凍った砂時計 市崎ナガレの妻、市崎ルキア
高校3年の、残された時はあっという間に過ぎ去ってしまった。
卒業式の日、ルキアは泣いていた。
この3年間で、半年たらずではあったが、友人たちに囲まれて生活をして、ルキアには一護の他に井上、茶虎、石田という大切な友人たちができた。
「卒業生代表、石田雨竜」
長々とした言葉が続き、継いで在学生代表がまた長々と言葉を続ける。
生徒全員が立ち上がって、校歌を歌いだした。一護も歌っていた。ルキアは校歌なんて聞いたこともないでの、口パクしていた。
一人一人に、卒業証書が渡されて行く。
一護も、卒号証書を受け取った。そしてルキアも。
ポロポロと流れ落ちる涙は、止まりそうにもない。
桜の花はまだ咲いていなかった。代わりに、梅の花が咲いていた。ルキアは桜の花が好きだった。義兄である白哉の千本桜が好きだった。
実の姉であるという、亡き白哉の妻緋真は、梅の花が好きだった。ルキアも、桜の花ほどではないが梅の花が好きだった。
高校の卒業式、ルキアは泣きまくった。
「うわーん、黒崎君、朽木さん、茶虎君、石田君、別れるなんていやだよー」
井上の言葉に頷きながら、井上と一緒になって泣いた。
「貴様らと別れるなど・・・」
「でも、朽木さんはいつでも現世にこれるだろう」
石田の言葉に、茶虎も頷く。
「進路先はみんな別々だが、時折集まって会おう」
「約束だからね、黒崎君、朽木さん」
「ああ、井上」
ルキアは涙をぬぐった。
「黒崎君、私黒崎君のことが好きなの!」
一護の心が、ズキリと痛んだ。
「俺は・・・・ルキアが好きだ」
「うん、知ってた!でも、私も黒崎君のこと好きだって、分かってほしい。また、黒崎君の家に遊びにいくから!」
もう、井上が会いにいっても、一護はその時いないだろう。
一護は選んだ。
ルキアを。
ルキアと共に、尸魂界で死神として生きることを。
「名残惜しいが、ここでさらばだ。井上、茶虎、石田、元気でな!」
「井上さんも元気で!」
尸魂界に帰っていくルキアの背中を、一護がゆっくりとついていく。
「え、黒崎君?」
「井上、ごめんな。俺、人間じゃなくなるんだ。死神になる。緊急事態がない限り、もう現世には戻らない」
「え・・・・」
茶虎と石田も驚いていた。
「おい、黒崎!」
「一護!」
「ごめん、さよならだ」
そうして、穿界門は、3人の前で閉じらてしまった。
井上が、ショックのあまり放心していた。
「黒崎君・・・朽木さんを選ぶってこと・・・・?」
ルキアを選ぶだけならまだいい。ルキアと、同じ死神になる・・・・つまりは、ルキアと生きるということ。
世界は軋む。
音を立てて。
尸魂界に帰還したルキアと、やってきた一護を、市崎ナガレが待っていた。
「あなたは・・・・・」
「待っていましたよ、市崎ルキア。あなたはもう私のものだ。籍をもう入れてあります。あとは婚礼を行って、初夜を迎えて子を産んでくださればいい」
「おい、てめぇ誰だ。ルキアと籍を入れただって?本人のいないところで、何好き勝手やってるんだよ!」
「兄様がこのようなこと、お許しになるはずがない!貴様、兄様に何かしたな!?」
「何、朽木白哉様の記憶を少しいじっただけのこと。涅マユリの薬は凄いですな。後は、あなたが私も元にくるだけだ」
「貴様、兄様を元に戻せ!」
斬魄刀を抜き放ち、切りかかってくるルキアを、市崎ナガレは斬魄刀で受け止めた。
「あなたは、私の妻だ」
記憶置換を、ルキアに向けて使う。
「一護、貴様はナガレの手にかかる前に、一度現世に戻れ!」
最後の力を振り絞って、ルキアは穿界門を開ける。
だが、一護はその場に残った。
ざっと現れた暗殺者たちに囲まれる。
「ルキア!俺を忘れるな!!記憶置換なんかで、記憶をいじられるな!」
「たわけ、当たり前だ!」
「おや、いいのですか?今、朽木白哉様の命が私の手の中にある」
「貴様あああああああああ!兄様を返せええええええええ!!!」
卍解をしようとしたルキアの目の前で、白哉が連れてこられた。
「ルキア、何をしている。早く、ナガレの元にくるのだ。婚礼を執り行わなければ」
「兄様!しっかりしてください、兄様!」
「私は・・・・ルキア、早くナガレの元にくるのだ。黒崎一護は、私が処分する」
「兄様!」
「散れ、千本桜・・・・・」
「白哉!!」
一護は、白哉を切れなかった。暗殺者たちは切り殺したが、白哉を切ることがどうしてもできなかった。
「黒崎一護。我が義弟となる市崎ナガレの邪魔だ。兄は、ここで死ね」
ざしゅっと。
白哉の千本桜が、一護の体に突き刺さっいた。
「いやあああああ!兄様、一護おおおおおおおおお!!!」
「少しうるさいですよ、ルキア。我が妻の元恋人を生かしておけるわけがないでしょう」
「貴様ああああああ!」
強力な記憶置換が、ルキアに使われた。
「ルキア!白哉!」
血を流しながらも、寸前で急所を避けたので一護は生きていた。
血さえ止まれば、なんとかなる傷だった。
砂時計は墜ちていく。
世界が軋む。
音を立てて。
砂時計が凍り付いた。
「ナガレ様、兄様、行きましょう。このような、死神代行など放っておいて」
「ルキア、ダメだいくな!」
ふらつく足で、ルキアの死覇装の裾を握った。
「汚らわしい!私は市崎ルキア。市崎ナガレ様の妻」
市崎ナガレは笑った。
「あははははは!これで、4大貴族の朽木家も私のものだ!」
「ルキアあああああ!」
去っていくルキアと、白哉。そして、市崎ナガレ。
また、暗殺者がたくさん現れた。
一護は、傷ついた体で撃破していく。
もう、目の見える場所に3人の姿はなかった。
「ちくしょおおおおおおおお!!!!!」
暗殺者たちを切り殺していく。
やがて、警邏隊がやってきて。捕縛されたのは一護だった。
「なんでだよ!なんで俺が捕まんなきゃならねぇんだよ!」
砕蜂が現れた。
「全て、貴様の仕業であろう、黒崎一護。朽木白哉の記憶を改ざんし、よりにもよって次期朽木家当主である市崎ナガレを暗殺しようなど・・・・・・」
砕蜂まで、市崎ナガレの手で記憶が改竄されていた。
一護は捕縛され、傷の手当てをされたが、牢に繋がれた。
世界が軋む。
音を立てて。
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