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勇者は死んだ

新勇者は、いっこうに魔王の浮竹を倒せないので、国王からの支援が途絶えた。

今は、勇者教のメンバーからなんとか生活資金をもらって、暮らしているらしい。

新勇者のパーティーは、新勇者もいれてダンジョン探索をしたり、冒険者ギルドで依頼を受けてその報酬金でやりくりしているが、新勇者がアデランスとかで無駄使いするでので、新勇者には金は渡されていなかった。

「ああああ、今日のギガントサイクロプス退治、大金貨400枚の収入だったのに、俺には金貨1枚すらもらえないってどういうことだ!」

新勇者は、仲間をなじった。

「お前が、アデランスとかでパーティーメンバーの資金を無駄遣いするからだ」

少年魔法使いが、冷たく言い放つ。

「そうよ。あんたにあげる金なんて銅貨1枚もないわ」

女僧侶の言葉に、新勇者は泣いた。

「ひどいいいいいい」

新勇者は、泣いて、勇者京楽に縋りついた。

「なんとかしてくれ、勇者京楽!」

ここは、魔王城であった。

魔王城のテラスで、魔王こと浮竹と勇者として魔王を討伐することをやめた京楽は、冷ややかな眼差しで新勇者を見ていた。

「僕の知ったことじゃないよ」

「ひどい!俺とのことは、遊びだったのね!」

「気持ち悪いこと言わないでくれる。僕の恋人は浮竹だけだよ」

「おい、新勇者。お前、また魔王城の備蓄ちょろまかしただろ」

「あははは、何のことかなぁ」

新勇者は誤魔化そうとしているが、そんな犯人は新勇者しかいないので、浮竹は魔法を放つ。

「カラミティファイア!」

「ぎゃああああああああ」

業火にもやされて、新勇者は黒こげになるが、すぐに復活する。

「ふはははは、燃やされ続けたせいで俺は火属性の魔法のダメージを大幅に軽減するスキルを覚えた。みたか、魔王浮竹!今の俺は強い」

「カラミティサンダー」

「ぎにゃああああああああ!違う属性だなんてずるいぞおおお」

雷で黒こげになって、新勇者は動かなくなった。

新勇者のパーティーメンバーは、気にせず魔王城のテラスで午後のお茶をしていた。

浮竹は、侍女に京楽の分も紅茶のおかわりを頼む。

5分経っても、10分経っても、新勇者は復活しなかった。

さすがに様子がおかしいと訝しんだ浮竹が、新勇者の元にいってみる。

「息、してない」

「ええ!ちょっと、それはまずいんじゃないの」

京楽が、新勇者を殴った。

反応は返ってこない。

「仕方ないねぇ。リザレクション」

死者を蘇らすことのできる、大いなる奇跡の魔法を京楽は使う。

「わん」

「へ?」

「わんわんわん」

「ああ、死んだのに時間がちょっと経ったものだから、そこらへんにいた犬の浮遊霊が勇者の体に入ったようだね」

「お手」

「わん」

「おまわり」

「わんわん!!」

女僧侶は、犬になりさがった新勇者を楽しんでいた。

「仕方ないねぇ」

京楽は、新勇者の中の犬の浮遊霊を追い出して、元の新勇者の魂を肉体に導く。

その頃には、新勇者は犬の首輪をされて、女僧侶が鎖で魔王城の柱に鎖でつないでいた。

「はっ、俺は!?三途の渡ったから、死んだのかと思った・・・・・ってなんだこれは!俺は犬じゃないぞ!」

「君、本当に死んでたんだよ。困るよ、死んでもらっちゃ。からかえないじゃない」

「ええ、何その心配の仕方!」

「浮竹が人殺しになるなんて、ごめんだからね。浮竹、放った魔法、加減するの忘れたね。本気だったでしょ」

「ああ。つい本気を出してしまった」

「だめでしょ、こいつは雑魚の中の雑魚なんだから」

「酷い!あんまりだあああああ」

新勇者は、なんとか鎖を解いて、首輪を引きちぎると、人工聖剣エクスカリバーで女僧侶に襲いかかった。

「ちょ、なんで私なのよ!」

「犬扱いしただろう!いつも俺を不幸な目にあわせやがって。裏でパパ活してホストに貢いでること、知ってるんだぞ!」

「ちょ、あたしの秘密をこんな場所で言わないでよ!」

ぴろりろりーん。

貧乏神のスキルがLVマックスになりました。ユニークスキル不幸なる者を覚えました。

「うわああああああん!不幸なんていらない!魔王浮竹にあげる!!!」

新勇者は、自分のスキルを浮竹に放り投げて、浮竹が不幸なる者を獲得してしまった。

「大丈夫、浮竹!?」

ぴろりろりーん。

ユニークスキル、不幸なる者が進化して、幸福なる者に進化しました。

「新スキル返せえええええ」

浮竹は、新勇者に幸福なる者を返した。

すると、新勇者のスキルはまた不幸なる者に戻った。

「なんでえええええ」

「お前が不幸だからだろう」

「うわああああん」

「カラミティプチサンダー」

浮竹は、加減しまくった雷の魔法を新勇者にあてた。

「ぎゃおおおおお!あああ、おしっこもれる!」

何故かしらんが、不幸なる者のスキルが発動して、失禁していた。

「えんがちょ。こっちくるな」

「こっちにこないでね」

「あ、うんこももらした」

ぶりぶりぶり~~~。

異臭を放つ新勇者から、みんな遠ざかる。

「ぐへへへへ。今まで散々いじめてくれたお礼だ!まずは魔王浮竹、お前に俺のピーをぶつけてやる!」

「カラミティアイシクルチェーン」

「ぬおおおお、身動きがとれない」

「リフレッシュ」

浮竹は、汚いまま魔王城を汚されるのがいやなので、新勇者のおもらしをなんとかしてやった。

「はははは、俺は最強だ!」

「うん、まぁ、ある意味最強だね。人前で脱糞した勇者なんて見たことないよ。勇者教の人に教えてあげよっと」

京楽の言葉に、新勇者の顔色が変わる。

「ど、どうか、勇者教の信者にはご内密に!」

「じゃあ、裸になってフラダンスしたら、内密にしてあげる」

新勇者は、恥じらいもないのでフルチンになるとフラダンスを踊り出した。

「あ、やっぱりパンツはいて。浮竹にそんな汚いもの見せられない」

パンツを頭にかぶった。

「ちょ、はいてっていったんだよ。かぶってっていってないよ」

「ぐへへへへ、魔王浮竹、俺の華麗な裸フラダンスでダメージを負え!」

「ぐあっ」

汚い踊りを見せられて、浮竹は100のダメージを受けた。

「お、効いてる!もっと踊るぞおおおお」

「アイシクルクラッシャー」

京楽が、新勇者の裸フラダンスを氷漬けにしたあげく、吹き飛ばして止めた。

「浮竹、セイントヒール、セイントヒール、セイントヒール」

「京楽、そんなにヒールかけなくても自動HP回復でダメージは回復している」

「よかったぁ」

「チートだあああ!!!」

新勇者は、氷を砕いて、今度はちゃんとパンツをはいて、人工聖剣エクスカリバーを京楽に向ける。

「よくもやってくれたな!勝負だ!」

「新勇者が負けるに金貨100枚」

「同じく負けるに金貨50枚」

「おいこらそこ、賭けすんな!」

新勇者は怒った。

憤怒の状態になり、全てのステータスがあがった。

京楽は、溜息をついて本物の聖剣エクスカリバーを抜くと、人工聖剣エクスカリバーを叩き折った。

「ぎゃああああああ!!!俺の聖剣が!俺の武器が!」

「ちょっとは頭冷やしておいで」

京楽は、新勇者を持ち上げると、窓からぶん投げた。

キランと、新勇者はお星さまになった。

「新勇者のパーティーも、退場してくれ」

「ああん、お菓子まだ食べたかったのに」

「あたしはもうおなかいっぱい食べたから満足にゃん」

文句を言う女僧侶と反対に、獣人盗賊は食べまくったらしい。

「外にいって、新勇者回収してきてね」

「仕方ないわねぇ」

「あー、気乗りしねぇ」

少年魔法使いは、新勇者が飛んでいった方角を図る。

「回収にいくぞ。一応、あんなんだがリーダーだし、リーダーがいないと冒険者ギルドでクエスト受けれないからな」

「いっそ、リーダーかえちゃばいいのにゃん」

「まぁ、回収してから議論しよう」

新勇者パーティーが去っていき、浮竹と京楽だけが残った。

「ねぇ、また来ると思う?」

「絶対くる」

「そうだね。今は、僕たちだけの時間を楽しもう」

「あっ」

「ふふっ、浮竹かわいい」

「京楽・・・・・」


新勇者は、結局3日後に留置所から保護された。

パンツ一丁で町を徘徊し、パンを万引きして、定食屋で無銭飲食したらしい。

その次の日には、新勇者も新勇者のパーティーも、何もなかったかのように魔王城にきて、昼食を食べていくのであった。

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