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僕は君の瞳の色の名を知らない4

3回生になっていた。

京楽は、浮竹を誘い飲みにきていた。

普通の飲み屋とは違う、花街の京楽常連のお店にきていた。

「こちらは、京楽様の想い人でありんすか?」

「うん。浮竹っていうんだ」

「ばか、京楽!」

「まぁまぁ。どうせただ飲んで食べるだけだし。飲み屋で飲むより、ここのほうが静かだし、飲みつぶれても泊まることもできるし」

「そんなに飲むつもりはない」

豪華な食事になれないのか、浮竹はちびちびと酒を飲みながら、食事をしていた。

「京楽、この店は高いんだろう?」

「浮竹は気にすることはないよ。僕が誘ったんだし、いつものように僕が支払うから。それより、ちょっと向こうで着替えてきて」

「え?」

浮竹は、遊女に連れられて、奥の間へと消えていった。

肩より長くなった白い髪を梳られて、横髪だけを三つ編みにして結い上げられて、翡翠のかんざしで飾られる。

いつもの院生の服ではない、上等な着物を着せられた。

「京楽、なんだこれは」

戻ってき浮竹は、少し怒っていた。

「君への誕生日プレゼント。少し早いけど・・・こうでもしないと、君はこんなもの受け取ってくれそうにないからね」

「だからって、こんな高級品・・・・・」

「いらないっていうなら、捨てるから」

「もったいない!」

「じゃあ、素直にもらっておいて」

「うー。京楽め・・・・」

浮竹はどさりと座って、女性とも男性ともつかない格好で、また酒を飲みだした。

今度は、ちびちびとではなく、豪快に飲んでいく。

「そんな勢いで飲むと、酔いつぶれるよ」

「どうせ泊まるんだろう。どうでもいい」

「君ってけっこう男らしいよね」

「言ってろ」

そのまま、結局浮竹は酔いつぶれてしまった。

浮竹を抱き上げて、布団に寝かすと、京楽も眠りについた。

触れるだけのキスをして。


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「ん・・・頭痛い・・ここは?」

「ああ、起きたかい。二日酔いかな。今水もってくるから」

豪華な布団と部屋で寝かされていたことに気づき、浮竹が京楽を見る。

「ああ・・・・結局、泊まったのか」

水を渡されて、浮竹はそれをこくこくと飲んでいった。

「今日は休日だし、ゆっくりしよう」

「とりあえず、寮の部屋に戻りたい」

「まぁ、こんな場所じゃ落ち着かないだろうし。瞬歩使うから」

浮竹を抱き上げて、京楽は瞬歩で寮の自室に戻った。

「ふう・・・・」

浮竹は痛み止めを飲んで、頭痛をやり過ごしながら、院生の服に着替えた。ただ、髪は結われてかんざしが飾られたままにしておいた。

「京楽は、いつもあんな店にいくのか」

「いや、最近はあまりいってないよ。行っても飲むだけかな。遊女はもう抱いてない」

「その・・・・俺のせいか?」

「え?」

「俺のせいで、女が抱けなくなったとか・・・そういうことか?」

「まぁ、そうだね。君の身代わりに抱いてたから。でも、それも飽きた。本物が目の前にいるのに、妄想で女を抱いてもむなしいだけだしね」

「俺は・・・・その、お前のことが好きだけど、そういう風にはまだ・・・・」

「うん。ゆっくりでいいんだ。僕はいつまで待つから。君が好きだよ。愛してる」

「俺も好きだ、京楽」

唇が重なる。

京楽は首筋にキスマークを残しただけで、それ以上は何もしてこなかった。

浮竹と両想いになれたのだ。

急ぐ必要などない。

京楽は、学院に入ってよかったと思うようになっていた。

浮竹との出会いは、その後山じいから世話をしてやってくれと頼まれていたので、同じ寮の部屋になることが続いていた。

浮竹は翡翠のかんざしをとって、大事そうにたんすにしまうと、そのまま寝てしまった。

結局、夜更けまで飲んでいたので、京楽も眠気がやってきて、浮竹の眠るベッドで浮竹を胸に抱きながら、一緒に眠った。


「おい、起きろ」

「んー」

「んーじゃない。もう5時だぞ!」

「え?夕方の5時?」

「ああ、そうだ。食堂にいくぞ」

風呂に入ったのか、石鹸とシャンプーの甘い匂いをさせた浮竹に起こされて、京楽は飛び起きた。

仮眠をするつもりが、しっかり寝てしまっていたようだ。

それは浮竹も同じことで、痛み止めには鎮痛剤の成分の他にも眠りやすくなるものが含まれているせいで、5時前まで寝過ごしてしまったらしい。

寮に帰ってきたときは、昼前だったというのに。

二人で歩きながら、食堂へ向かう。

「もう、花街になんて行かないからな」

「分かったよ。僕が悪かった。でも、あの着物姿と翡翠のかんざしをした君を見れて、僕は嬉しかったけどね」

「・・・・・」

浮竹は真っ赤になっていた。

「ねぇ、手をつないでもいいかい?」

「今だけだぞ」

まだ夕食をとるには早い時間なので、人通りはなく、手をつないだ。

その暖かさに、ほわりと心が温かくなる。

「僕は君の瞳の色の名を、まだ知らないんだ・・・・・・」

君の瞳の色。

それがなんであるのかを、僕はまだ知らない。

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