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一護を忘れたルキア 結婚式前日

「ウェディングドレスは純白ではなく、水色のものにしようと思うのだ」

「いいんじゃね?」

「ヴェールは青で。全体的に青い色で統一しようと思っている」

「まぁ、純白ってのが当たり前だけど、青もいいな」

ルキアは、一護と同じ布団で、一護の胸に抱かれながら、数日後の結婚式のことについて話し合っていた。

「な、貴様も青い色もいいと思うであろう?」

「ああ。なんか新鮮だな」

「あの水族館で見た、ネオンテトラのようになりたいのだ」

「ネオンテトラか・・・ルキアがネオンテトラになったら、俺が捕まえにいく」

「ふふ・・・広大な水の中を泳いでいるのであろう?貴様に、それができるか?」

「できるさ」

一護は、胸に抱いたルキアを少し強く抱きしめた。

「貴様は、いつも暖かいな」

「そりゃ、生きてるからな」

「ふふ・・・ああ、早く結婚式の日にならぬかな。楽しみで仕方ない」

「貴族の結婚になるから、いろいろ準備がいるらしいぜ」

「私は、元々は流魂街の孤児であったのだがな。兄様に拾われて、貴族になった。今でも、自分が貴族であるのがおかしいような気がする時があるのだ」

「気にすんなよ」

一護がそう言うと、ルキアははっとなった。

「兄様の晴れ姿も見れる。ああ、着飾った兄様は美しいだろうなぁ」

「うわ、でたよこのブラコン」

「ええい、うるさいわ!兄様が好きで悪いか」

「いや、悪くねぇけど、ちゃんと夫となる俺のことも見てくれよ?」

「当たり前だ!正装した貴様は・・・かっこいいのだろうな」

ルキアは、想像して痺れそうになった。

一護は、かっこいい。正装した一護はかっこよすぎて、気を失わないだろうかとか、考えていた。


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「ねぇ、浮竹。ルキアちゃんが、一護君と結婚するんだよ。年月が経つのは早いねぇ。君が死んで70年と少し・・・本当に、月日が流れるのは早い」

京楽は、浮竹の墓の前に座っていた。

酒を、浮竹の墓にかける。

「君が生きてたら、きっと自分の身内のことのように泣くんだろうね。ああ、ボクも勇気を出して君に告白すればよかった。そしたら、今と少し違う結末があったのかもしれないね」

大戦の終了から70年と少し。

もう、尸魂界に大戦の傷跡はほとんど残っていなかった。

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結婚式の前日に、ルキアは虚討伐に赴いた。

一護は留守を任されていた。

そこで、意外と苦戦してしまい、新人が襲われそうなったのを、ルキアが庇った。

その虚は特殊で、人の記憶を喰らう。

ルキアの目の前に、虚の吸収器官が見えた。

「いやだ、忘れたくない。いやだ!一護、一護!!!」

ルキアは、虚に記憶を奪われた。

皆、ルキアをすぐに4番隊に見せたが、記憶を奪われてはいない、との診断であった。

あの虚は、全ての記憶を奪うとして、警戒されていた虚だった。

その虚は退治されて、もうこの世にいない。

奪われた記憶も、虚の退治と共に戻ったとされていた。

ルキアは、朽木家に戻った。

自分の寝室をあけて、そこにオレンジ頭の死神がいるのを見て、斬魄刀を抜く。

「貴様、誰だ!」

「は?何言ってるんだ、ルキア」

「貴様のような知らぬ者が、何故朽木家の、私の寝室にいる!」

「おい、ルキア、ふざけてんのかよ。俺だよ、一護だ」

一護は、ルキアが記憶を奪う虚に襲われたことを知っていた。

「う・・・・頭が、痛い・・・・」

ルキアは頭に手を当てて、そのまま頽れた。

一護が、顔色を変える。

「ルキア!?おい、ルキア!!!」


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「はっきり申し上げます。朽木ルキアさんは、黒崎一護さん、あなただけの記憶を失っておられます」

「は?冗談だろ?明日、結婚式なんだぜ」

「いろいろ検査した結果、虚に記憶を食われたせいだと思われます。記憶が回復するかどうかは、まだ分かりません」

一護は、きつく拳を握りしめた。

白哉もかけつけて、一護に休めといって、ルキアに会いにいった。

「兄様!あやつはなんなのですか!私と結婚するとか言うのです!知らない相手なのに」

「ルキア・・・・兄は、黒崎一護という、大切な人の記憶を失っているのだ」

「記憶を失う?でも、私は確かに記憶を奪う虚とやらにやられましたが、記憶はこの通りあります。兄様は兄様だと分かります」

「ルキア・・・・・」

一護は、涙をにじませて、ルキアの手を握った。

「思い出してくれ。俺のことを」

「うう、頭が・・・・・・」

ルキアは、一護を見ると頭痛を訴えた。耐えがたい痛みのようで、一護はルキアから引き離された。

「こんなのってありかよ・・・・・・・」

明日は結婚式。

人生でも最大の幸福の時間。

もう、式場の用意も済み、後は新郎新婦である一護とルキアがやってきて、皆に見守られながら式をあげるだけ、のはずだった。

「こんなのってありかよ!!!」

一護は、唇を噛み切った。

「ルキア、ルキア、ルキア。愛してる。俺を・・・・俺を、忘れないでくれ!!」

一護の願いは、届かなかった。

結婚式は、次の日こなかった。

ルキアは、一護のことを忘れたまま、不思議そうな顔をして、一護と共に朽木家で生活を始めるのだった。


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