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勇者と魔王

勇者京楽は、ある日、聖剣エクスカリバーを売り払った。

白金貨3千枚になった。

だが、売り払ったエクスカリバーは京楽の元に戻ってきた。

「えー。いらないのに」

お金だけもらって戻ってくる性質を利用して、詐欺しほうだいであったが、さすがに良心がいたんで金は返した。

魔王城から一番近い街ニニレムにきていた。

勇者なので、他人の家に勝手に入り、たるやたんすの中身を漁る。

(勇者京楽春水は、銀貨200枚とエロ本を手に入れた)

ピロリロリンと音がした。

その家の住人は、泣いていた。

へそくりと隠しておいたエロ本をとられて。でも勇者なので、文句は言えない。この世界の勇者はどんな場所でも無条件に入れて、ごそごそと他人のたんすを漁る。

ニニレムの街で、京楽の名は広まっていく。

勇者に、有り金をとられたとか。

魔王浮竹の元に、嘆願書が届けられた。

「勇者京楽の、家漁りを止めてほしい」

そういう内容のものだった。

「おい、京楽」

「なんだい、浮竹」

「お前、勇者なのをいいことに、ニニレムの街で民家のたんすとか漁ってるらしいな。苦情がきているから、即刻やめろ」

「えー。勇者の特権なのに」

「民が困っているんだ。やめないと、おはようのキスをしてやらないぞ」

「すぐやめるよ。今日からやめる。だから、ご褒美にキスしてよ」

ニンマリと笑みを刻む京楽に、浮竹は顔を赤くしながらもキスをした。

「んん・・・・・ふあっ」

啄むような優しいキスから、ディープキスへと変わっていく。

ぬるりと京楽の舌が入ってきた。

「ん・・・・」

舌を絡めあい、何度も深く口づけしていると、くたりと浮竹が京楽に体を預けた。

「京楽、ベッドにいこう」

京楽は喜んで、恋人である魔王を寝所のベッドに押し倒した。


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「ふふふふ。この時を待っていた」

新たなる勇者は、魔王と勇者がちちくりあっているのをいいことに、城に攻め込んできた。

「ははははは、崩れろ崩れろ」

新勇者パーティーは、魔王城で暴れて、せっかく修繕された城をめちゃくちゃにする。

「お前ら・・・・・・」

魔王浮竹は、けだるげな雰囲気をまとったまま、新勇者パーティーを奥の部屋まで追い詰めると、天井からぶら下がっている紐をひっぱった。

ガコンと、新勇者パーティーのいる床がぬける。

「のああああああああ」

「ぎゃああああああああ」

「ぬおおおおおおおお」

新勇者パーティーは落とし穴に落っこちた。落とし穴の底には、飼っている馬の馬糞があった。

「いやああああああ、うんこがあああああ」

「ぬおおおおおお、うんこまみれだあああ。エンガチョーーー」

「ふふふふ。こんなこともあろうかと、二ニレムにいるドワーフの大工に頼んで落とし穴を作っておいたんだ」

浮竹が魔王らしく笑う。

この世界には、人間以外ににもエルフ、ドワーフ、獣人、魔族、妖精族などが存在する。ドワーフは建築や刀鍛冶に優れている。

京楽と一緒に倒したモンスターの素材を売ったお金で、落とし穴をつくってもらった。ただの落とし穴ではつまらないからと、京楽が底に馬糞をいれることを提案して、そのほうが面白いと浮竹もそれを了承した。

「ファイアボルト!」

新勇者が浮竹に魔法の火の弾丸をうつが、浮竹はそれを手でつかんだ。

「なに!?」

「ほら、返すぞ」

ひょいっと炎を返されて、落とし穴の中にいた連中は「ぎょええええ」とか言っていた。

浮竹は、もう一度天井からぶら下がった紐をひっぱった。

「また遊びに来いよー」

ガコンと音がして、水が流れる。

そのまま、水と一緒に新勇者パーティーは魔王城の外にぺっと叩き出された。

「おのれ、魔王浮竹め!この悪行の数々、許せん」

新勇者は依然京楽にファイアボールを当てられて、毛根が死んでいるためにハゲだった。かつらをしていたのだが、かつらがなくなっていた。

「ああ、俺のかつらが!」

仲間にもハゲをクスリと笑われて、魔王浮竹への復讐心に燃えた。


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「我こそは、冒険者Sランクの英雄!いざ魔王浮竹よ、滅び去れ!」

浮竹は、パイプ椅子じゃなくって豪華になった玉座に座っていた。

やってきた冒険者パーティーを前に、あくびをしていた。

「いい度胸だ、魔王め!平和のため、死んでもらうぞ」

槍を手に突進してくる冒険者に、京楽が聖剣エクスカリバーを抜いた。

「いい度胸してるのは君でしょ。何、僕の浮竹を退治しようとしてるのさ」

ドワーフによってミスリル銀で作られた業物の槍は、すぱすぱとエクスカリバーに切られてしまった。

「あああ、ローンまだ残ってるのに!」

京楽は、勇者である。一応。

冒険者でもあるのだが。

自分を英雄と豪語した冒険者の服を切って、フルチンにしてやった。

「おのれ!なんとハレンチな!」

「おまけ。ファイアーボール」

京楽が炎の玉を生み出すと、それは冒険者の頭を包み込み、毛根を死滅させた。

「ぎゃああああああ!俺の髪があああああ!!」

「浮竹に武器を向けた報いだよ」

冒険者パーティーは、それでもみんなで力をあわせて魔王の前に打倒勇者京楽と、技や魔法を連携して出してくる。

だが、しょせんLV70前後の冒険者。

LV395の京楽に敵うはずもなく、女性だったメンバー以外はフルチンになり、毛根を死滅されて泣きながら魔王城を飛び出していった。

「また遊びに来いよー」

浮竹は、おはぎを食べていた。

京楽がいない時は、浮竹が相手をするが、その時は相手の毛根は死滅させずにアフロにするのが定番だった。

「ふー。最近、遊びに来る冒険者が多いなぁ」

「うーん。僕が魔王側に寝返ったって、ちょっと王国でも荒れてるらしいから」

「そういえば、エクスカリバー売りに出したんじゃなかったのか」

「うん。白金貨3千枚になったけど、何故か僕もとに戻ってくるから、仕方なく金を返したよ」

「お前のことだから、金だけ手に入れてるのかと思った」

「やだなぁ。確かに考えなくもなかったけど、金額が金額だし、余計にお尋ね者になっちゃうじゃない」

すでに京楽は、魔王側についたとして王国からその首に報奨金がかけられている。

国王とその後和解するのだが、それはまた未来の話。

ふと、浮竹は城で飼っている兵士のタロー&ジローの様子を見に行った。

「いない!タローとジローがいない!兵士が脱走した!」

生きてる兵士として一番の兵(つわもの)のタロー&ジローは、いなくなったのだ。

犬小屋に矢文が刺さっていて、読むと新勇者パーティーが誘拐したらしい。

「兵士を無事返してほしければ、魔王浮竹よ、サザンリアの丘の上にこい」

浮竹は、怒ってサザンリアの丘へ京楽を連れてやってきた。

「わんわんわん!」

「うわ、噛みつくな!ええい、うるさい!」

「わんわん、がるるるるるる!」

タロー&ジローは一応兵士だ。対人訓練を受けているので、新勇者パーティーを威嚇して、噛みつきまくった。

「ちょっと新勇者!どうにかならないの!」

「知るか!って魔王きたー!ほんとにきたー!!!どうしよう、まだ作戦会議たててない!」

新勇者はてんぱった。

「うちんちのかわいいタロー&ジローを誘拐するとはいい度胸だな」

浮竹は、微笑んだ。

すごく、悪っぽく。

「あ、いいかもこの表情・・・・・・・」

京楽は、珍しく悪者にみたいに笑う浮竹に、胸がときめいた。

「ファイアストーム!」

サザンリアの丘は、魔法を吸収する花が咲き乱れる丘だ。この場所で魔法を詠唱しても何もおきない、はずだった。

しかし、浮竹の膨大な魔力は、荒れ狂い炎の嵐となった。

「わきゃああああああああああ」

「わんわんわん!」

京楽がタロー&ジローを新勇者パーティーから離して、浮竹の魔法の範囲が及ばないように結界を張った。

新勇者パーティーは、全員黒焦げのアフロになり、女性の僧侶以外全員フルチンになった。

新勇者はカツラなので、ツルピカ状態だった。

「遊んでくれるのはいいが、兵士を拉致したり、ちょっと度がこえているぞ。ちゃんと魔王城に普通に遊びに気なさい」

新勇者パーティーが打倒魔王としてやってくるのを、浮竹は遊びにきているのだと勘違いしている。

アホの子ほどかわいいので、京楽は何も言わない。

「じゃあ帰るぞ。タロー&ジロー、帰るぞー」

「ワンワン!」

「ワフ!」

京楽の手で守られたタロー&ジローにじゃれつかれて、浮竹はぺろぺろと顔を舐められたりして、苦笑していた。

「今日は災難だったな、タロー&ジロー。夕飯は肉にしてやるからな!」

「ワン!」

「ウォン!」

タロー&ジローにリードをつけて、サザンリアの丘から途中まで京楽のテレポートの魔法で、二ニレムの街にくると、散歩がてらに歩いて帰った。

タロー&ジローは道端でうんこをしてしまい、ビニール袋をもっていなかった京楽と浮竹は、火で燃やした後、浄化の魔法をかけた。

「タロー&ジローはかわいいなぁ」

そんな風に笑う浮竹が一番かわいいと思う京楽であった。


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「なぁ、京楽」

「どうしたんだい、浮竹」

夕飯の時間だった。

コックはいないので、浮竹の手料理だ。

豚肉と野菜をいためたものと、じゃがいもをふかしてバターをのせたもの、ワイン、パン、川魚を焼いたものと、けっこう質素だった。

ワインやパンは、二ニレムの街で購入した。川魚は京楽がスキルに任せてとりまくったものを使っている。

「魔王って、そんなに悪いのか?最近討伐というか遊びにくる奴らが多いんだが」

「あーうん。まぁ、僕が浮竹の魔王側に寝返ったせいだね。世界を支配するとか恐れられてるんじゃないかなー」

「そんなつもりないのになぁ。そもそも魔王はくじで当たってなった職だから。今度、ダーマの神殿にいくか!」

ダーマの神殿とは、ジョブチェンジを行える神殿のことである。

そして、次の日になって浮竹は京楽を伴い、テレポートの魔法でダーマの神殿に本当にきてしまった。

ざわざわと、いろんな種類の人種がざわめく。ドワーフやエルフ、獣人の数もそこそこいた。

「魔王浮竹、希望する新しい職は賢者」

「勇者京楽、希望する新しい職は遊び人」

ダーマ神殿の神官が、紙を見ながら震えていた。

「汝、浮竹を賢者に・・・・・・汝、京楽を遊び人に・・・・・・」

ブブーーーーー。

でっかい音がなった。

「す、すみません!勇者と魔王は、ジョブチェンジできないようです!どうか命ばかりはご容赦を!」

転職できないと聞いて、浮竹はがっかりしたが、神官に兵士でもあるダイコーンこと大根を握らせた。

「やっぱ、転職できないよな。こんなチートな存在が、そうやすやすと転職できたら、苦労しないか」

「浮竹、何故ダイコーンを」

「いや、寄付はもうしたし、それ以外で金を渡すと賄賂になるから・・・・ダイコーンで」

「ダイコーン、便利だね。兵士だけど一応。食べられるけど」

浮竹は、他の神官にもダイコーンを渡していった。

「ダーマ神殿のみんな、迷惑をかけた。ダイコーンは魔王城の庭で俺が栽培したものだ。毒は入ってないし、それなりに美味いと思うので、よかったら食べてくれ」

浮竹は、魔法ポケットをもっていた。高価な品で、魔王だからこそもっている品だった。

京楽の聖剣エクスカリバーほどではないが、大変貴重なものだ。

京楽の武器は双魚理という、2本の刀だった。

魔法ポケットは、いろんなものを収納できる。そこからダイコーンを出して、ついでだからと、その場にいる冒険者たちにもダイコーンを握らせた。

この一件は後に「魔王、大根にて人間を寝返らせようとした」として、密やかなる噂になるのであった。




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