忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 27 28 29 30 12

無題

「行くのかい」

「ああ」

「そうかい。いつか、地獄で会おう」

「そうだな、春水」

「そうだね、十四郎」



遥か昔。

まだ学生だった頃、親友となった。

変わる季節の中で、お互いを大切にした。

浮竹の肺の病は、ミミハギ様のお陰で時を止めただけにすぎず、完治はしなかった。

時には稽古で2対の木刀で、浮竹が血を吐いたのもかまわずにきりかかったりした。

結果は引き分け。

互いの関係は、親友であり戦友でありライバルでもあった。

ミミハギ様を宿したまま、浮竹は肺の病と闘いながら京楽と同じ隊長にまで上り詰めた。

海燕亡き後、副隊長をを望む46室に、副隊長はいらぬと啖呵を切った。

京楽にミミハギ様のことを教えて、信じてもらえた。



絆は、深い。

魂のレベルでいつしか結ばれ合っていた。




「君が逝く時、きっと僕は藍染の力を借りる」

「俺が逝く時、どんな方法を使っても、尸魂界をもちこたえらせろ」



思いは、一つ。


この尸魂界を守りたい。

世界を、生きる者を守りたい。




「浮竹隊長!!浮竹隊長がいなくなれば、13番隊はどうすればいいんですか!」

「すまないな、朽木。まぁ、なんとかしてくれ」

浮竹は、神掛をした。

五臓六腑が黒くなり、はるか高みにある霊王宮までミミハギ様の、霊王の右腕はやってくる。

葬られた霊王の代わりに、この世界を少しでも永らえさせるために。


「京楽・・・・・後は、頼んだ・・・・・・」

「浮竹・・・・後は、任せなよ」

思いは交差する。


尸魂界のために死なば本望。

浮竹十四郎は、そんな男だった。

そして、一番仲のいい親友は、それを嘆きつつも受け入れる、総隊長だった。


そこには、確かに愛に似たものがあった。

何百年と同じ時を過ごし、互いに惹かれあっていた。

浮竹は死を。

京楽は生を。


それぞれ、選びとる。


「十四郎、今までお疲れさま。もう、泣いていいんだよ」

ミミハギ様を失い、体から抜け出た霊魂は、京楽の元に向かった。

「春水。もう時間がない。俺は地獄に落ちる。今まで、ありがとう。たくさんの愛を、ありがとう」

親友として、戦友として。

愛をもらった。

たくさんのありがとうを、お前に。


「地獄には、いつか老いぼれになってから、来いよ」

「うん」

京楽は、一滴の涙を零した。

「泣くな。これは、俺が決めたことだ」

「そうだね。君は、いつも僕の先をいってしまう。ずるいよ」

「ふふ。またな、春水」

「うん、またね、十四郎。今までお疲れさま」


浮竹の魂魄は、尸魂界の霊子に還っていく。

京楽は、藍染を外に出そうとしていた。


「また、いつか。十四郎、会いに、いくよ」

愛しい者の命が尽きても、総隊長である責務から逃れることはできない。

ユーハバッハを倒すためなら、どんな汚い手段でも使う。


京楽は、藍染を連れて外にでる。


「ああ、君のお陰で世界はまだ在るんだね」

もうすぐ、その命は尽きるけれど。





「いつか、俺が死んで先に地獄にいったら、お前をいつか迎えにいく」

「うん。迎えにきて」


いつの日だったかの、戯れの誓いは、いつか遠い未来で叶うだろう。


たくさんのありがとうを、君に。

たくさんの愛を、君に。


今まで、ありがとう。

拍手[0回]

PR
URL
FONT COLOR
COMMENT
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
PASS

TRACK BACK

トラックバックURLはこちら
新着記事
(11/26)
(11/25)
(11/25)
(11/22)
(11/21)
"ココはカウンター設置場所"