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僕はそうして君におちていく5

3回生の夏。

現世で、海に遊びにいく、いわば修学旅行のようなものがあった。

虚退治も兼ねているが。

特進クラスでも、もう3分の1が内容についていけずに、他のクラスに移籍していた。

退学する者もいた。

現世での虚退治の演習はきつく、仲間の死を見るのも当たり前のようになっていた。

浮竹と京楽は、すでに2回生の頃から斬魄刀をもっている。

特進クラスの半数は、斬魄刀を所持していた。

「尸魂界に海はないからねぇ。思いっきり泳いで、はしゃごうよ」

京楽は、水着はこうでもないああでもないと、迷っているようだった。

「浮竹も、水着買うでしょ?」

浮竹の肌を他人に見られるのは嫌だが、たまには気楽に遊ぶのもいい。

「いや、俺は泳げないからいらない」

「じゃあ、僕と砂浜でも歩いて、砂のお城でも作るかい?」

「そうだな。波打ち際で遊ぶくらいなら、いいかもしれない」

現世では、真夏だった。

尸魂界にも四季はある。

だが、現世のほうがはるかに暑かった。

みんな、思い思いに水着を着て、海ではしゃいで泳ぎ回っていた。潜水して、魚を捕まえたり、珊瑚をとってくる者もいた。

浮竹は、水着には着替えずに、ハーフパンツにTシャツ、パーカーを羽織った格好で、波打ち際で引いては押してくる波を、受け止めていた。

「浮竹、バケツに海水汲んできたよ。お城、作ろうか」

最近の京楽は、浮竹と行動することが多く、それまで多くいた浮竹の友人は、少し離れがちになっていた。

「なぁ、お前もみんなと一緒に遊んできたらどうだ。俺なんかに構わずに」

「何言ってるの。浮竹は目を離すと、真夏のこの太陽の下で倒れちゃうでしょ」

「まぁ、それはいえてるな」

帽子をかぶってくればよかったと、遅まきながら思う。

生ぬるい風が、吹いていた。

それでも、海水に足をひたしていると、少しは涼しさを感じた。

京楽と浮竹は、二人で砂でお城をつくった。

けっこうな力作で、クラスメイトたちが写真をとったりしていた。

「かき氷だって・・・・浮竹も、食べるよね?」

「ああ、喉がちょうど乾いていたところなんだ」

京楽は宇治金時を、浮竹はイチゴのシロップをかけたものを食べた。

京楽は、浮竹に宇治金時を食べさせて、自分も浮竹のイチゴシロップのかき氷を食べた。

いつも、食事をたまに分け合ったりする。

「ねぇ、京楽君って、浮竹君となんでそんなに仲がいいの?昔は、そうでもなかったよね」

特進クラスの女子の一人が、カキ氷を食べながら、そんなことを聞いてきた。

「京楽は、俺が病弱だから、元柳斎先生が、俺の面倒を見るようにって気を遣ってくれたんだ。ほら、俺は発作を起こして倒れたりするだろう。介抱する者がいないと、とてもじゃないが特進クラスではやっていけない」

「そういえば、そうだよね。浮竹君が倒れたら、京楽君が慌てて抱き上げて医務室に向かうし・・・」

「京楽には、いつも世話になっているよ」

「嫌だなあ、浮竹。当たり前のことをしているだけだよ。僕たち、親友でしょ」

「ああ、そうだな」

親友という言葉で、傍に在れるなら、それでよかった。

「そういえば、京楽君最近花街に行ってないよね。告白してきた女の子も振ったりしてるって聞くし・・・・・」

「そうなのか、京楽。俺に気にせずに、誰かと付き合っても全然かまわないんだぞ」

「僕はもういいの。なんていうか、付き合うとかそういうのに疲れたっていうのかな。まぁ、花街も遊女に金をかけるのにも飽きたし」

「京楽君、実は浮竹君のこと好きなんでしょ」

きゃはははと笑いながら、女子は去っていった。

残された浮竹と京楽はぽかんとなって、お互いの顔を見合わせる。

そして、くすくすと笑いあった。

「そんなわけないのにな」

「うん、本当に」



ねえ、浮竹。

僕が、本気で君のことを好きだって知ったら、どうする?


京楽は、笑顔だが心の中では動揺していた。

浮竹もまた、笑顔だが心臓がどきどきしていた。

年頃の女の子は恋愛に聡いところがある。

ばれてはだめだと、お互い、親友だと笑いあって、修学旅行の1日目は終わった。


2日目は、虚退治だった。

「浮竹、そっちにいったぞ」

「破道の4、白雷!」

詠唱破棄の鬼道で、浮竹は素早い、他の院生のクラスメイトたちが苦戦していた虚を、あっという間に倒してしまった。

「浮竹、もう一体そっちにいったぞ!」

「え、あ?」

さっきよりも更にすばしっこい、手傷を負わせて来る虚が、浮竹の背後に近づいていた。

「よっと」

それを、京楽が花天狂骨で斬り裂いた。

「浮竹、一匹を倒したからって、安心しちゃだめだよ。一瞬の隙が命取りになる」

「ああ、京楽すまない。助かった」

浮竹は、素直に礼をいって、双魚理を構えた。


ざーーっと、雨が激しく降ってきた。

虚はまだいる。

みんな、虚に気を取られて、散り散りになっていく。

風もでてきて、雨はばけつをひっくり返したかのような勢いで降り注ぎ、虚退治は一時中止になった。

京楽は、浮竹の霊圧が弱まったのを感じた。

「浮竹、洞窟がある。降りておいで」

「あ、ああ・・・・・」

ぶるりと、身を震わせる浮竹に、京楽は湿っていなかった枝を集めて、火を鬼道でおこした。

「ほら、院生服脱いで、乾かそう。そのままじゃ、風邪ひいちゃうよ」

「え、ああ。そうだな」

浮竹の白い肌を見ないようにしながら、京楽は浮竹と隣合わせになって、体温を共有しあった。

「京楽は、あったかいな・・・・」

「浮竹、熱でてきたね・・・僕が見張っておくから、寝るといいよ。数刻した頃には、雨もあがるだろうし」

「ああ、すまない・・・・少し、休憩する・・・・・」

浮竹も京楽もであるが、何処でも寝れるように訓練されていた。

死神は、死と隣り合わせの世界だ。

虚にやられて殉職する新米の死神は多い。

そんなことになってたまるかと、京楽も浮竹も、あがくのだ。

雨は、まだざーざーと、降っていた。

「浮竹・・・好きだよ」

眠ってしまった浮竹の頬を、ぱちぱちと爆ぜる炎が、影を躍らせる。

肩より長くなった白髪にキスをして、京楽もまた眠った。

虚がくれば、気配で分かる。

今は、休息が必要だ。



はっと起きると、隣に浮竹がいなかった。

「浮竹!?」

慌てて探しにいこうとしたら、乾いた院制服を着た浮竹が、果物を手に京楽の元に帰ってきた。

「食べれそうなもの、探してきた。携帯の食料だけじゃ、味気ないと思って」

「それならそうと、言ってからにしてくれればいいのに」

「いや、京楽はよく寝ていたし、火を起こしてくれたり、いろいろと世話になったから」

「そりゃ、お互いさまだよ」

京楽は安堵の息をついて、浮竹を抱きしめた。

「京楽?」

「心配させないで。僕を一人にするときは、ちゃんと声をかけて」

「分かった。すまない」

浮竹は、柑橘類の果物を京楽に渡した。

皮をむきながら、携帯食料と一緒に食事をとっていく。

腹ごしらえが終わったら、虚退治の続きと、皆に合流する必要があった。

「5月くらいなら、びわが食べ頃なんだけどな。8月じゃあ、手に入らないか」

「瀞霊廷で、いくらでも買って食べさせてあげるよ、そんなもの」

京楽は知らない。

浮竹の髪をすいてキスをした時、浮竹が起きていたことを。

けれど、浮竹はなかったこととして、取り扱った。京楽が自分のことを好きなはずがない。京楽は柔らかな女の子が好きなのだ。こんな病もちを、好きなはずはない。

そう決めつけて、自分で傷つくのだった。


皆と合流して、浮竹と京楽は虚退治をした。

虚のほとんどを京楽と浮竹が倒してしまって、京楽と浮竹だけ、強い虚が出る区域を任された。

死神の席官が見守っていた。

「破道の4、白雷!」

虚はそれだけでは、死ななかった。

「浮竹、僕がいくよ」

「ああ、その後ろのは俺がやる。君臨者よ 血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ 焦熱と争乱 海隔て逆巻き 南へと歩を進めよ 破道の三十一 赤火砲(しゃっかほう)!」

完全なる詠唱の果ての鬼道の威力は凄まじかった。

空間が爆発する。

残っていた全ての虚を巻き込んで、大爆発を起こした。

逃げようとする虚を、京楽が花天狂骨でトドメをさしていく。

「凄いな・・・とても院生とは思えない。まだ三回生なんだろう?」

「え、あ、はい」

「浮竹の鬼道、凄いでしょ。死神でもここまで鬼道を極めてるの、きっと席官クラスくらいだと思うんだけど」

「そうだな。下手すると、副隊長クラスだ」

席官の死神に褒められて、浮竹は恥ずかしそうにしていた。

「君の鬼道は、どんな腕なんだい」

死神に聞かれて、京楽の代わりに浮竹が答えていた。

「京楽の鬼道も凄いです。でも、あんまり使わない。花天狂骨で退治するのがいつものパターンで」

「僕は、浮竹ほど鬼道の才には恵まれていないからね。確かに普通の生徒よりはできるけど、それでも浮竹には敵わない。比べられるのが嫌だから、あんまり使わないけど」

「初めて鬼道を使った時、破道の4の白雷で、自分を焦がしていたな」

「ああ、そんなこともあったねぇ」

虚退治は終わったみたいで、安堵を覚えてクスクスと笑った。



その日の夜は、海辺でバーベキューをした。

肉の代わりに魚だったので、生徒の中には文句を言う者もいたが、この時代に肉は貴重である。

干し肉にしたりするので、遠征の者の食事になることを優先されて、まず尸魂界の流魂街の庶民では口にできるものではない。

上流階級の貴族でやっと、肉を食うことができるが。

食用の牛を飼うのは、上流貴族くらいだ。

上流貴族以外が肉を口にするとすれば、猟師やらがしとめた、猪や野うさぎの肉といったものだろうか。

「海老がうまいな。ほたてもうまい」

浮竹は、海鮮バーベキューが気に入ったのか、美味しいといいながら黙々と食べていた。

浮竹は、よく食べる。

細いのに、よくそんなに入るなってくらい食べる。

そのくせ、熱を出したりしたら食欲をなくし、ほんの少しのおかゆすら残す有様であった。

「僕の分も、食べていいよ」

「本当か?」

海老やホタテは数が限られていたので、浮竹は嬉しそうだった。

ああ。

君の笑顔で、僕は幸せになれる。

浮竹は、京楽の分の海老とほたてを食べてしまった。

「代わりにこれをやる」

渡されたのは、玉ねぎとトウモロコシを焼いたものだった。

「ありがとう」

それを食べながら、今度肉を食べさせてあげようと、京楽は思うのであった。


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