忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 26 27 28 29 30 12

京楽の誕生日

「よお、京楽」

その人は、向日葵の花束をもって、8番隊隊舎を訪れた。

「これ、誕生日プレゼント。あとこれとこれとこれも誕生日プレゼント。誕生日おめでとう、京楽」

新しい財布やら、筆やら、判子やらが黒檀の机の上に置かれた。

「ありがとう。君からもらえるなら、言葉だけでも嬉しいのに。この向日葵、早いね。時期的にはまだ紫陽花でしょ?」

「現世から取り寄せた。紫陽花の花より、お前は向日葵みたいに元気に咲いていると思って」

「気を遣ってもらって悪いね」

「いや、俺も毎年いろいろもらってるからな」

京楽が浮竹に渡す誕生日プレゼントは、どれも高価なものばかりで、浮竹は館の鍵を渡された時など、受け取るのを拒否したほどだ。

上流貴族でも上のほうから数えたほうが早い京楽は、金使いが荒いわけではないが、浮竹のこととなるとぽんっと金を出す。

向日葵を受け取って、京楽は笑みを零した。

「太陽の時期だね。もう夏かぁ」

まだ梅雨はあけていない。

それでも、もう太陽は随分と高くなり、気温も30度を超える日々が続いていた。

「今年も暑くなりそうだね」

「ああ」

浮竹は、向日葵の花を花瓶に活けた京楽の膝に寝ころんだ。

「浮竹?」

「京楽・・・・好きだ」

そっと、京楽の頬に手を添えて、触れるだけのキスをしてきた。

「僕は、期待してもいいのかな?君をもらっていいと・・・・・・」

「仕事が全部終わって、夜になったら、な」

京楽は、ばりばり仕事を始めた。

溜まっていた仕事をあらたか片づける頃には、浮竹は眠っていた。

最近伏せっていて、比較的調子いい今日にやってきてくれたのだが、額に手をあてるとほんのりと熱かった。

「無理、しちゃったんだろうね」

京楽の誕生日だからと、微熱で外出したのがあだとなったのだろう。

ちゅっと、リップ音を立ててキスをする。

「ありがとう、浮竹」

浮竹を抱き上げて、自分の館に瞬歩で戻ると、布団をしいて浮竹を寝かせて、額に冷えたタオルを置いた。

「君が傍にいてくれるだけで、僕は幸せだよ」

浮竹の隣に布団をしいて、京楽は浮竹の白い髪に口づけした。

夜はゆっくりと更けていく。

結局、浮竹を抱けなかったが、そんなことはどうでもいいのだ。

一緒にいられる。傍にいられる。

それだけで、満足なのだ。

何百年と一緒に居続けて。

これからも、一緒にいれることを願おう。


拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/25)
(11/25)
(11/22)
(11/21)
(11/21)
"ココはカウンター設置場所"