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京楽と浮竹と海燕と 水遊び

海が見たい。

ふとそう思った。

尸魂界には海がない。大きいな湖より広い水たまり。でも、それが彼方まで続いているのだ。

「なぁ、京楽。海にいきたい」

「こんな炎天下で?」

みーんみーんと蝉のなく音がうるさかった。

「ああ、この炎天下でも、行きたい」

「隊長、我儘言わないでください」

海燕が窘めるが、浮竹は海に行きたいと繰り返した。

「分かったよ。山じいの許可はもらえそうにないから、秘密でね」

12番隊に連絡して、穿界門を開ける用意をしてもらい、京楽は浮竹の手をつないで、穿界門をあける。

海燕もついてきた。

ざぁんざぁんと、引き返す波に、どこまでも続く水平線に、浮竹は喜んで足を海にひたして遊びだした。

「京楽もこいよ」

「仕方ないねぇ」

「ほどほどにしてくださいよ」

念のために、海燕はタオルをもってきていた。

京楽と水のかけあいっこをしていたら、足がもつれて転倒する。

「浮竹、大丈夫!?」

「ああ。きもちいいぞ。お前もこい」

浮竹にひっぱられて、京楽もずぶ濡れになる。

直射日光は、現世では少し曇っていたので、浮竹が日光で倒れそうな心配は必要ないようだった。

ただ、水に濡れた格好のままで風邪をひいてしまうだろう。

「浮竹、風邪ひくよ」

「こんなに暑いんだ。きっと、大丈夫だ」

波に漂いながら、京楽と浮竹は海の中で戯れていた。

「隊長、そろそろ戻らないと。現世にあまり隊長クラスの者がくるのは虚を呼び集めてしまいます」

「ああ、そうだな」

浮竹は、海からあがって海燕からタオルを受け取ると、髪をふくが、ずぶ濡れですぐにタオルは使いものにならなくなってしまった。

「満足したかい?」

京楽が、浮竹の濡れた白髪に口づける。

「ああ、もう十分だ。尸魂界に戻ろう」

穿界門をくぐり、雨乾堂までもどってくると、浮竹はくしゃみをひとつした。

「ああ、もう。お湯いれてますから、風呂に入ってきてください。本当に風邪ひきますよ」

「すまない、海燕」

「僕も一緒に入るよ」

京楽は、浮竹と一緒に風呂に入り、互いの髪と体を洗って、十分に体を温めたことを確認すると風呂からあがった。

お互い、髪が長いので乾かすには時間がかかる。

浮竹が京楽の髪をふいて、京楽が浮竹の髪をふいた。

「本当なら、スイカ割りだとか、ビーチバレーとか釣りとか、いろいろしたいけど、こんな暑さだしね。いつか、大人数で海に行けるといいね」

「そうだな」

「それにしても暑いな」

ミーンミーンと、蝉のなく声がうるさい。

「スイカ冷やしてたのありますから、切りますね」

海燕が、湯上りの熱さにだらけている二人を見て、そう言った。

赤い果肉だけを切り分けられたスイカが、2つの皿にもられて出てくる。

「海燕は?食べないのか?」

「俺は昨日スイカ食いましたから。ご近所からわけてもらって、都と二人では食べきれないからここにももってきてますし」

「ああ、このスイカは買ってきたものじゃなくてもらったものなのか」

「そうですよ。味は甘いです。売ってるものと同じくらい甘いですよ」

「ありがたくいただく」

フォークでさして食べれば、ほんのりとした甘さが口に広がった。

「うん、美味い」

「浮竹、ほしいなら僕の分も食べていいよ」

「いや、大丈夫だ。海燕、おかわりあるだろ?」

「どんだけ食うつもりですか。ありますけどね、一応」

「ほら」

浮竹はふわりと微笑んだ。

京楽は、ぼーっとなる。

「どうした、京楽?」

「いや、癒しの女神がいると思って」

「脳みそわいたか?この暑さのせいで」

「好きだよ、浮竹!」

「ぎゃああああああああ!!!!」

浮竹の悲鳴に、海燕がハリセンを手にやってくる。

スパン!パンパンパン!

盛った京楽の頭をはたきまくった。

「海燕君、仮にも上司の頭をハリセンで殴るのはどうかと思うよ」

「俺直属の上司じゃないからいいんです」

海燕は、京楽が落ち着いて浮竹も落ち着いたのを見計らって、ハリセンをしまう。

「盛るなら、夜にしてくださいね。こんな暑い気温の中やってたら、熱射病で倒れますよ」

浮竹が、顔を赤くする。

海燕には、京楽とできているシーンを何度か見られたことがある。

海燕はなかったことのように接してくれることが多いが、けっこう恥ずかしいのだ。

浮竹は、少しぬるくなったスイカをかじりながら、縁側から空を見上げた。

かっと、太陽が睨んでくる。

「京楽、この前みたいにたらいに井戸水汲んでくれ。足で涼みたい」

「仕方ないねぇ」

京楽はスイカを食べ終えて、たらいに井戸水を汲んで、縁側にもってきた。

京楽は浮竹を抱きしめながら、二人で足を水につける。

太陽は、少し角度を変えたので直射日光は当たらなくなっていた。

「涼しいね。夏は暑いけど、君とこうやって過ごすのは好きだよ」

耳元で囁かれて、浮竹はくすぐったそうにしていた。

海燕は、そんな二人を見ながら、残っていた書類の仕事を片付けた。

今年の夏は、京楽がいろいろと工夫して涼ませてくれるせいか、浮竹が暑気あたりで倒れることはなかった。

「明日は、かき氷でも作ろうか。氷室を開くから」

「ああ、いいな。俺はイチゴシロップな」

「はいはい」

ミーンミーン。蝉のなく音と、チリンチリンと風鈴のなる音が、ごちゃまぜになる。

暑い夏は、まだまだ続きそうだった。






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