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僕はそうして君に落ちていく外伝3

私は霊王。

俺は霊王。

私は楔。世界の贄。ただ在るだけの存在。

私は、私を殺したユーハバッハから私を奪い、唯一の残されていた右腕に全てを預けた。

結果、私は俺になった。

ミミハギ様と呼ばれるそれは霊王となり、それを宿す浮竹十四郎は霊王となった。

霊王は清浄なる存在。

霊王宮に住まい、清浄な空気の中で生きた。

私は・・・・俺は、霊王。

同時に、浮竹十四郎である。

霊王になって、120年が経った。


下界には、10年に一度祭事の時だけ降りることができた。霊王を崇める祭りの中を抜け出して、京楽と逢瀬を楽しむのが好きだった。

はじめ、霊王になった時もう京楽に会えないと言われて、脅すつもりで首の頸動脈を切った。

慌てた周囲は、月に一度京楽春水を霊王宮に招きいれることを承諾した。

霊王である浮竹は、下界を見たりしているが基本暇で、書物を読んだり1日の大半を寝たりして過ごしていた。

そんな浮竹が、今日はご機嫌で早起きをしていつもの十二単をまとい、そわそわしていた。

「霊王様・・・・京楽春水が、参りました」

「ご苦労。通せ」

霊王の身の回りの世話をする者たちを、霊王宮から遠ざける。

「京楽、会いたかった」

「僕もだよ、浮竹。1カ月ぶりだね。今日は、君が霊王になってから120年目の日だよ。霊王になった頃のこと、覚えてる?」

「んー、あんまり覚えない。気づいたら、迎えの者がきて霊王宮にいた。あなたは霊王だと言われて、ここで住んでもう二度と下界と接触してはいけない、京楽春水と会ってはいけないと言われて、刀で自分の首の頸動脈を脅しで切ったことは覚えている」

「ふふ、君はいつも危ない橋を渡るね」

「だって、京楽と会っちゃいけないっていうんだぞ。俺たち恋人同士なのに」

「総隊長の恋人が霊王だなんて、尸魂界の者が知ったら、卒倒しそうだね」

そもそも、霊王に意思などいらないのだが、今の霊王は意思をもつ。

浮竹に宿っていたミミハギ様は霊王の欠片。

欠片は浮竹を侵食したが、支配はできずに浮竹という名の自我を残した。

「京楽、近くへ」

「うん」

京楽は、十二単を着て動きにくそうな浮竹の傍に寄り添って、十二単を脱がすと、室内用の着物を渡した。

「今は、暦では下界は秋だよ。金木犀がよく咲いていて、いい香りがする。これ、お土産の金木犀の香水」

「ありがとう、京楽」

前の贄だった霊王とは違い、浮竹は生きて生活をしている。

身の回りの世話をする者が必要だった。

大半のことは自分でしたが、十二単は正装で、一人で着るのは難しくて侍女に手伝ってもらった。

「霊王宮の外の一部を、秋にしたんだ。金木犀も咲いてるぞ」

「また、霊王の力使ったの?体は大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

肺の病は癒えたが、病弱さが完全に消えたわけではなく、時折熱を出す。

霊王の力を使えば、熱を出して寝込むに決まっているのに、浮竹は京楽と秋を感じたいのだと霊王宮の庭を一部秋にしてしまった。

「もみじもある。紅葉が綺麗な季節だ。モナカ食うか?」

「うん、いただくよ」

今の霊王、浮竹十四郎は甘いものが好きで、特におはぎを好んだ。

「おはぎ、持ってきてるよ」

「食う!」

目をきらきらさせて、浮竹は京楽からおはぎをもらうと味わって食べた。

霊王宮でもおはぎを出されるが、味が下界のものとは違う。

京楽がもってくるおはぎは、下界の浮竹が好んで食べていた店のおはぎで、味は別格だった。

お菓子を食べ終えて、二人で手を繋いで霊王宮の外に出て、秋の庭を散歩する。

ちちちちちと、小鳥が浮竹の肩に止まった。

「かわいいね」

「そうだろう。ここの小鳥はよくなついてくれる」

「僕がかわいいって言ってるのは、浮竹のことだよ」

「う、そうか」

浮竹は頬を赤く染めながら、京楽と霊王宮の寝室に行く。

「俺を、抱け」

「言われなくても、そのつもりで来たから」

室内用の着物を脱がして、シミ一つない真っ白な肌を愛撫していく。

「あっ」

胸の先端を舌で転がされると、びくんと浮竹が反応する。

「やあ、そこは」

京楽は、浮竹の下着を取り去って、浮竹自身に舌をはわせた。

甘い蜜が零れ落ちる。

霊王の体は霊子が濃くできており、甘い味がした。

精液さえも、濃い砂糖水のように甘い。

「君は、本当に甘いね。死神だった頃が懐かしいよ。甘い浮竹は、嫌いじゃないよ」

「や、霊王に、好きでなったわけじゃない」

「知ってる」

浮竹のものに舌をはわせて、吐精した白い甘い液体を飲みこむ。

ごくりと音を立てて飲みこむ京楽に、浮竹は唇を舐めて、京楽に口づけた。

「んっ・・・・んんっ・・・・甘い」

「自分の体液、味わってどうするの」

「ふふ・・・・・・」

「抱くよ」

「早く、こい。俺の胎の奥で、子種をたくさん注いでくれ」

潤滑油に濡れた指が体内に入ってくる。

3本は飲みこむようになった頃には、蕾はとろとろにとけて、京楽のものを待ち望んでいた。

「んああああああ!!!ひあ!」

いきなり挿入されて、浮竹の体がベッドの上ではねる。

「そんなに、締め付けないで」

「やあああ、あ、あ、ああああ」

一度深くまで挿入してから、ずるずると抜いて、また突き上げる。

「あ、頭、白くなる・・・・・」

真っ白な長い髪をベッドで舞わせて、浮竹は放たれた京楽の子種を体の奥で受け止めた。

「あ、あ、あ、春水、もっと」

「愛してるよ、十四郎。1カ月に一度しか会えないのが寂しいね」

「もっと欲しい。1カ月が限度だって、零番隊の連中に泣かれたからな」

今の零番隊は昔とは違う。

本当なら、霊王である浮竹を、下界の存在である京楽に会わせたくもないのだが、霊王である浮竹自身が会いたいと望み、抱きたがられるので、京楽は会う前は必ず禊をして身を清めてからというのが決まりだった。

京楽は下界の者。

下界の者と交われば、穢れがうまれる。

だが、清浄な浮竹は、穢れをうむことはなく、逆に抱いた京楽が清浄なる者となった。

「あ、あああ、あ」

ズッ、ズッと、音をたてて出入りする京楽のものは大きく、浮竹の体の負担になるのだが、京楽は浮竹に出会えるだけでもよかったのだが、とうの浮竹が京楽に抱かれたがった。

「ふふ・・・熱が、はじけてる。俺の胎の奥で、お前の子種がどくどくいってる」

ぐちゅぐちゅと、結合部は泡立ち、浮竹の白い太ももを、京楽の精液が伝い落ちる。

「ひああああ、あ、あ!」

「たくさんあげるから、全部受け止めてね?」

「いやああああ」

ごりっと、最奥の結腸まで入ってきた熱に、浮竹は潮をふいていた。

「やああ、もれる、もれちゅう」

「ただの潮だよ。ふふ、そんなの僕のこれ、おいしい?」

「あ、おいしい。もっと、もっとくれ」

舌が絡みあう口づけを交わし合いながら、二人は乱れた。

「んああああ」

「ああ、君の精液は甘いね」

最後の精液を放った浮竹のものを口にして、京楽はそれを舐めとった。

「やああ、甘いのは、霊王であるせいで・・・・」

「死神だった頃の君の味も、嫌いではなかったよ」

「ああああ」

浮竹を起き上がらせて、騎乗位になった。

ずぷずぷと、自分の体重で浮竹は京楽を飲みこんでいく。

「あ、深い・・・・・」

「好きでしょ、こうして下から突かれるのも」

「あ、あ、ああん、や、だめぇええ」

「君のここは、浅ましいまでに貪欲だよ」

「春水、いじわる、するな」

浮竹は、涙を零した。

「ごめんごめん、じゃあ終わりにしようか」

「んあっ」

下から突き上げられて、そのまま腹の奥に子種を最後の一滴まで京楽は注ぎこんだ。

「ああ・・・・孕めれば、いいのに」

「そうだとしたら、子供いっぱいできてるよ」

「ん・・・・・」

京楽の楔が抜き取られると、大量の精液が逆流して太ももを伝い、ベッドのシーツに精液の水たまりを作った。

「ああ、このシーツももうだめだな。捨てないと」

「ごめんね。1カ月に一回しか逢瀬できないから、いつも加減がきかない」

「別にいい。俺も望んだことだ」

二人で風呂に入って身を清め、中に出されたものをかき出されて、前のシーツは捨てて、新しいシーツをしき、お日様の匂いのするベッドで二人は互いを抱き合いながら眠った。

「ん・・・・朝か。明日までいられるんだろう、京楽」

「うん。今日は何をしようか?」

「エッチなことはもうなしだぞ」

「さすがに、僕もあれだけやってまたやるほどの若さはないかも」

浮竹は霊王となった時点で、体が時を刻むのを止めている。

霊王であり続ける限り、若いままだろう。

一方の京楽は、120年という時を経たので、少しだけ年をとった。外見はほとんど変わらないが。

「いつか、お前が死んだら、俺も霊王をやめて死ぬ」

「不吉なこと言わないで」

「俺はお前さえいれば、今は尸魂界もどうなってもいい」

「だめだよ、尸魂界を支える霊王がそんなんじゃ」

「ふふ、零番隊の連中に泣かれるな」

「君って、時折意地悪だからね」

「今日はカルタをしよう。あと、外で蹴鞠をしよう」

「いいよ。なんにだって、付き合ってあげる」



私は贄、私は世界、私は霊王。

私は浮竹十四郎という者になり、残滓となった。

ミミハギ様となった私は、浮竹十四郎に逆に支配された。

もう、私は霊王とは呼べない、浮竹十四郎の魂の欠片。

でも、私も京楽春水を愛している。

それは、私であった頃の浮竹十四郎の思いなのだろうか。

私は静かに眠る。

浮竹十四郎の中で。


俺は贄、俺は世界、俺は霊王。

俺は浮竹十四郎。

霊王となっても、想いは変わらず、京楽のことを愛している。

月に一度の逢瀬。

10年に一度の、祭事として下界に降りるのが、俺の楽しみ。

俺が生きている証。


私は、俺は、霊王。

そこに在ればいいだけの存在は自我を持ち、歩き動き考える。


「愛してる、春水」

「僕も愛してるよ、浮竹」


霊王として、浮竹十四郎として。


俺は、今日も霊王宮で、愛しい相手と言葉を交わすのだ。

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