に・・・・一護と同じ時間を過ごせるのならば、喜んで人間になりましょう。死神とての責務も矜持も捨てることになって、一護を選びます」
また、白哉は大きいため息をついた。
「もうよい。黒崎一護を死神にする方法を、なんとか見つけよう。ルキアは、人間になってもらうといったが、私が嫌なのだ。義妹であるお前が人間になり、儚く散るなど。手放したくない。これは私の我儘だ。ルキア、お前は死神のまま幸せを掴め」
思ってもいない白哉の言葉に、ルキアのアメジストの瞳から涙が零れた。
「兄様・・・兄様、兄様、大好きです。お慕いもうしております、兄様」
白哉の服の裾を掴んで、ルキアはいつまでの白哉のために涙を零していた。
高校3年の終わりは穏やかに過ぎてった。
「貴様、私と結ばれるためならば、なんでもするか?」
「当たり前だろ。ルキアと一緒にいられるなら、なんでもする」
「では、捨てろ。家族も友人も」
そう言われて、さすがの一護も眉を顰めた。
「家族を、友人を捨てろだって?」
「そうだ。私のためなら、なんでもするのであろう?」
「そりゃそうだが、どういうことだよ」
「貴様は本物の死神になるのだ。私が人間になるという選択肢もあったが、兄様が貴様を死神にすると言った。一護、貴様は高校卒豪と同時に尸魂界に迎えられる。今までのように家族や友人と共にはあれぬであろう」
「そういうことか・・・・いいぜ。ルキアと一緒にいれるなら人間をやめる」
「本当によいのだな」
「ああ。死神だろうが破面だろうが、なんにでもなってやるよ」
ルキアは、一護を抱きしめた。
「すまぬ、貴様には辛い思いをさせる」
「お前と一緒にいれるなら、辛くなんてねーよ」
一護の部屋で、夜になり一緒のベッドで横になった。
「好きだ、ルキア」
「私も好きだ、一護」
たとえ、その引き換えに全てを失うことになろうとも。一護は、ルキアと共に在れる選択肢をするだろう。
ルキアの細い体を自分のほうに抱き寄せる。
シャンプーのいい匂いがした。
「ルキア・・・・」
「ん・・」
口づけると、ルキアは一護に甘えてきた。
舌が絡む口づけを繰り替えす。
「あまり、盛るな。貴様が辛いだけだ」
もう、黒崎家では体を重ねることはないだろう。
「大丈夫だ。抱きたいけど我慢するから。今までもずっと我慢してきたんだ。お前の傍にいらるなら、体の関係なんていらない」
「いちご・・・・」
高校の生活終了まであと3か月。
ルキアも一護も、1日1日を大切に過ごしていく。
朝起きると、ルキアは慌てた。
「学校に遅刻するぞ、一護!というか、もう完全に遅刻だ、一護」
時計を見ると、9時を回っていた。
「なんでもっと早く起こしてくれなかたったんだよ!」
「たわけ、貴様が夜中にキスなどしてくるから、ドキドキしてなかなか眠れなったのだ!」
それは本当だった。
一度、肉体関係をもったが、それ以後はそんな関係はなかった。
一護が黒崎家ではもう抱かぬと言っていたが、それでも抱かれるかもしれないと思い、ドキドキが止まらなかったのだ。
一護は、ハグやキスはするが、抱くような行為は一切しなかった。
結局、2時間目から授業に出た。
その日、最後の進路希望先が配られた。
ルキアも一護も、死神と書いて、先生に怒られた。
「こら朽木、黒崎!この死神というのはなんだ!朽木は実家の家業を継ぐ、黒崎は空座大学に進むんじゃなかったのか!」
「あ、先生、俺死神になるんで、大学行きません」
「死神というのが家業ですの」
そう答えると、こっぴどく担任から怒られた。
仕方ないので進路先は一護は空座大学、ルキアは家業を継ぐ、というのにかえた。
本当に、卒業したら死神になるのだが。現世の人間には理解されないであろう。
一護は迷っていた。家族に死神になって現世を捨てることを告げるかどうか。
世界の歯車は廻りだした。
時は加速していく。
緩やかだった砂時計が、砂を凍らせる。
一護もルキアも知らなかった。すでに、ルキアが尸魂界で、市崎ナガレの妻として籍を入れられていることを。
軋む音を立てて。
ルキアは見合いをしていた。
豪華な振袖を着て、黒い髪をまとめあげ、翡翠の髪飾りをしていた。
元流魂街の出身ではあるが、4大貴族朽木家の姫君として扱われた。
ルキアは見合いなどしたくないと言っていたのだが、どうしてもと何度も念をおされて、白哉が貴族の体裁をたもつためにOKしてしまったのだ。
身目麗しい人で、市崎ナガレという名の、4大貴族に勝るとも劣らない上流貴族の当主だった。
長々とした話を、ぼんやりと聞いていた。
ナガレには両親がついていたし、ルキアには白哉がついていた。
「ルキアさん、どうか私と結婚してください」
「すみんせん、私には心に決めた人が」
「それでも構いません。あなたには、私の子を産んでほしい」
ぎょっとした。
心の決めた相手がいるといったのに、全然動じることがなかった。
ああ、貴族の婚姻とはこういうものなのかと思った。
「私はあなたとは結婚しません。好きな方と結ばれます」
ナガレは、少しを顔をしかめた。
「私はあなたを手に入れる。どんな方法を使っても」
「無駄です。私の想い人は人間ですが、私はその方を慕っています」
「言ったでしょう。どんな方法を使っても手に入れると」
ルキアの顔が青白くなった。
この男、本当に何か卑怯な手段を講じてルキアをさらっていきそうな気配がする。
「今日の見合いはなかったことにしてください。それでは」
ルキアは席を立つと、去っていった。
朽木家で行われた見合いであった。
ナガレは両親に止められていたが、それでもルキアを手に入れてみると豪語していた。
「ルキア・・・・先ほどの見合いを破談にするのはいい。私が、ナガレ殿の謝罪しよう。だが、想い人が人間というのは・・・」
白哉は知っている。一護とできているのを。だが、しょせん人間だ。一緒に生きていくことなどできない。
だから、見合いをさせて平穏な死神としての幸せを享受してほしいと思っていた。
「兄様・・・・私には、一護がいるのです。もう、見合いはしません」
「ルキア、本気なのか。黒崎一護人間なのだぞ。結ばれることなどない。例え結ばれたとしても一時的なもの。先にいってしまう。幸せにはなれぬのだぞ」
「兄様。私はもう今十分に幸せなのです。一護の傍にいれる。それだけで幸せなのです。たとえ先にいかれても、魂魄はやがて尸魂界にくるでしょう。いつかまた、巡り合えます」
「ルキア・・・・・」
白哉は長い溜息を零した。
「お前がそこまで言うのであれば、心はもう決まっておるのであろう?ルキア、黒崎一護と本当に付き合うのなら、死神をやめてただの人間になってもらう。それでも、黒崎一護を選ぶのか?」
白哉は思った。
これで泣きついてくるようなら、市崎ナガレとの婚姻を進めようと。
市崎家の当主だ。きっと、ルキアを幸せにしてくれる。身分も確かだし、妾を作るような男でないことは、少しだけ交流のある白夜が知っていた。
ただ、少し我儘なところがあって、欲しいと思ったものは手段を選ばず手に入れきた。でも、そんなこと貴族としては当たり前のことだった。
「人間に・・・・一護と同じ時間を過ごせるのならば、喜んで人間になりましょう。死神とての責務も矜持も捨てることになって、一護を選びます」
また、白哉は大きいため息をついた。
「もうよい。黒崎一護を死神にする方法を、なんとか見つけよう。ルキアは、人間になってもらうといったが、私が嫌なのだ。義妹であるお前が人間になり、儚く散るなど。手放したくない。これは私の我儘だ。ルキア、お前は死神のまま幸せを掴め」
思ってもいない白哉の言葉に、ルキアのアメジストの瞳から涙が零れた。
「兄様・・・兄様、兄様、大好きです。お慕いもうしております、兄様」
白哉の服の裾を掴んで、ルキアはいつまでの白哉のために涙を零していた。
高校3年の終わりは穏やかに過ぎてった。
「貴様、私と結ばれるためならば、なんでもするか?」
「当たり前だろ。ルキアと一緒にいられるなら、なんでもする」
「では、捨てろ。家族も友人も」
そう言われて、さすがの一護も眉を顰めた。
「家族を、友人を捨てろだって?」
「そうだ。私のためなら、なんでもするのであろう?」
「そりゃそうだが、どういうことだよ」
「貴様は本物の死神になるのだ。私が人間になるという選択肢もあったが、兄様が貴様を死神にすると言った。一護、貴様は高校卒豪と同時に尸魂界に迎えられる。今までのように家族や友人と共にはあれぬであろう」
「そういうことか・・・・いいぜ。ルキアと一緒にいれるなら人間をやめる」
「本当によいのだな」
「ああ。死神だろうが破面だろうが、なんにでもなってやるよ」
ルキアは、一護を抱きしめた。
「すまぬ、貴様には辛い思いをさせる」
「お前と一緒にいれるなら、辛くなんてねーよ」
一護の部屋で、夜になり一緒のベッドで横になった。
「好きだ、ルキア」
「私も好きだ、一護」
たとえ、その引き換えに全てを失うことになろうとも。一護は、ルキアと共に在れる選択肢をするだろう。
ルキアの細い体を自分のほうに抱き寄せる。
シャンプーのいい匂いがした。
「ルキア・・・・」
「ん・・」
口づけると、ルキアは一護に甘えてきた。
舌が絡む口づけを繰り替えす。
「あまり、盛るな。貴様が辛いだけだ」
もう、黒崎家では体を重ねることはないだろう。
「大丈夫だ。抱きたいけど我慢するから。今までもずっと我慢してきたんだ。お前の傍にいらるなら、体の関係なんていらない」
「いちご・・・・」
高校の生活終了まであと3か月。
ルキアも一護も、1日1日を大切に過ごしていく。
朝起きると、ルキアは慌てた。
「学校に遅刻するぞ、一護!というか、もう完全に遅刻だ、一護」
時計を見ると、9時を回っていた。
「なんでもっと早く起こしてくれなかたったんだよ!」
「たわけ、貴様が夜中にキスなどしてくるから、ドキドキしてなかなか眠れなったのだ!」
それは本当だった。
一度、肉体関係をもったが、それ以後はそんな関係はなかった。
一護が黒崎家ではもう抱かぬと言っていたが、それでも抱かれるかもしれないと思い、ドキドキが止まらなかったのだ。
一護は、ハグやキスはするが、抱くような行為は一切しなかった。
結局、2時間目から授業に出た。
その日、最後の進路希望先が配られた。
ルキアも一護も、死神と書いて、先生に怒られた。
「こら朽木、黒崎!この死神というのはなんだ!朽木は実家の家業を継ぐ、黒崎は空座大学に進むんじゃなかったのか!」
「あ、先生、俺死神になるんで、大学行きません」
「死神というのが家業ですの」
そう答えると、こっぴどく担任から怒られた。
仕方ないので進路先は一護は空座大学、ルキアは家業を継ぐ、というのにかえた。
本当に、卒業したら死神になるのだが。現世の人間には理解されないであろう。
一護は迷っていた。家族に死神になって現世を捨てることを告げるかどうか。
世界の歯車は廻りだした。
時は加速していく。
緩やかだった砂時計が、砂を凍らせる。
一護もルキアも知らなかった。すでに、ルキアが尸魂界で、市崎ナガレの妻として籍を入れられていることを。
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