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勇者と魔王

第16代目の魔王、浮竹は平和が好きだった。

くじで魔王があたったが、元々体が弱く、冒険者になりたいので冒険アカデミーに入ろうとしたら、体の弱さのせいで断られた。

勇者京楽とは、冒険者アカデミーより前の、普通の学校で一緒に過ごした幼馴染であり、浮竹は京楽に恋心を抱いていた。

魔王の加護により、体が健康になった浮竹は、ある日魔王討伐にきた勇者京楽と出会う。

京楽は、浮竹が魔王であることに驚いて、すぐに勇者としての責務を放棄して、二人は恋人同士になった。

京楽を勇者に選んだ国王は怒って、京楽の首に多大な報奨金をかけた。

「我こそは、大陸一と謳われる賢者なり!」

今度は、冒険者Aランクの賢者パーティーがやってきた。

賢者とは、魔法使いと僧侶の両方の呪文を持つ者がなると思われがちだが、魔道を極めし者が賢者と名乗ることを許される。上位職だ。

「ほれっ!」

賢者は、手に白い薔薇をだして、それを青色に変えた。

「おお凄いな」

浮竹が、ぱちぱちと拍手を送る。京楽も拍手を送った。

「この青い奇跡の薔薇は、相手の魔力をすいとる。さぁ、ブルーローズストーム、受けてみよ!」

青い薔薇の花びらが、魔王の謁見の間に広がり、浮竹と京楽を包み込む。

確かに、魔力を吸い上げられた。

青い薔薇の花びらは、吸い上げすぎてしおしおに枯れてしまった。

「ふふふふ、これで貴様らの魔力は0のはず!とうっ!」

賢者は、杖で浮竹に殴り掛かった。

賢者のクセにムキムキで、魔法に耐性のある魔王と勇者を倒すには、物理攻撃が一番効く。

ガキン。

浮竹の頭を殴った杖は、ぽきんと折れた。

「のああああああああ!?世界樹の杖が!?なんという石頭!どうしてくれるんだ、魔王!白金貨500枚もするんだぞ!損害賠償を請求する!」

浮竹は、京楽としゃべっていた。

「今日の昼ごはんなぁに?」

「んー、カレーにしようと思ってる」

賢者パーティーの存在など、なかったようにスルーしていた。

「くそ、くらえブルーローズストーム!生きるための魔力も枯渇してしまえ!」

賢者は、また魔力吸引の魔法を使った。

「うるさいなぁ。ブルーローズストーム?さっきから、俺たちの魔力は2しか下がってないんだが」

HP999999、MP999997。

賢者の水晶に映し出された、浮竹と京楽のHPとMPは、確かにMPが減っていた。

2だけ。

もっている魔力の桁が違う。

賢者パーティーのメンバーは、それを見て逃げ出した。

賢者だけが、一人ぽつんと残された。

「ああああ、待てー!待たんかー!!このくそ〇◇✖チョメチョメ」

逃げていった仲間を罵倒しはじめる賢者。

「そこの手品師」

「へ?俺のことか?」

浮竹は、賢者を手品師と間違えていた。

「おなかすいただろう。カレー、食べていかないか」

ぐうううと、賢者の腹が鳴った。

「く、魔王め、毒を入れて俺を抹殺するつもりだな!ブルーローズストームが効かなかった今、俺にできることは、毒を食わせて暗殺することだ!」

「声に出しちゃってるよー」

京楽が、折れた世界樹の杖でパコンと賢者の頭を殴った。

「ぬぐおおおおお!」

賢者は痛がったが、京楽は力をこめていない。

「ぬおおお、ブルーローズストームを2回も使ったせいで腹が・・・ひもじい」

「カレー、食べてくか?」

浮竹が、にこやかに話しかけた。

魔王浮竹自らが、カレーを作ってくれた。ルーだけは近くの街の二ニレムで買って、あとの野菜は畑から収穫し、肉は干し肉を使った。

カレーを3人分だされて、賢者はふんぞりかえった。

「魔王のくせに貧乏だな!」

「食べないならあげないよ」

「ああん、食べますうううう」

賢者はスプーンを手にとって、カレーを食べだした。

「うまいいいい、おかわり!はっ!毒は!?」

「そんなのいれる訳ないでしょ」

京楽が、浮竹の手作りのカレーを美味しそうに食べながら、賢者の足を蹴った。

「痛い!骨折した!」

「大げさだねぇ」

賢者は、こそこそと毒を浮竹のカレーの中にいれた。

それを、浮竹は食べる。毒を入れられてるシーンは、浮竹も京楽も見ていた。

「俺に毒は一切無効だぞ。毒無効のスキルをもっているからな」

「なにいいい!卑怯だぞ、魔王!」

「毒殺しようとするほうが卑怯だと思うんだが。この毒うまいな」

毒をおいしがる魔王。ありえない。

「なんだお前は!本当に魔王なのか!畑で野菜を収穫して、カレーを作って、敵であるはずの俺に食べさせるなんて!はっ、もしかして俺の体が目当てなのか!」

その言葉に、浮竹も京楽もぶっとカレーを噴き出した。

気を取り直して、二人して茶を飲む。

「いつも二人だけだからな。たまには客人をもてなそうと思って」

浮竹は純粋だった。

その純真さに、賢者も涙を流した。

「毒殺しようとした俺を叱りもせず・・・・・ううう、こんな美味しいご飯たべるの久しぶりだ。世界樹の杖を買ったせいで、家も手放し嫁と息子にまで逃げられ・・・」

「かしてみろ」

浮竹は、折れた世界樹の杖を手に取ると、魔力をこめてひっつけた。

「魔力付与50%を追加しておいた。白金貨2千枚くらいで売れるだろう。それを売って新し普通の世界樹の杖を買って、逃げた嫁さんと息子さんと仲直りしてこい」

「神か!」

賢者は、魔王浮竹を崇め出した。

「この恩は忘れない!」

そういって、賢者は去っていった。


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「さて、買い出しに出かけるか」

浮竹は、二ニレムの街に買い出しに京楽と出かけていた。

野菜は自家栽培のもので間に合っている。デザートに果実をいくつか買い、ワインとパンを買った。

後は、適当に香辛料や塩を買う。

「ちょっと、たまには贅沢してみるか」

「どうしたの?」

「トリュフ、買った」

「ええええ!高いのに!」

京楽は、愕然とする。

この世界のトリュフは、とにかく高い。ドラゴンの魔石と同じ値段がする。

ただ味は抜群で、世界一美味しいとされていた。

「トリュフかー。でも、一生に一度は食べてみたいよね」

「そうだろ。今日はローストビーフとトリュフをいれたパスタを作ろう」

「僕も手を貸すよ」

魔王城に帰ると、新勇者のパーティーが来ていた。

「やあ、また遊びにきたのか」

「違う、魔王浮竹、お前を退治しにきたんだ!あと勇者京楽、お前もだ!」

「そうかそうか。元気がいいな」

浮竹は、新勇者パーティーを謁見の場に招き入れた。

「ふ、この前は落とし穴にひっかかったが、今回はそうはいかないぞ!」

新勇者は、新しいかつらをかぶっていた。

縦巻きロールの、いかにもヅラですってかんじのものを。京楽に毛根を死滅されて以来、かつらをかぶっていた。

「それ」

浮竹が玉座の後ろにある紐をひっぱった。

ボトボトボト。

音がして、犬の、正確にはタロー&ジローのうんこがおちてきた。

「いやああああああ!」

「ぬおおおおお!頭から!くさいいいい!!!」

新勇者パーティーは、怒って浮竹に切りかかろうとするが、ガコンと床が抜ける。

今度は、京楽が紐を引っ張っていた。

「ぬああああああ、またかああああああ」

「ぎょええええええええ」

新勇者パーティーが、水と一緒に流されていく。ただ一人、新勇者は人造聖剣エクスカリバーをっ壁につきたてて、穴から這い上がってきた。

「こんなことで、めげる俺じゃないぞ!」

「頭に犬のウンコついてるよ」

京楽がそう指摘すると、新勇者は奇声を発した。

「きええええ!」

縦巻きロールのカツラを投げ捨てる。

「いざ、勝負!」

人造でも聖剣は聖剣だ。人造聖剣エクスカリバーで、新勇者は浮竹を真っ二に切ろうとした。

「双魚理」

今までそこになかった空間に、2対の刀が出現して、エクスカリバーの刃を受け止めた。

「僕の浮竹に・・・・・」

京楽が怒っていた。

「ファイアボール!」

新勇者の股間を、念入りに燃やした。

「のぎゃああああああ!俺の息子がああああああ!!!」

ぼとり。

新勇者の息子さんは、黒こげになって地面に落ちた。

「ひどい、あんまりだああ!!お嫁にいくしかない!おい魔王浮竹、責任とって俺を嫁にしろ!」

「いいぞ」

浮竹の言葉に、新勇者も京楽も目が点になった。

「今日だけだ。トリュフを買ったんだ。まぁ、夕飯でも食べて回復魔法で一物はなんとかしてあげるから」

新勇者は、魔王の寛大さに涙を零した。

「おお、神よ・・・・・・」

その晩、新勇者はローストビーフとトリュフをいれたパスタを食べ、浮竹の魔法で息子さんを再生してもらい、翌日には城を去っていった。

次の日。

結婚届をもって、新勇者が浮竹の元にくるのだった。

そして京楽に黒こげにされて、泣いて逃げ出すのだった。


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