僕は君の瞳の色の名を知らない10
学院を卒表して、死神となった。
お互い忙しくて、休日も仕事があったりしてなかなか会えないでいた。
ある日、京楽が非番になり、浮竹が早番で終わって、時間ができたので二人で飲みにいった。
次の日は、二人とも休みだということもあり、飲んで騒いだ。
「いきなり3席とか、山じいほんとに何考えてんの!」
「先生を悪くいうのはよせ。でも、3席は正直つらいな」
お互い、とにかく忙しいのだ。
虚退治の遠征にいったり、書類仕事に振り回されたり。
現世でいうとブラック企業に勤めているような感覚だった。
「まぁ、研修期間も兼ねてるし、仕方ないか」
「研修期間なんてなくても、俺たちは学院時代から死神の一般隊士に交じって、仕事に参加してたけどな」
「今日は飲むぞ。たとえ二日酔いになろうとも飲むぞー」
日本酒をすでに何本も開けている京楽が、追加の酒を頼む。
浮竹は、二日酔いになるを覚悟のうえで、甘い果実酒ではなく、強めのお酒を飲んでいく。
「俺も飲むぞー」
そうして、浮竹は飲みつぶれた。京楽はうわばみなので酔うこともなかった。
すーすーと、静かな寝息をたてている浮竹を抱き上げて、席官に与えられる館の、浮竹の家に送り届ける。
お互い、一人暮らしだ。
二人で同じ家に住んでもいいと思ったが、しばらく仕事に慣れるまでは一人暮らしを続けようと、お互いに決め合った。
仕事に慣れてきたら、瀞霊廷にある京楽の持つ館に、浮竹が移る予定だった。
「ああもう・・・・・こんな日に限って君は酒に酔いつぶれちゃうし」
たまりにたまったものは、一人で処理した。
浮竹の寝顔を見ていると、安堵を覚える。
まだどこか少年くささの抜けない、あどけない顔をしていた。
寝込みを襲う趣味はないので、浮竹の額にキスを落として、同じ布団で横になって眠った。
「んーーーー、頭痛い・・・・」
「おはよう」
「京楽?ここは、俺の家か・・・酔いつぶれたのを送ってくれたのか。わざわざすまんな」
「二日酔いの薬、そこに出してるから飲んでおきなよ」
「ああ、ありがとう」
薬を飲むと、嘘のように頭痛が消えた。
「なんかすごい効き目だな。これ、まさか高い・・・?」
「たかが10万環だよ」
「10万・・・・・」
10万円だ。日本円に換算すると。
「朝食、作っておいたから、食べれる時に食べてね」
京楽は、上流貴族で、料理などしないイメージがあるが、寮暮らしの時などたまに自炊をしていた。浮竹も料理はできる。
なにせ、8人兄弟の長男として生まれたせいで、病気で臥せっていない元気な時は、妹や弟の食事の世話をよくしたものだ。
京楽が用意したものは、梅干しと塩昆布のおにぎりだった。それと、味噌汁。
「お、美味いなこれ」
「そう言ってもらえると作ったかいがあったよ」
味噌汁はちゃんと出汁までとっていて、とても美味しかった。
久しぶりにだらだらと、朝を過ごせた。
浮竹も京楽も、さすがにこのままでは体がもたないと、1週間ほどの休暇を申しこんで、それが受理されたばかりだった。
「今日から一週間は、僕の館においで。必要なものは書けば、使用人がもってくるから」
「お前・・・全然そうは見えないけど、一応やっぱ上流貴族なんだなぁ」
「全然そうは見えないは余計だと思うけどね」
ちゅっと、リップ音をたてて、京楽は浮竹の額に口づける。
「君の瞳の色・・・・ずっと、知らないと思っていたんだ。緑色だって分かっていたけど、それ以外の色にも見えて。緑より深い翠だったんだね。君の瞳は翡翠そのものだ。僕は、やっと君の瞳の色の名を知った」
「なんだ、ポエムか?」
そう浮竹がからかうと、珍しく京楽が赤くなった。
「君の瞳の色は翡翠ってだけだよ」
「ああ、昔からよくそう言われいるぞ」
「そうなの」
「ああ」
問答は、いったん終わりとなった。
着替えなどの荷物をもった浮竹を抱き上げて、瞬歩で京楽は自分の館まできた。
「ここが、今日から1週間過ごす君の部屋だよ」
18畳はあろうかという、広い部屋だった。
「こんなに広いと、寂しくなる」
「僕も、この部屋で一緒に過ごすから」
「そうか。ならいいんだ」
浮竹は、京楽に甘えるように抱き着いてきた。
「浮竹?」
「しよう。たまってるんだ。お前と体を重ねたい」
「一人で、処理しなかったの?」
「しようとしたさ。だけど、胎が疼いて、物足りなくて・・・・」
京楽は、その言葉で我慢の糸が切れた。
「んっ」
唇を唇でふさがれる。ぬるっと舌が入ってきて、浮竹の縮こまった舌を絡めとり、甘噛みして口内を京楽の舌が動いていく。
「ふあ・・・・っ、ん、ん・・・・・」
京楽は、布団をひっぱりだしてくると、浮竹の死覇装を脱がしていく。
京楽もまた、自分の死覇装を脱いだ。
「お前、せっぱつまってるのか?」
「どれだけ我慢してきたと思ってるの。1カ月は、抱いてないんだよ、君を。学生の頃は、最低でも1週間に一度は睦みあっていた。いきなり1カ月の禁欲はきつかったよ」
「あっ、ううん、うあっ」
下着の上から刺激を与えられて、浮竹のものは完全にたちあがり、先走りの蜜を零していた。
直に触ると、その熱さに眩暈を覚える。
「あ・・・・・」
胸の先端を手でいじられながら、花茎をもう片方の手でじゅぷじゅぷと扱われた。
「あああ!」
先端に爪をたてると、浮竹はあっけなくいってしまった。
その量の多さに、京楽が笑う。
「特濃ってかんじだね」
「う、うるさい!」
浮竹は顔を赤くした。
「も、早く・・・」
浮竹は、自分から足を開く。
京楽は指に潤滑油をまとわせながら、ゆっくりと浮竹の中を刺激して、体を拓かせていく。
やがて蕾がとろとろになると、京楽は熱を浮竹の中に埋め込んだ。
「ひああああ、あ、あ!」
「久しぶりだから・・・・きついね・・・・動いても、大丈夫?」
こくりと、言葉もなく浮竹は頷いた。
翡翠の瞳に、涙の膜がはっていた。
「ん・・・・んあ、あ、あ」
出し入れを繰り返すと、浮竹は啼いた。
「あ!」
前立腺のある場所を抉られて、浮竹が背を反らせる。
「あ、春水、春水!」
胎が疼く。
どしようもなく。
「俺の奥で・・・・・胎で、出せ」
女のように妖艶に。少年のように純粋に。
ただ、求めた。
「一緒にいこうね?」
「んあ・・・・・ふあ、あ、あ」
口づけを交わし合いながら、お互い高みへと昇っていく。
「あああ!」
「十四郎・・・・!」
熱が弾けたのは、ほぼ同時。
浮竹が、酸素を求めて喘ぐ。
「や、いってるから、いってるから、動くな・・ああああ!」
中と外でいっているのに、京楽のものはまた腹の奥へと突き上げてくる。
「んあああ!」
快感で真っ白になった思考が、さらにぐずぐずに溶けていく。
翡翠の瞳から、苦しさではない暖かな涙が零れ落ちた。
「あと、ちょっとだけ。胎に出すから、受け止めてね」
「んんう、あ、やっ」
京楽の動きが早くなる。
浮竹は酸素を求めて、また喘ぐ。
「んーーーー、やああ」
最奥までズルリと、京楽のものが入ってきた。
そのまま、熱を出されて、浮竹は女のように中でいっていた。
「あ、おかしくなる・・・・ああ・・・や・・・・」
「胎に出せっていったのは、君だよ、十四郎」
京楽が何を言っているのか、もはやあやふやとした意識では分からない。
「ん・・・・・・」
口づけを交わしあって、くたりと浮竹は意識を失った。
「ごめんね、十四郎」
額にキスを落として、後始末をしてから、京楽は浮竹に新しい着物を着せて新しくしいた布団で寝かせた。
浮竹が意識を取り戻したのは、1時間ほど経ってからだろうか。
「浮竹、大丈夫?久しぶりすぎて、ちょっとがっつちゃったみたい。体、痛くない?」
「腰が痛い・・・・・・」
ブスっと不貞腐れた顔で、浮竹は布団を頭までかぶった。
「回道がよく使える使用人いるから、呼んでこようか?」
「いい。このまま寝る。おやすみ」
「寝るって、まだ昼の2時だよ」
「寝るったら寝る」
浮竹は、怒っているのだろうか。
「じゃあ、僕も寝ようかな」
浮竹が布団をかぶったその中に、入りこんでくる京楽。
「お前はあっちで寝ろ!こんな広い部屋で、わざわざ同じ布団で寝る必要なんてないだろう!」
「浮竹成分補充しないとね」
「なんだそれは」
「浮竹に触れられなかった間、かつかつだったから」
ちゃりっと、チェーンがこすれる音がする。
浮竹も京楽も、ペアリングをチェーンにかけたネックレスをしたままだった。
「翡翠、ずっと君を守ってくれたんだね」
「それはお前もだろう」
浮竹の瞳の色は翡翠。
もう、君の瞳の色の名を知らない僕はいない。
翡翠。
美しい、深い翠。
翡翠の瞳を瞬かせる浮竹の瞳を、京楽は舐めた。
「ひゃっ」
「おいしそうだったから」
「変態か、お前は!目なんて舐めるな!」
「いや、おいしそうで、綺麗で・・・・翡翠だね、君の瞳は。僕は、ずっと君の瞳の色の名を知らないと思っていたんだ。でも翡翠だった。こんなにも身近にあったのにね」
京楽は、浮竹の長い白髪をなでる。
「君の綺麗な白い髪にぴったりの色だ」
「褒められているのか、俺は」
「そう、綺麗でかわいいって、褒めてるの」
二人は、顔を寄せ合って、クスクスと笑いあいながら、ごろごろと布団の上を転がった。
僕は、もう君の瞳の色の名を知らないといわない。
綺麗な翡翠だと、確信したから。
その二人の関係が、何百年も続くとは、その時の二人はまだ知る由もなかった。
僕は君の瞳の色の名を知らない
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お互い忙しくて、休日も仕事があったりしてなかなか会えないでいた。
ある日、京楽が非番になり、浮竹が早番で終わって、時間ができたので二人で飲みにいった。
次の日は、二人とも休みだということもあり、飲んで騒いだ。
「いきなり3席とか、山じいほんとに何考えてんの!」
「先生を悪くいうのはよせ。でも、3席は正直つらいな」
お互い、とにかく忙しいのだ。
虚退治の遠征にいったり、書類仕事に振り回されたり。
現世でいうとブラック企業に勤めているような感覚だった。
「まぁ、研修期間も兼ねてるし、仕方ないか」
「研修期間なんてなくても、俺たちは学院時代から死神の一般隊士に交じって、仕事に参加してたけどな」
「今日は飲むぞ。たとえ二日酔いになろうとも飲むぞー」
日本酒をすでに何本も開けている京楽が、追加の酒を頼む。
浮竹は、二日酔いになるを覚悟のうえで、甘い果実酒ではなく、強めのお酒を飲んでいく。
「俺も飲むぞー」
そうして、浮竹は飲みつぶれた。京楽はうわばみなので酔うこともなかった。
すーすーと、静かな寝息をたてている浮竹を抱き上げて、席官に与えられる館の、浮竹の家に送り届ける。
お互い、一人暮らしだ。
二人で同じ家に住んでもいいと思ったが、しばらく仕事に慣れるまでは一人暮らしを続けようと、お互いに決め合った。
仕事に慣れてきたら、瀞霊廷にある京楽の持つ館に、浮竹が移る予定だった。
「ああもう・・・・・こんな日に限って君は酒に酔いつぶれちゃうし」
たまりにたまったものは、一人で処理した。
浮竹の寝顔を見ていると、安堵を覚える。
まだどこか少年くささの抜けない、あどけない顔をしていた。
寝込みを襲う趣味はないので、浮竹の額にキスを落として、同じ布団で横になって眠った。
「んーーーー、頭痛い・・・・」
「おはよう」
「京楽?ここは、俺の家か・・・酔いつぶれたのを送ってくれたのか。わざわざすまんな」
「二日酔いの薬、そこに出してるから飲んでおきなよ」
「ああ、ありがとう」
薬を飲むと、嘘のように頭痛が消えた。
「なんかすごい効き目だな。これ、まさか高い・・・?」
「たかが10万環だよ」
「10万・・・・・」
10万円だ。日本円に換算すると。
「朝食、作っておいたから、食べれる時に食べてね」
京楽は、上流貴族で、料理などしないイメージがあるが、寮暮らしの時などたまに自炊をしていた。浮竹も料理はできる。
なにせ、8人兄弟の長男として生まれたせいで、病気で臥せっていない元気な時は、妹や弟の食事の世話をよくしたものだ。
京楽が用意したものは、梅干しと塩昆布のおにぎりだった。それと、味噌汁。
「お、美味いなこれ」
「そう言ってもらえると作ったかいがあったよ」
味噌汁はちゃんと出汁までとっていて、とても美味しかった。
久しぶりにだらだらと、朝を過ごせた。
浮竹も京楽も、さすがにこのままでは体がもたないと、1週間ほどの休暇を申しこんで、それが受理されたばかりだった。
「今日から一週間は、僕の館においで。必要なものは書けば、使用人がもってくるから」
「お前・・・全然そうは見えないけど、一応やっぱ上流貴族なんだなぁ」
「全然そうは見えないは余計だと思うけどね」
ちゅっと、リップ音をたてて、京楽は浮竹の額に口づける。
「君の瞳の色・・・・ずっと、知らないと思っていたんだ。緑色だって分かっていたけど、それ以外の色にも見えて。緑より深い翠だったんだね。君の瞳は翡翠そのものだ。僕は、やっと君の瞳の色の名を知った」
「なんだ、ポエムか?」
そう浮竹がからかうと、珍しく京楽が赤くなった。
「君の瞳の色は翡翠ってだけだよ」
「ああ、昔からよくそう言われいるぞ」
「そうなの」
「ああ」
問答は、いったん終わりとなった。
着替えなどの荷物をもった浮竹を抱き上げて、瞬歩で京楽は自分の館まできた。
「ここが、今日から1週間過ごす君の部屋だよ」
18畳はあろうかという、広い部屋だった。
「こんなに広いと、寂しくなる」
「僕も、この部屋で一緒に過ごすから」
「そうか。ならいいんだ」
浮竹は、京楽に甘えるように抱き着いてきた。
「浮竹?」
「しよう。たまってるんだ。お前と体を重ねたい」
「一人で、処理しなかったの?」
「しようとしたさ。だけど、胎が疼いて、物足りなくて・・・・」
京楽は、その言葉で我慢の糸が切れた。
「んっ」
唇を唇でふさがれる。ぬるっと舌が入ってきて、浮竹の縮こまった舌を絡めとり、甘噛みして口内を京楽の舌が動いていく。
「ふあ・・・・っ、ん、ん・・・・・」
京楽は、布団をひっぱりだしてくると、浮竹の死覇装を脱がしていく。
京楽もまた、自分の死覇装を脱いだ。
「お前、せっぱつまってるのか?」
「どれだけ我慢してきたと思ってるの。1カ月は、抱いてないんだよ、君を。学生の頃は、最低でも1週間に一度は睦みあっていた。いきなり1カ月の禁欲はきつかったよ」
「あっ、ううん、うあっ」
下着の上から刺激を与えられて、浮竹のものは完全にたちあがり、先走りの蜜を零していた。
直に触ると、その熱さに眩暈を覚える。
「あ・・・・・」
胸の先端を手でいじられながら、花茎をもう片方の手でじゅぷじゅぷと扱われた。
「あああ!」
先端に爪をたてると、浮竹はあっけなくいってしまった。
その量の多さに、京楽が笑う。
「特濃ってかんじだね」
「う、うるさい!」
浮竹は顔を赤くした。
「も、早く・・・」
浮竹は、自分から足を開く。
京楽は指に潤滑油をまとわせながら、ゆっくりと浮竹の中を刺激して、体を拓かせていく。
やがて蕾がとろとろになると、京楽は熱を浮竹の中に埋め込んだ。
「ひああああ、あ、あ!」
「久しぶりだから・・・・きついね・・・・動いても、大丈夫?」
こくりと、言葉もなく浮竹は頷いた。
翡翠の瞳に、涙の膜がはっていた。
「ん・・・・んあ、あ、あ」
出し入れを繰り返すと、浮竹は啼いた。
「あ!」
前立腺のある場所を抉られて、浮竹が背を反らせる。
「あ、春水、春水!」
胎が疼く。
どしようもなく。
「俺の奥で・・・・・胎で、出せ」
女のように妖艶に。少年のように純粋に。
ただ、求めた。
「一緒にいこうね?」
「んあ・・・・・ふあ、あ、あ」
口づけを交わし合いながら、お互い高みへと昇っていく。
「あああ!」
「十四郎・・・・!」
熱が弾けたのは、ほぼ同時。
浮竹が、酸素を求めて喘ぐ。
「や、いってるから、いってるから、動くな・・ああああ!」
中と外でいっているのに、京楽のものはまた腹の奥へと突き上げてくる。
「んあああ!」
快感で真っ白になった思考が、さらにぐずぐずに溶けていく。
翡翠の瞳から、苦しさではない暖かな涙が零れ落ちた。
「あと、ちょっとだけ。胎に出すから、受け止めてね」
「んんう、あ、やっ」
京楽の動きが早くなる。
浮竹は酸素を求めて、また喘ぐ。
「んーーーー、やああ」
最奥までズルリと、京楽のものが入ってきた。
そのまま、熱を出されて、浮竹は女のように中でいっていた。
「あ、おかしくなる・・・・ああ・・・や・・・・」
「胎に出せっていったのは、君だよ、十四郎」
京楽が何を言っているのか、もはやあやふやとした意識では分からない。
「ん・・・・・・」
口づけを交わしあって、くたりと浮竹は意識を失った。
「ごめんね、十四郎」
額にキスを落として、後始末をしてから、京楽は浮竹に新しい着物を着せて新しくしいた布団で寝かせた。
浮竹が意識を取り戻したのは、1時間ほど経ってからだろうか。
「浮竹、大丈夫?久しぶりすぎて、ちょっとがっつちゃったみたい。体、痛くない?」
「腰が痛い・・・・・・」
ブスっと不貞腐れた顔で、浮竹は布団を頭までかぶった。
「回道がよく使える使用人いるから、呼んでこようか?」
「いい。このまま寝る。おやすみ」
「寝るって、まだ昼の2時だよ」
「寝るったら寝る」
浮竹は、怒っているのだろうか。
「じゃあ、僕も寝ようかな」
浮竹が布団をかぶったその中に、入りこんでくる京楽。
「お前はあっちで寝ろ!こんな広い部屋で、わざわざ同じ布団で寝る必要なんてないだろう!」
「浮竹成分補充しないとね」
「なんだそれは」
「浮竹に触れられなかった間、かつかつだったから」
ちゃりっと、チェーンがこすれる音がする。
浮竹も京楽も、ペアリングをチェーンにかけたネックレスをしたままだった。
「翡翠、ずっと君を守ってくれたんだね」
「それはお前もだろう」
浮竹の瞳の色は翡翠。
もう、君の瞳の色の名を知らない僕はいない。
翡翠。
美しい、深い翠。
翡翠の瞳を瞬かせる浮竹の瞳を、京楽は舐めた。
「ひゃっ」
「おいしそうだったから」
「変態か、お前は!目なんて舐めるな!」
「いや、おいしそうで、綺麗で・・・・翡翠だね、君の瞳は。僕は、ずっと君の瞳の色の名を知らないと思っていたんだ。でも翡翠だった。こんなにも身近にあったのにね」
京楽は、浮竹の長い白髪をなでる。
「君の綺麗な白い髪にぴったりの色だ」
「褒められているのか、俺は」
「そう、綺麗でかわいいって、褒めてるの」
二人は、顔を寄せ合って、クスクスと笑いあいながら、ごろごろと布団の上を転がった。
僕は、もう君の瞳の色の名を知らないといわない。
綺麗な翡翠だと、確信したから。
その二人の関係が、何百年も続くとは、その時の二人はまだ知る由もなかった。
僕は君の瞳の色の名を知らない
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