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桜のあやかしと共に20

「恋次君!?」

京楽は、白哉が連れ帰ってきた青年を見て驚いた。

「道端に転がっていた。車にひかれてもなんだろうと、連れてきてしまった」

白哉が人間を助けるのは珍しいことだった。

「この子が阿散井恋次君か。京楽と同じ祓い屋の」

「誰かから、洗脳を施されているな。浮竹、兄の術でなんとかならないか」

「やってみよう。それにしても、白哉はよく誰かに洗脳されたと分かったな?」

白哉は、恋次をソファーに寝かせた。

「なぜであろう。自分でもよくわからぬ。ただ、何者かに操られている。そんな気配を感じたのだ」

事実、阿散井恋次は夏の朝顔の王、市丸ギンに操られていた。

今回は、桜の王を襲わせるためにわざと倒れたのだが、襲う前に浮竹が桜の花びらをふっと吹きかけて、市丸ギンの洗脳を解いてしまった。

「これで、もう大丈夫なはずだ」

「すまぬ、浮竹」

「恋次君、一つ目小僧の式でネモフィラ畑を荒らしていたの、やっぱり本人の意思じゃあなかったんだね」

「そうだな」

「恋次か‥‥‥‥どこか、懐かしい」

ふと、恋次が目覚めた。

「来い、蛇尾丸!」

狒々の体に尾が蛇の式を、恋次は呼んで臨戦態勢に入る。

3人は、きょとんとしていた。

「蛇尾丸‥‥あれ?どこだここ‥‥俺は、確か朝顔の王の市丸ギンの罠にはまって‥‥」

「ここは、ボクの家だよ」

「京楽さん!京楽さんじゃないっすか!」

先輩にあたる祓い屋でもある京楽を見て、恋次は今いる場所は安全なんだと、自分でもっている最強の式である蛇尾丸を札にもどした。

「君、朝顔の王にやられたのかい?」

「はい。市丸ギンっていう、のっぺり笑う京都弁の男、朝顔の王であってますよね?」

「あっているな」

浮竹が頷く。

「洗脳が解けていなかったら、今頃戦いになっていたであろうな」

「あの、このすごく美人な人誰っすか。そっちは、前聞いた桜の王であってますか?」

「あってるよ。浮竹十四郎といって、桜の王だ。んで君の目玉は汚れているようだけど、君から見て美人に見えるこの華奢な子は朽木白哉。君が昔式にしていた朽木ルキアちゃんのお兄さんさ」

「ルキアの兄!こ、これは失礼しました。ルキアには世話になりました」

「いや、ルキアのほうも式となってよい経験ができたと昔言っていた」

恋次は初対面だが、白哉も初対面のはずなのに、懐かしさを覚えていた。

「そうか‥‥京楽が「春」の生まれ変わりであるように、そなたは「緋真」の生まれ変わりか」

「へ?生まれ変わり?緋真?」

「私が妻にして愛した梅の花のあやかしだ。そうか。恋次というのか」

「うわぁ、顔が、顔が近いです!」

「もう、失いたくない」

白哉は、恋次の顔を両手ではさみこんで、キスをしていた。

「あ‥‥‥‥‥」

ぶわりと、恋次の中に緋真としての記憶が蘇る。

「白哉さん‥‥俺、緋真って女性の生まれ変わり、本当なんすね」

恋次が、懐かし気に白哉を見ていた。

白哉は、それを当たり前のことのように受け入れる。

「俺、今は阿散井恋次っていって、祓い屋です」

「京楽から聞いた」

「白哉さん、一緒に暮らしませんか!」

「却下」

「ええっ」

白哉は、恋次を愛しいと思う気持ちがあるが、兄のような存在である桜の王の浮竹と京楽を二人きりで放置するわけにはいかないと思っていた。

二人きりにすれば、いずれ「春」のようなことが起こってしまうかもしれないからだ。

京楽は浮竹と同じ時を生きる不老の契約をしているが、不死ではない。

今でも思い出す。

「春」を失った時の浮竹の絶叫とショックを。

殻に閉じこもり、自閉症にまでなってしまった。もとに戻るまで、3年の月日を費やした。

白哉は、恋次をもう失いたくないとは思うが、同性であるし、まだ愛しているという感情はわずかに芽生えた程度だった。

「恋次、そなたが元気であればそれで私はよいのだ」

「俺がよくないっす。前世の記憶を取り戻したせいで、あんたが愛しい。ずっとそばにいて、守ってあげたいっす」

「私は強い。守られる必要などない」

「それでも!!」

「あー。俺たちがいること、すっかり忘れられてるな」

浮竹は、京楽のいれてくれた紅茶を飲んでいた。

「まぁまぁ。白哉君にも思い人ができてよかったじゃない」

「白哉の兄的な立場で見ていると、微妙だな。恋次君より、明らかに白哉のほうが強い」

「それは君も同じでしょ?ボクより強いんだもの‥‥‥桜の王は」

「ふふ‥‥‥」

「じゃあ、どうれば白哉さんあんたに会えるんですか」

白哉は、銀色の金属でできたカギをぽいっと、恋次向けてほうりなげた。

「この家の合鍵だ。私はこの家に住んでいる。会いたくなったら、いつでもくるがいい」

「ちょっと白哉君、ここボクの家なんですけど」

「私と浮竹の家でもある‥‥‥そうではないのか?」

白哉の質問に、京楽が言葉をつまらせる。

「うぐぐぐ」

「夜はあまりくるな。恋次、そなたの知っている先輩の京楽と桜の王がいかがわしいことをしている時がおおいいからな」

浮竹は真っ赤になって、ハリセンでなぜか京楽をしばいた。

白哉をしばくことはできないようだった。

「結界をはってあるから、部屋から声や音がもれることはない」

「だが、いかがわしいことをしているのに変わりはないであろう?」

「ムムム‥‥‥」

苦い顔をする浮竹の頭を、しばかれていた京楽が撫でる。

「ボクと今日もいかがわしいことしよう」

「お前は一度死ね」

ハリセンでボコボコにされて、京楽は床に沈む。

「なんか‥‥‥楽しそうですね。わかりました。会いたい時は会いにきます」

「公園の桜に話しかけてもよい。私の仮初の本体だからな」

「了解です」

白哉は、自分の桜の木がどれであるのかを、恋次に教えに一緒に公園のほうに行ってしまった。

ちなみに、恋次といる時は35階のベランダから飛び降りなかった。

「白哉君に愛しい人か‥‥‥」

「兄のような俺からしてみれば、幸せになってほしいな」

「そうだね」



数週間後。

恋次の式としてではなく、パートナーとして一緒に祓い屋をする白哉の姿があった。


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「あ-あ。恋次君、とられてしもた。いい人形やってんけどなぁ」

市丸ギンは、昼顔のあやかしの豊満な胸をもつ女性に、膝枕をしてもらっていた。

「なぁ、乱菊。ボクどないしたらええんやろ。藍染様に怒られそうや」

「自分で考えなさい、ギン」

乱菊と呼ばれた女性は、ギンの頭を撫でながら、優しい声で子守唄を歌いだすのであった。










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