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一護の誕生日(閑話)

7月15日。

一護の誕生日であると知ったルキアは、ネットでチャッピーの抱き枕を注文した。

「一護!たたたたた、誕生日おめでとう!」

ケーキは作れなかったが、代わりにクッキーを焼いた。

綺麗にラッピングされたチャッピーの抱き枕を受け取って、一護は照れていた。

「ありがとう、ルキア。まさか死んでからも誕生日を祝ってもらえるなんて、思ってもなかった。中身、あけてもいいか?」

「ああ、いいぞ」

きっと喜んでくれる。そう思っていたルキアとは反対の表情を、一護は浮かべた。

「抱き枕でチャッピーかよ」

少し悲しくなって。

「いらぬのなら返せ!」

「誰もいらねぇなんていってねぇ!」

ふわりと抱き寄せられた。

「ありがとうルキア。気持ちだけでも嬉しいぜ」

「たたたたわけ、愚か者!」

一護の鳩尾に拳をいれて、ルキアは真っ赤になった。

「きいた・・・・・ああ、いい匂いがする」

「あっ、クッキーを焼いたのだ。食べてくれるか?」

「勿論食べるに決まってるだろ」

さくさくと、一護はルキアの手作りクッキーを食べた。

「味はどうだ?」

「うまいぞ。初めて作ったんだろう?」

「何故わかるのだ?」

「焦げたり、形がいびつだったりしてるから。それにルキアは、朽木家の者だしな」

「たわけ、そんなことがはないぞ。これでもたまに料理はするのだ。兄様のお弁当を作ったり・・・兄様がとても喜んでくれるからな」

「なぁ、ルキア」

キスをされて、真っ赤になると、一護が耳元でこう囁いてきた。

「今日だけは、白哉の話はしないでくれ」

「どうしてだ?」

「嫉妬しちまう」

結婚して、1か月はたつというのに、体を重ねてもルキアは初心なところは変わりなかった。

「好きだ・・・・・」

ルキアを抱き寄せて、耳をかじると、ビクンと腕の中のルキアが反応した。

「あ、一護・・・・・・」

「愛してる。俺の嫁は、世界で一番かわいい」

少し長くなった黒髪に口づけられて、そのまま抱き締められて、舌が絡まる深いキスをされた。

「いちご・・・・」

「好きだ。愛してる」

「私もだ、一護・・・・・」

キスに応えてくるルキアはかわいかった。

「にゃあ」

「琥珀、いいところだからあっちいってろ」

猫の琥珀は、またにゃあと鳴いて去って行った。

「今日は、確か白哉は帰ってこないんだよな?」

「ああ、そうだが・・・」

ちょうど、休日だったのだ、二人とも。

「うおっし、久しぶりにイチャイチャラブラブするぞ」

「ええっ!?」

昼食を、全部ルキアの分を一護が食べさせたり、反対に夕飯をルキアが一護に食べさせたり、意味もないのに触れ合ってごろごろしたり、一緒になって一つの布団で昼寝したり。

「今日の最後のプレゼントが欲しい」

「何が欲しいのだ?私で叶えられることなら・・・・・」

「お前が欲しい」

真顔で、そう言われた。

「なっ・・・・・」

「いいだろう?結婚式も挙げたし、もう何度も体を重ねてる」

「仕方ないな・・・いいぞ」

「おっし」

軽いルキアを抱き上げて、一緒に湯あみをした。

髪をかわかしてから、布団の上で睦みあう。

「あ・・・・・・」

真っ白なルキアの肌は、吸い付てきそうなほどにすべすべしていた。

アメジストの瞳が、潤みながら見上げてくる。

「お前が欲しい・・・・」

「んっ・・・・ああっ!」

ルキアの体のそこかしこが甘くて、夢中になった。痕をたくさん残した。

行為後のけだるい雰囲気の中、ルキアは満足そうに一護に抱き着いていた。

「いつか、子ができるといいな」

「そうだな」

朽木家の次代当主になるのだろうか。

ルキアをかき抱いたまま、その日は眠った。

「一護、朝だぞ起きろ」

「ん・・・・もう朝か」

「兄様が戻っていらしている。早く支度をして朝餉をとりにいかねば」

「ちっ、白哉め・・・・・・」

同じ屋根の下で暮らしているのだから、当然のように顔を見ることになる。

離れの屋敷にルキアと住まうことを提案したのだが、白哉に断固と拒否された。シスコンの白哉は、手の届く範囲にルキアを置いておきたいらしかった。

ルキアが一護のことを好きと知って、一護もルキアのことが好きなのをいいことに、勝手に籍をいれるようなやつだ。

棒弱無人。そんな言葉がぴったりと合いそうだった。

でも、白哉は人気だった。隊士からも尊敬されていて、何よりあの恋次が、この人のためならばと、動くような上官なのだ。

「一日過ぎてしまったが、兄への誕生日プレゼントをくれてやろう」

ぽいっとよこされたそれは、一護と迷子札のついた犬の首輪だった。

「白哉義兄様の気持ちだけありがたくいただいておくよ!」

あっかんべーをして、食堂で犬の首輪を投げ返した。

「一護!兄様からのプレゼントなのだ。ちゃんと受け取れ!」

ルキアが、嫌がらせでしかない犬の首輪をもってくる。仕方なしに受け取って、後で処分することにした。

今日の朝餉は、いつもより豪華だった。

「昨日は、楽しんだか、ルキア」

ルキアは真っ赤になった。

「子ができたら、真っ先に教えろ」

「おいおい白哉、一番初めは俺に決まってるだろう」

「ふ、犬がなにかわめいておる」

ピキピキピキ。

一護の額に血管マークがいくつも浮かんだ。

「なぁ、白哉義兄様、もう少し仲良くできねぇか?」

「笑止。無理だ」

「くそったれが!」

こっちから歩み寄ろうとしてもこれだ。

多分、ルキアが恋次と結婚していたら、恋次が今の一護の立場にいるのだろう。

いや、恋次は長年副官として白哉といても平気だから、もっと扱いは違うのか。

そんなことを考えていたら、朝餉を完食する前に下げられてしまった。

「あーもう、いらいらする」

「今日は、6番隊と13番隊で合同訓練がある。行くぞ、ルキア」

「はい、兄様」

「そこの、盛るしか脳のない駄犬も、早めに来ることだ」

「ムキーーーー!」

白哉が去り際に残していった台詞に怒って、ルキアからもらったチャッピーの抱きまくらに、白哉の写真を張り付けて、殴りまくった。

「ぜーぜー。おっとやばい、遅刻する」

一護は、白哉が本気で嫌いなわけではないのだ。本気で嫌いなら、言葉も交わさない。それは白哉も同じことであろう。

「うまくいかねーな」

こじれた嫁と姑の中のようだ。

仕方なしに遅刻しないために、新しい死覇装を着て、副官の証を左腕につけて、一護も出勤するのだった。













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