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小説掲載プログ
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卯ノ花と浮竹と京楽と

優しき笑みの中に般若を宿す。

その名は卯ノ花烈。


4番隊綜合救護詰所の病室に入院していた浮竹。酷い発作を起こして血を大量に吐いて、京楽の手で4番隊綜合救護詰所まで運ばれて、意識を回復した。

安静にしていろと言われた1週間を過ぎても、退院許可が下りなかった。

この前も発作を起こして倒れたばかりなので、念のためと3日間入院させられた。京楽がよく見舞いにきてくれたが、ずっといてくれるわけじゃない。

おまけに4番隊の飯は質素すぎて味も薄く、浮竹は辟易していた。

近くに甘味屋があったので、浮竹はベッドに丸めたシーツを入れているふりをして、甘味屋にでかけた。

見つからないようにと、窓から瞬歩で移動した。

久しぶりに4番隊の飯以外のものを口にして、感激した。

甘い味が体に浸透していく。

甘味物に目がない浮竹は、京楽のつけということにして、3人分は甘味物を食べて、満足して病室に戻った。

「浮竹隊長、そんなに入院を長引かせたいのですか?」

「うげ、卯ノ花隊長!」

にこにこにこ。

その笑顔が、怖かった。

笑顔の裏に般若がいた。

「そうですか・・・そんなに入院を長引かせたいなら、新しく開発させたこのウィルスを・・・・」

「ウィルス!?涅隊長じゃあるまいし!」

4番隊綜合救護詰所では、今後流行るであろうこのウィルスの治療に躍起になっています。そんなに実験体になっていただきたいのなら、もっと早くに言ってくださればいいのに」

「ごめんなさい!もう無断でぬけだしたりしません!」

ベッドの上で土下座すると、修羅は菩薩に変わった。

「あなたは、ただでさえ病弱なのですから。肺の発作が立て続けにおこって体が疲弊しているのです。大人しく、安静にしていてください」

「一つだけいいだろうか、卯ノ花隊長」

「なんですか?」

「飯を、13番隊のものを食べてもいいだろうか」

「そんなにお口に合いませんか?」

「薄味すぎて、食べた気にならない」

「まぁいいでしょう。元気になってきている証ですから・・・・特別ですよ?」

「やった!」

浮竹は喜んだ。

清音に伝えて、夕食は13番隊のものを用意してもらった。

それを食べて湯浴みをして病室に戻ると、京楽がいた。

「どうしたんだ、こんな時間に」

「君が、病室を抜け出したって聞いてね」

「それは・・・・」

「浮竹、頼むから無茶なことはしないで。安静にしていろと言われたら、その通りにして」

「悪かった・・・・ちなみに、この近くにある甘味屋にいったんだ。金がなかったから、お前のツケということにした」

「はぁ・・・・・君がこんな調子だから、利用したこともない店でツケを払えと取り立てられる僕・・・・・」

「すまない!」

すまないとは言うが、返すとは言わない浮竹である。

浮竹の給料の大半は仕送りで、残りは薬代で消えてしまい、飲み食いする金がないのだ。

だから、京楽のつけがきくのをいいことに、たまに勝手に甘味屋で飲み食いをした。

居酒屋などでは、ツケがきかない店もあるので、そういう時は必ず京楽と一緒にでかけた。京楽の財布は浮竹の財布状態だった。

「卯ノ花隊長、怒ってたでしょ」

「般若だった。怖かった。新しいウィルスに感染させられそうになった」

「うわーまるで涅隊長のようだね。怖い怖い。山じい言わせると、古参中の古参らしいのに、全然老けてないし・・・妖怪かな?」

いつもは菩薩なのだが。

「京楽隊長、誰が妖怪ですって?」

卯ノ花が、音も立てずに病室にいた。

「うわあああああ!!!」

「病院内では静かにお願いします」

「な、なんでもないんだ、卯ノ花隊長!」

京楽は顔を真っ青にして、ぶんぶんと首を横に振っていた。

「そんなに元気があるなら、献血してください」

「助けてーうーきーたーけー」

ズルズルと引っ張っていかれる京楽に、浮竹は手を合わせた。

「成仏してくれ」


卯ノ花烈。

菩薩と修羅をもつ女性。

色々と謎が多い。

その卯ノ花が、初代剣八であり、護廷13隊結成当時からいる古参中の古参であり「死剣」と呼ばれていたことがわかるのは、まだ先のお話であった。


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