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君がいなくなる

君がいなくなる。
君のぬくもりが失われていく。
力なく投げ出された四肢は、栄養をとれないせいで細くなってしまった。
ミミハギ様を失ったことで、君は肺の病が進行して死のうとしていた。
「京楽・・・・お前と、出会えてよかった・・・・」
「浮竹、まだ死なないで。僕を置いていかないで」
京楽はぼたぼたと大粒の涙を流していた。
なくしてしまった右目の眼帯にそっと触れて、浮竹は目を閉じた。
「俺は満足なんだ。お前と出会えて・・・・お前に愛されて」
君はそれでいいかもしれないけど、僕はだめなんだ。
「浮竹、愛してるよ。ねぇ、逝かないで。僕を置いていったりしないで」
浮竹は、苦しそうに何度かせきこんだ。
赤い血が二人の着物を汚す。
そんなこと、どうでもいい。
君の体から、ぬくもりがなくなっていく。
せめてと、ぬくもりを分け与えるように抱きしめた。
弱い力で、抱きしめ返された。
ああ、こんなにも君を愛しているのに。君はいなくなってしまうんだね。
僕を置いて。
「京楽・・・・春水、愛して・・・・る・・・・・」
ねぇ。
君がいないと、僕は輝けない。
君が太陽なら、僕は月。
ねぇ、浮竹。
太陽がないと、月は輝けないんだよ?
「逝かないで・・・・・」
君は、ゆっくりと目を閉じる。翡翠の綺麗な瞳が、閉じられていく。
君の瞳からも涙が零れていた。
やがて浮竹は涙を零さなくなり、体がふっと軽くなった。
「浮竹!」
君の返事はない。
僕は、君の唇に唇を重ねていた。
ねぇ。
君は、君のいない世界でどうやって僕に生きろというの。
太陽である君を失った月は、どうやって輝けばいいの。
ねぇ。
もう、答えてもくれないんだね。
浮竹の遺体を抱き上げて、京楽は吠えた。
慟哭が、夕暮れにかき消されていった。

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