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勇者と魔王 モヒカンですがいかに?

魔王浮竹は、魔王城の庭で、勇者京楽と一緒に梅の花を愛でて花見をしていた。

「今年も綺麗に咲いたねぇ。あと1カ月ちょいもすれば、桜も見頃だね」

「ああ、その時は魔王城をあげての無礼講花見パーティーをしようと思っている」

「お、いいね」

「酒もあるだけ出そうと思っている。料理は料理人を何人か雇い入れて・・・・・・」

ああだこうだと、少し先の未来を描くだけで、やっぱり二人でいられるのはいいと、浮竹も京楽も思った。

京楽は、ぐいっと酒をあおってから、浮竹の長い白髪を手ですいた。

「ねぇ、花見しながらはどうだい」

「だめだ。外ではしない」

「たまにはいいじゃない」

「無人じゃないんだぞ。まぁいつもは人はいないが・・・・」

配下のモンスターは、魔王城にいなくもないが、各地に散って、魔王の配下であると声高々に、盗賊退治をしたりしている。

盗賊を退治して、金品を奪い、そしてリリースする。

キャッチアンドリリースだ。

人を害したりはしないし、どちらかというと魔王の領土の知性ないモンスターをやっつけていたりする。冒険者ギルドに登録もしていて、モンスターといっても、魔王浮竹の平和主義に染められていた。

「ねぇ」

「んっ・・・・だめだってば」

深く口づけてくる京楽をやんわりとなだめながら、浮竹はこれ以上するならハリセンで頭を殴ろうと、アイテムボックスからハリセンを出した。

「我は偉大なる新勇者なり!さぁ、いざ勝負!」

浮竹のハリセンは、新勇者の顔に炸裂した。

「おぶっ!」

「し、新勇者!どこから見てた!」

「初めから」

「おぶっ!」

新勇者の答えに、浮竹は赤くなってハリセンをまた新勇者の顔に炸裂させた。

「ちょ、ま、まじで顔はやめて。これでも・・・おぶっ」

今度は、邪魔された京楽がスリッパで新勇者の頭を叩いた。

「今日の恰好は一段と奇抜だねぇ」

新勇者は、ひらひらの服の上からスケスケのフルプレートアーマーを着て、頭は何故かモヒカンだった。

「モヒカン似合ってるよ」

「そうだろう!死滅した毛根に、アデランスで毛を植毛したのだ!でも全部できる金はなくって、モヒカンになった!」

「ほう。植毛か。そんな金・・・・そういえば、最近、純金の燭台がなくなったりしているんだが・・・・・」

「ふははははは!魔王城にあるものは、新勇者のものだ!いずれ、魔王城を乗っ取るのだから、前払いにもらっておいた・・・・おぶっ!」

顔にまたハリセンが炸裂する。

「ファイアボール」

浮竹は、炎の魔法で新勇者のモヒカンを燃やそうとした。

「ふっ、甘い!ウォーターボール!」

新勇者は、モヒカンの部分だけ純度の高い魔力を集めて、水で死守した。

新勇者の頭の上で炸裂した浮竹の魔法は、新勇者のウォーターボールによって防がれてしまった。

「なんだと・・・・・・」

浮竹が、ショックを受ける。

「お前もモヒカンになれ!ファイアボール!」

新勇者は、少年魔法使いが放ったファイアボールを受け取って、更にそこにファイアーボールをつっこんで、浮竹の長い白髪を燃やそうとした。

「ウォーターシールド!」

とっさに、京楽がシールドを張る。

京楽の張ったシールドは、新勇者のファイアーボールと相殺になり、たくさんの蒸気を出してお互い消滅した。

「魔法の腕、あがったかい?」

京楽が、新勇者の魔法の威力に、驚く。

ただのアホウだと思っていたのに。いや、変態のアホウか。

「LVUPしたからな!あと、魔法の札で魔力を強化している」

「ウィンドカッター」

ばしばしばしと、新勇者が見せた魔法の札を、浮竹が風の魔法で粉々にした。

「何してくれるんだ、一枚金貨20枚もするんだぞ!」

新勇者は、凄くおちこんだ。そして怒った。

「また食堂の黄金の燭台盗まないと・・・・・!」

「ウィンドカッター!」

浮竹が呪文を唱える。

シュパッ。

「くっ、これ以上魔法の札はやらせは・・・・ってあれ?頭部が涼しい・・・ぎゃあああ、俺の、俺のモヒカンがああああ!!!」

新勇者のモヒカンは、見事にざっくりと切られていた。

モヒカンを失ったことで、新勇者は恐慌状態に陥った。

「サイレンス」

京楽が、新勇者に沈黙の魔法をかける。魔法を使えなくするだけで、言葉はしゃべれた。

「あああああ、コッペパンとアハンアハンした後のパンを、女僧侶に食べさせて、少年魔法使いの財布から金貨3枚ちょろまかして・・・・・」

恐慌状態からステータスに混乱がついた新勇者は、自分がしていた悪事を口にしてしまっていた。

「なんですってぇ!あたしが食べたコッペパンとアハンアハンしていたですって!」

「僕の財布から金貨3枚もちょろまかすとは・・・道理で、金貨が少ないわけだ」

青年戦士と、獣人盗賊は、怒りに燃える女僧侶と少年魔法使いをなだめにかかる。

ぎゃいぎゃいうるさくなった新勇者パーティーに、浮竹も京楽も頭を抱えた。

「サンダーストーム」

「ライトニングボルト」

しびびびびびび。

全員しびれたのち、黒こげになった。

生きてはいたけど。

「ああああ、俺のモヒカンが黒こげにぃぃぃぃ!!!」

他のメンバーは頭髪は無事だった。

ただ、新勇者の頭髪のモヒカンは、黒こげになって、もう焼け野原になっていた。

「アデランスにいかないとおおおおお!!!」

「京楽、頼めるか」

「うん」

京楽は、魔法で鎖を作り出すと、それで新勇者パーティーをぐるぐる巻きにして、風の魔法で魔王城の外にぺっと放り投げた。


「うわああああん!俺のモヒカンがあああ!!」

「新勇者、覚悟できてるわね?」

「金貨3枚分、殴るから」

パーティーメンバーにボッコボコにされて、新勇者は泣きながらまた魔王城に忍びこみ、黄金の燭台を盗んで、売り払った金でアデランスにいって、モヒカンに植毛してもらうのであった。







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