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七夕(恋白)

「そういえば、今日は七夕ですね」

「ああ、もうそんな季節か。暑くなってきたわけだ」

扇風機を回しながら、うちわで涼んでいた白哉は、氷の入った麦茶を飲みながら、書類に目を通しはじめた。

昼休憩ももう終わりだ。

することもないので、仕事にとりかかろうとする白哉に、恋次が声をかける。

「そういえば、総隊長のところで笹が飾ってあるそうですよ。俺は短冊に願いかきました。隊長は?」

「叶わぬ願いなどあまりないので、いらぬ」

「風情がないなぁ」

恋次は、思ったことを口にした。

「七夕など・・・子供の頃でも、はしゃいだ記憶がない。ただ星を見る日だった」

「じゃあ、今夜星を見に行きませんか」

「どこで?」

「現世の、ちょっと田舎ですけど、空気が綺麗なところで、尸魂界にはない海が広がっている海岸です」

「ほう」

白哉は、少し気になった。

海は、ここ数年見ていない。現世の夜に照らされた星明りもだ。

「いいだろう。今日、総隊長に許可をもらいに行ってこい」

「え、俺がですか」

「そうだ。お前以外に誰がいる。私と行きたいのであれば、許可をもぎとってこい」

「今から行っていいですか!?」

「ただし、1時間以内に帰ってこい」

「わかりました!」

恋次は、飛び出していった。

そしてきっかり1時間後に、許可をもらったと、汗をかいた恋次が顔を出した。

義骸は用意されてあったが、誰かに会いにいくわけでもないし、霊体のままでよいかということになった。

夜の11時。

穿界門をあけてもらい、1時間だけの現世いきとなった。

「わぁ・・・星が綺麗ですね」

恋次は、空気が綺麗な田舎に穿界門を通じさせてもらった。

ざぁんざぁんと、波が打ち寄せる音がする。

「海か・・・・・」

何度か見たことがあるが、月明かりと星明かりに照らされただけの海は、少し寂しく感じられた。

「あれが七夕の星です」

現世の星の知識などない白哉に、恋次が語って聞かせる。

彦星と織姫の話になって、白哉は空を見上げながら恋次の手を握った。

「隊長?」

「私とお前は、離れたりせぬ。そうだな?」

「はい、そうですよ。彦星と織姫のようにはなりません」

恋次の手に口づけると、恋次は顔を赤くした。

「隊長?」

「証だ。離れ離れにならぬ証。お前もしろ」

白哉が右手を差し出す。

それに恋次が口づける。

自然と、唇が重なった。

「ふ・・・・・」

「隊長・・・・」

「現世も、暑いな・・・・」

抱き着いてくる恋次を押しどけて、白哉はひょいっと空を走る。

海の上を走る。

「散れ、千本桜」

ちらちらと、海に桜の花びらが落ちてくる。

その光景に、恋次は息を飲んだ。

綺麗だ。

そう思った。

隊長はまるで精霊かなにかのようで。

とても孤高な存在なのだと、世界に知らしめているようで。

あまりに綺麗だったので、つい伝令神機で写真をとった。

「帰るぞ」

「あ、はい」

穿界門があけられる。

1時間にも満たなかったが、美しいものを見れたので恋次は満足したし、白哉も久しぶりに海が見れたし、恋次にいろいろと現世の星のことを教えてもらって、満足した。

「また、来年も来ましょうね」

「気が向いたらな」

白哉の言葉はそっけないけれど、恋次が強請ればきっと来年も星を見に一緒に現世に行ってくれるだろう。

許可をとるのは大変だが。

今度からは、前もって許可をもらって、1時間以上は現世にいられるようにしようと思う恋次だった。




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