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傍に

「恋次?恋次‥‥‥?」

白哉は、情事の後、隣で寝ていたはずの恋次の姿が見えなくて、いつも逢瀬に使う別邸の屋敷を、浴衣姿で探していた。

「恋次、おらぬのか」

庭に出ると、梅の花が咲いていた。

「恋次…私を置いていくな‥‥」

緋真のことを思い出して、白哉は梅の花を見上げた。

「緋真‥‥私は‥‥」

「隊長、どうしたんすかこんな深夜に!まだ寒いのに、そんなかっこじゃ風邪ひいてしまいますよ」

恋次は、白哉から見える庭より奥で、剣をふるっていた。

「よかった‥‥恋次、この館で私を一人にするな」

剣をふって、汗をかいていたにも関わらず、白哉は恋次を抱きしめた。

「あ、俺風呂入る前っすよ。汗かいてて汚いっすよ」

「かまわぬ。今は、ただ傍にいてくれ」

「隊長‥‥‥」

恋次は、心細けな白哉が珍しく、とてもかわいく見えて、キスをする。

「んう」

「隊長‥‥一緒に、風呂入りませんか?」

「よいが、何もせぬぞ」

「はい。ただ風呂に入るだけです。隊長も、情事の後だし風呂入りたいだろうし」

白哉はうっすらと頬を赤くする。

月夜に照らされる白哉は、儚くとても綺麗だった。

「隊長‥‥惚れなおしそうなくらいに、綺麗っす」

「たわごとを‥‥」

白哉は恋次に手をひかれ、幼子のように後をついていく。

風呂場にいくと、湯はいつでも入れるように少し熱いくらいの温度だった。

迷いもなく脱ぐ恋次の前で、白哉も着ていた浴衣を脱ぐ。

「ああ‥‥隊長の体、綺麗っすね」

「そういう貴様は、入れ墨だらけだな。また増やしたのか」

「あ、分かります?」

「何度、貴様の裸を見てきたと思っておるのだ」

「いやー、もちっとほりたくて、最近また入れ墨いれてもらってる途中なんすよ」

「痛く、ないのか?」

白哉は、恋次の入れ墨に手をはわす。

「痛いっすよ。でも、我慢くらいできます」

「私も、入れ墨を‥‥‥‥」

「絶対だめっす!」

恋次に湯船の中で抱きしめられて、湯があふれた。

「入れたいなどとは言おうとしておらぬ。私も入れ墨を入れられたとしたら、痛みに平然とできるだろうかと言いたかったのだ」

「そ、そうっすか。隊長の白い肌には、入れ墨は絶対だめっすよ?」

「自分はそれだけほっておいてよく言うものだ」

「俺のこの入れ墨は、生きている証でもありますから」

「そうか‥‥」

風呂からあがると、少し厚めの浴衣を着て、二人で手をつないで、家人のいない広い屋敷を、布団のある場所まで歩いていく。

「夜明けまであと4時間はあります。もう一度、寝ましょう。今度は、勝手にいなくなったりしないっすから」

「約束だぞ。朝起きて隣にいなかったら、しばらく貴様とは寝ない」

「うへえ。絶対隣にいます」

くすくすと、小さく白哉は笑った。

「冗談だ」

そのあどけない顔に、恋次は白哉を守りたいと思い、白哉を抱きしめるのであった。

「恋次?」

「今だけ、こうさせてください」

「おかしなやつだ」

恋次は、思う。

この儚い白哉は、たまに見せる白哉の強さの裏にある、強くない白哉。

傷つくのを恐れて、自分の殻に閉じこもる前の。

「あんたのことは、俺が守ります」

「500年早い」

白哉はそう言って、背伸びして恋次に触れるだけのキスをするのであった。



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