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君ヲ想ウ

浮竹十四郎。

護廷13隊の13番隊隊長にして、ミミハギ様を肺に宿す者。

浮竹は、ユーハバッハが霊王を屠ったことにより、神掛けをしてそのまま世界の安定を保ち、そして死んでいった。

京楽春水。

浮竹十四郎の院生時代からの親友であり、共に2対1本の斬魄刀をもち、よく酒を飲みかわしたりした。

山本元柳斎重國が死んだ、次の総隊長だった。


京楽は、浮竹のことが好きだった。

院生時代から、好きだった。

それは浮竹も同じことで、けれど告白はなく、隊長になってやっと告白しあい、結ばれて200年が経過しようとしていた。

たくさんの思い出ができた。

浮竹は肺の病の他にも病弱で、時折入院したりした。

雨乾堂で臥せっていることも多く、よく見舞いにいった。

体を重ね合わせて、どす黒い感情に苛まれることはあれど、二人の愛は不変だった。

「俺は先に逝く」

「そうかい・・・・・・」

浮竹のその言葉を、京楽はどこか遠くで聞いていた。

「じゃあ、いってらっしゃい」

「ああ、またどこかで会おう」

まるで、明日また会おうと言っているようだった。

護廷13隊のために死なば本望。

浮竹はそれを実現させた。

遺体の保存状態はよかった。

「お別れだね」

冷たくなってしまった唇に口づける。

ポタリ、ポタリ、ポタリ。

隻眼の瞳から、涙がとどめとなく滴り落ちた。

「もっと・・・・もっと、君とこの世界を生きたかった。最後まで一緒にいて、引退して、いつか君がへたくそな盆栽をいじっている、その隣にいたかった」

涙はふけどもふけども溢れてくる。

「君を愛していた!」

棺の中で静かに眠る浮竹の体を抱き寄せた。

「君を今でも愛しているんだ・・・・この感情を、どうすればいいの」

あふれ出す想い。

君を想う。

ただ、恋しくいて恋しくて。

純粋に愛しくて。

浮竹の遺体は、百合の花に包まれて荼毘に付された。

浮竹を失い、京楽の世界から色が消えた。

何もかもが、モノクロに見えた。

雨乾堂を取り壊して、そこに墓を建てた。

けれど世界はモノクロで。


「やぁ、京楽。元気にしているか」

「浮竹・・・?」

「俺のことでいつまでもくよくよするなよ。お前の周りの世界はこんなにも色づいている」

浮竹に、唇を奪われた。

「浮竹!!」

掴もうとするが、それは届かなくて。

白昼夢だったのだろうか。

気が付くと、浮竹の遺品としてもっていた翡翠の髪飾りが落ちていた。

世界が、また色づいて見えた。

「君は・・・・・僕に、会いに来てくれたの?」

また、涙がぽたぽたと落ちていく。

きっと、そうに違いない。

君を想うあまりに、世界の色を失ってしまった僕を、戒めにきたのだろう。

京楽は、隻眼の鳶色の瞳で、涙を流しながら微笑んだ。

「浮竹、僕は元気でやっているよ。確かに君を失って辛い。でも、みんなが支えてくれる。君との思い出がたくさんある・・・・・だから、前を向いて歩いていくよ」

立ち止まるな。

きっと、そう言いにいきてくれたんだろう。

「さて、今日もほどほどに仕事しますか」

総隊長の地位は楽ではない。けれど、支えてくれる仲間たちがいる。

君の魂を、僕は背負っている。

君の魂は、きっと僕の中にある。

この想いがある限り。


君を想う。

どんなことがあろうとも。

君を想う。

どんなにつらくことも。

君を想う。

どんなに離れていても。

君を想う。

どんなに思って、会えなくとも。


ただひたすらに君を想い、愛する。

君ヲ想ウ。







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