勇者と魔王
「大根いかがですかー。安いよ安いよー。銅貨8枚だよー」
京楽は、作りすぎた魔王城の野菜を売り歩いていた。
人参とかキャベツも作りすぎて、あと鶏が卵を産みすぎて、それも売り歩いていた。
「人参が銅貨7枚、キャベツ銅貨10枚、卵1個銅貨2枚だぞー」
浮竹も、一緒になって売り歩く。
魔王城で野菜を作るのはいいが、作りすぎて、食べるのは主に二人なので、余った野菜は冷凍保存していたのだが、それでも次々と野菜が育っていくので、売りに出すことにしたのだ。
浮竹の魔王の加護に、育成×10というものがある。
野菜や果物の栽培、牛や豚や鶏、ヤギなどを飼育していると、その効果が現れる。
野菜や果物は普通の10倍の速さで実り、鶏は10倍の卵を産む。増えた家畜もまた、近くの二ニレムの街で売りさばいた。
自給自足から、変わって過剰すぎるようになってしまった。
京楽もまた、魔王の加護を受けながら野菜をつくるので、二人分の育成×10がこういう結果を生み出してしまった。
「あら魔王さん、大根と人参ちょうだいな」
「毎度あり」
浮竹は、魔王として二ニレムの街でけっこう有名だ。
京楽も勇者として有名になったが、勇者の特権である家探し・・・・他人の家に勝手にあがってたるやたんすの中に入っているものを漁って、勝手にもっていくやつということで、有名になった。
「ふう。兵士である野菜を売るのはかわいそうだが、売らないと実る一方だからな。だからって畑仕事をしないと暇だしなぁ」
浮竹は魔王である。
野菜を自家栽培しているが、一応魔王だ。
世界を恐怖に陥れる存在として一応いるのだが。
平和だった。
14代目魔王である、先々代の魔王は人間国家と戦争をして、魔王国の領土を広げていたが、先代の魔王になってから、人間種族とは休戦をして、国家は魔王城とその近辺のみとして、平和を愛した。
二ニレムの街も、一応は魔王の国の一部だ。
だが、魔王である浮竹は税金を一切とらず、二ニレムの街や他の魔王の国に住む住民たちは、今の魔王の浮竹をよい存在として認識していた。
敵対している勇者京楽のいた人間国家では、魔王は忌まわしき悪の象徴であり、人間国家を脅かす存在とされていた。
まぁ、大陸が違う。一度浮竹は、大陸を渡って魔王として平和条約を交わしに、人間国家に行ったのだが、魔王だと攻撃されまくって、仕方なく帰ってきた過去がある。
浮竹と京楽は、野菜と卵を売り歩いた。
値段は市場に並んでいるものより安く、そして野菜は大きいし卵も大きめなので、飛ぶように売れた。
「ふー、完売だな」
「そうだね。お疲れさま」
「しめて銀貨15枚か。けっこう売れたな」
京楽は魔法ポケットを持っているので、野菜や卵が売れると魔法ポケットから補充したりしていた。
「そうだ、京楽服を買わないか」
「え?」
浮竹は、売りあげの銀貨15枚と、魔法ポケットから出した金貨10枚で、カジュアルな洋服店に、京楽の手を握って連れていく。
「勇者としていつもマントをしているが、大分傷んできただろう。買い替えよう。俺の服ばかりサイズを調整して着るのも苦労するだろうし」
そう言って、浮竹は京楽に似合いそうな衣服をぽいぽいと籠にいれて、レジに行く。
「ちょっと浮竹!いいよ、自分で買うから」
「たまにはいいだろう。京楽の金でいつも世話になってるんだ。衣服くらい、俺が買ってやる。それに誕生日近いだろ?プレゼントの意味も兼ねてだ」
「もう、浮竹ってば」
京楽は、満更でもなさそうな顔をしていた。
「頼もう!」
そんな和やかな雰囲気の時に、新勇者パーティーがやってきた。
「なんだ、新勇者か。遊んでほしいのか?」
「そうなんだよ、遊んでくれ・・・じゃねぇえ!魔王浮竹、お前を討伐する!」
新勇者は、今日はアフロのかつらをしていた。
京楽に毛根を死滅されて以来、かつらが欠かせない。
「討伐されるような悪いことは何もしていないと思うんだがなぁ」
「何を言うか!魔王は存在するだけで悪!魔王討伐こそ、勇者の使命。それを放棄した元勇者京楽ともども、地獄へいけ!」
前回は浮竹の温情に惚れ込み、婚姻届けをもちだした新勇者であるが、すでに元に戻り、覚醒していた。
「うおおおお、吠えろ人造聖剣エクスカリバー!」
人造聖剣で、斬撃を浮竹に浴びせようとして、京楽が庇った。
本物のエクスカリバーと、人造聖剣のエクスカリバーがぶつかり合う。
衝撃に、新勇者パーティーの仲間は吹き飛ばされていった。
「のわああああああ」
「もきゃあああああああ」
ぴしぴしぴしっ。
人造聖剣エクスカリバーに亀裂が走る。
ポキン。
人造聖剣エクスカリバーは折れた。
ポキンと。
「ぎゃああああああああああ!?折れた!?聖剣が、勇者の象徴が折れた!?うわああああああああああん、ママーーー!元勇者に俺の聖剣折られたーー!!」
そういって、新勇者は泣きながら、吹き飛んで行った仲間のほうに逃げていった。
「悪いことしたかなぁ。さすがに折れるとは思わなかったよ」
「いや、先に斬りかかってきたのは向こうだし、正当防衛だ。新勇者でも、勇者は勇者なんだから、折れた聖剣くらいどうにでもできるんじゃないのか」
「なら、いいんだけど」
京楽は、浮竹に新しく買ってもらった漆黒のマントを風に翻して、聖剣エクスカリバーを鞘にしまった。
魔王城に帰ると、新勇者パーティーが入口で待っていた。
「なんだ、遊びにまたきたのか?」
「その、新勇者がママ、ママとうるさくて・・・・魔王にこんなこと頼むの間違ってると思うんですけど、この人造聖剣エクスカリバーを直していただけませんか。金は払いますので」
お金という言葉に、浮竹の耳が動く。
浮竹は折れた人造聖剣エクスカリバーを渡してもらい、魔力を込めた。
キイインンと音がして、人造聖剣エクスカリバーは見事にくっつき、蘇った。
「ありがとうございます。これ、お礼の白金貨200枚です」
浮竹は中身を数える。
「確かに、白金貨200枚いただいた」
「あ、明日からはまた敵ですからね!」
新勇者パーティーの紅一点の女僧侶は、そう早口でまくしたてた。
ツンデレというやつかもしれない。
「ばぶーママー」
「ほら、新勇者!いつまで赤ちゃん返りしてるのよ!エクスカリバーは元に戻ったから!」
「ぬおおおおおお。力が漲ってきた!」
そんな新勇者に、京楽は魔法をかけた。
「ドレイン」
しおしおしお。
新勇者はしおれていく。
「あああ、新勇者がしおしおに!?」
「今日、浮竹にいきなり斬りかかったお礼、してなかったからね」
「おのれ、勇者京楽め!覚えていろ!いつか魔王浮竹ともども、やっつけてやる!」
まだ少年の新勇者パーティーの魔法使いが、女僧侶に新勇者を魔法でHPを回復してもらいながら、浮竹と京楽にむかって、ぶっと屁をこき、おしりぺんぺんをして、真っ先に逃げ出した。
「逃げ足早いなぁ」
「また遊びに来いよー」
浮竹は、白金貨200枚をもらってほくほくした顔で、ひらひらと手を振った。
「ねぇ、浮竹、彼らは遊びにきてるんじゃなくって、僕らを討伐にきてるんだと思うんだけど」
「いや、気のせいだろ。いつも遊びにきてくれるから、からかいがいがある」
浮竹は抜けているようで、実は確信犯?とか京楽は思った。
「ねぇ、服かってもらったお礼、まだしてなかったね。今夜、いいかい?」
とたんに、浮竹は顔を真っ赤にした。
「いいも何も、今日は創造神の聖夜で、そういうことは世界中で禁止されてるはずじゃあ」
「魔王には、そんなこと関係ないでしょ」
京楽は、浮竹を抱き上げて、寝所に入ると、浮竹を押し倒した。
「んう・・・・・」
唇を塞がれる。
聖夜は、例え夫婦でも睦み合ってはいけない日。
でも、そんなことお構いなしに、浮竹と京楽は、魔王とその恋人らしく、甘い夜を過ごすのであった。
京楽は、作りすぎた魔王城の野菜を売り歩いていた。
人参とかキャベツも作りすぎて、あと鶏が卵を産みすぎて、それも売り歩いていた。
「人参が銅貨7枚、キャベツ銅貨10枚、卵1個銅貨2枚だぞー」
浮竹も、一緒になって売り歩く。
魔王城で野菜を作るのはいいが、作りすぎて、食べるのは主に二人なので、余った野菜は冷凍保存していたのだが、それでも次々と野菜が育っていくので、売りに出すことにしたのだ。
浮竹の魔王の加護に、育成×10というものがある。
野菜や果物の栽培、牛や豚や鶏、ヤギなどを飼育していると、その効果が現れる。
野菜や果物は普通の10倍の速さで実り、鶏は10倍の卵を産む。増えた家畜もまた、近くの二ニレムの街で売りさばいた。
自給自足から、変わって過剰すぎるようになってしまった。
京楽もまた、魔王の加護を受けながら野菜をつくるので、二人分の育成×10がこういう結果を生み出してしまった。
「あら魔王さん、大根と人参ちょうだいな」
「毎度あり」
浮竹は、魔王として二ニレムの街でけっこう有名だ。
京楽も勇者として有名になったが、勇者の特権である家探し・・・・他人の家に勝手にあがってたるやたんすの中に入っているものを漁って、勝手にもっていくやつということで、有名になった。
「ふう。兵士である野菜を売るのはかわいそうだが、売らないと実る一方だからな。だからって畑仕事をしないと暇だしなぁ」
浮竹は魔王である。
野菜を自家栽培しているが、一応魔王だ。
世界を恐怖に陥れる存在として一応いるのだが。
平和だった。
14代目魔王である、先々代の魔王は人間国家と戦争をして、魔王国の領土を広げていたが、先代の魔王になってから、人間種族とは休戦をして、国家は魔王城とその近辺のみとして、平和を愛した。
二ニレムの街も、一応は魔王の国の一部だ。
だが、魔王である浮竹は税金を一切とらず、二ニレムの街や他の魔王の国に住む住民たちは、今の魔王の浮竹をよい存在として認識していた。
敵対している勇者京楽のいた人間国家では、魔王は忌まわしき悪の象徴であり、人間国家を脅かす存在とされていた。
まぁ、大陸が違う。一度浮竹は、大陸を渡って魔王として平和条約を交わしに、人間国家に行ったのだが、魔王だと攻撃されまくって、仕方なく帰ってきた過去がある。
浮竹と京楽は、野菜と卵を売り歩いた。
値段は市場に並んでいるものより安く、そして野菜は大きいし卵も大きめなので、飛ぶように売れた。
「ふー、完売だな」
「そうだね。お疲れさま」
「しめて銀貨15枚か。けっこう売れたな」
京楽は魔法ポケットを持っているので、野菜や卵が売れると魔法ポケットから補充したりしていた。
「そうだ、京楽服を買わないか」
「え?」
浮竹は、売りあげの銀貨15枚と、魔法ポケットから出した金貨10枚で、カジュアルな洋服店に、京楽の手を握って連れていく。
「勇者としていつもマントをしているが、大分傷んできただろう。買い替えよう。俺の服ばかりサイズを調整して着るのも苦労するだろうし」
そう言って、浮竹は京楽に似合いそうな衣服をぽいぽいと籠にいれて、レジに行く。
「ちょっと浮竹!いいよ、自分で買うから」
「たまにはいいだろう。京楽の金でいつも世話になってるんだ。衣服くらい、俺が買ってやる。それに誕生日近いだろ?プレゼントの意味も兼ねてだ」
「もう、浮竹ってば」
京楽は、満更でもなさそうな顔をしていた。
「頼もう!」
そんな和やかな雰囲気の時に、新勇者パーティーがやってきた。
「なんだ、新勇者か。遊んでほしいのか?」
「そうなんだよ、遊んでくれ・・・じゃねぇえ!魔王浮竹、お前を討伐する!」
新勇者は、今日はアフロのかつらをしていた。
京楽に毛根を死滅されて以来、かつらが欠かせない。
「討伐されるような悪いことは何もしていないと思うんだがなぁ」
「何を言うか!魔王は存在するだけで悪!魔王討伐こそ、勇者の使命。それを放棄した元勇者京楽ともども、地獄へいけ!」
前回は浮竹の温情に惚れ込み、婚姻届けをもちだした新勇者であるが、すでに元に戻り、覚醒していた。
「うおおおお、吠えろ人造聖剣エクスカリバー!」
人造聖剣で、斬撃を浮竹に浴びせようとして、京楽が庇った。
本物のエクスカリバーと、人造聖剣のエクスカリバーがぶつかり合う。
衝撃に、新勇者パーティーの仲間は吹き飛ばされていった。
「のわああああああ」
「もきゃあああああああ」
ぴしぴしぴしっ。
人造聖剣エクスカリバーに亀裂が走る。
ポキン。
人造聖剣エクスカリバーは折れた。
ポキンと。
「ぎゃああああああああああ!?折れた!?聖剣が、勇者の象徴が折れた!?うわああああああああああん、ママーーー!元勇者に俺の聖剣折られたーー!!」
そういって、新勇者は泣きながら、吹き飛んで行った仲間のほうに逃げていった。
「悪いことしたかなぁ。さすがに折れるとは思わなかったよ」
「いや、先に斬りかかってきたのは向こうだし、正当防衛だ。新勇者でも、勇者は勇者なんだから、折れた聖剣くらいどうにでもできるんじゃないのか」
「なら、いいんだけど」
京楽は、浮竹に新しく買ってもらった漆黒のマントを風に翻して、聖剣エクスカリバーを鞘にしまった。
魔王城に帰ると、新勇者パーティーが入口で待っていた。
「なんだ、遊びにまたきたのか?」
「その、新勇者がママ、ママとうるさくて・・・・魔王にこんなこと頼むの間違ってると思うんですけど、この人造聖剣エクスカリバーを直していただけませんか。金は払いますので」
お金という言葉に、浮竹の耳が動く。
浮竹は折れた人造聖剣エクスカリバーを渡してもらい、魔力を込めた。
キイインンと音がして、人造聖剣エクスカリバーは見事にくっつき、蘇った。
「ありがとうございます。これ、お礼の白金貨200枚です」
浮竹は中身を数える。
「確かに、白金貨200枚いただいた」
「あ、明日からはまた敵ですからね!」
新勇者パーティーの紅一点の女僧侶は、そう早口でまくしたてた。
ツンデレというやつかもしれない。
「ばぶーママー」
「ほら、新勇者!いつまで赤ちゃん返りしてるのよ!エクスカリバーは元に戻ったから!」
「ぬおおおおおお。力が漲ってきた!」
そんな新勇者に、京楽は魔法をかけた。
「ドレイン」
しおしおしお。
新勇者はしおれていく。
「あああ、新勇者がしおしおに!?」
「今日、浮竹にいきなり斬りかかったお礼、してなかったからね」
「おのれ、勇者京楽め!覚えていろ!いつか魔王浮竹ともども、やっつけてやる!」
まだ少年の新勇者パーティーの魔法使いが、女僧侶に新勇者を魔法でHPを回復してもらいながら、浮竹と京楽にむかって、ぶっと屁をこき、おしりぺんぺんをして、真っ先に逃げ出した。
「逃げ足早いなぁ」
「また遊びに来いよー」
浮竹は、白金貨200枚をもらってほくほくした顔で、ひらひらと手を振った。
「ねぇ、浮竹、彼らは遊びにきてるんじゃなくって、僕らを討伐にきてるんだと思うんだけど」
「いや、気のせいだろ。いつも遊びにきてくれるから、からかいがいがある」
浮竹は抜けているようで、実は確信犯?とか京楽は思った。
「ねぇ、服かってもらったお礼、まだしてなかったね。今夜、いいかい?」
とたんに、浮竹は顔を真っ赤にした。
「いいも何も、今日は創造神の聖夜で、そういうことは世界中で禁止されてるはずじゃあ」
「魔王には、そんなこと関係ないでしょ」
京楽は、浮竹を抱き上げて、寝所に入ると、浮竹を押し倒した。
「んう・・・・・」
唇を塞がれる。
聖夜は、例え夫婦でも睦み合ってはいけない日。
でも、そんなことお構いなしに、浮竹と京楽は、魔王とその恋人らしく、甘い夜を過ごすのであった。
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