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告白

「ずっと好きでした!これ、読んでください!」

学院の、桜の木の下に呼ばれた浮竹は、肩まで伸びた白い髪を風に靡かせて、困った顔をしていた。
桜の木の上から、会話を聞いていた京楽は思う。
突き放せばいいのに。

「すまないが、もう好きない人がいるんだ」

「そんな・・・・・・」

告白してきたのが、女性なら何も思わなかった。でも、相手は男性だったのだ。しかも年下。別に浮竹と付き合っているわけではないが、密かに想いを寄せている京楽は、あれが自分だったらと思うと、怖くなった。

「好きな相手か・・・・誰だろうね」

桜の木の上から、様子をうかがっていると、相手の男性は泣いて去ってしまった。けっこうかわいい子だった。女の子みたいで。
浮竹と同じような種類の子だった。浮竹も、秀麗な容姿のせいで、背丈がなければ女性に見間違えられることもある。

「百合みたい・・・・・」

さっきの子とできてしまえば、まるでそっちの世界に見えてしまうだろう。

「おい、京楽!そこにいるんだろう!」

「ばれてたか・・・・・・」

「こんな近くにいて、ばれないと思っているのか」

京楽が桜の木の上から降りてくる。桜はもう散ってしまい、今は葉桜だった。その葉も、あと2か月もすれば散ってしまうだろう。
降りてきた京楽は、睨んでくる浮竹の様子を見る。

「俺をからかうつもりで見ていたのか」

「違うよ。たまたま居合わせただけさ」

「気づいていたなら、去るなりなんなりできたんじゃないのか」

「いやぁ、君の答えが気になってね」

飽きれ気味の浮竹が、京楽の耳を引っ張る。

「あいたたたた」

「午前の授業さぼって。午後からはちゃんとでろ」

「分かったよ。分かったから、手を放してくれる?」

浮竹の手が離れていく。その手を、気づけば掴んでいた。

「ねぇ」

体を引き寄せて、耳元で囁いた。

「なんだ」

浮竹は、京楽のそんな行為など慣れているので、ある程度距離をとる。

「君の好きな人って誰?」

「そんなの、お前には関係ない」

ふいっと、視線を逸らす浮竹。ひらりと、桜の葉が気まぐれに強い風に吹かれて降ってくる。浮竹の少し長くなった髪も、風で揺れてサラサラと音をたてていた。
浮竹の髪も、大部長くなった。入学当初は短かったけれど、常に隣にいて、髪を伸ばせばいいと囁いていたら、浮竹は髪を切らなくなった。

ねえ。

少しは、優越感に浸っていいのかな?

「いいじゃない。僕と君の仲でしょ」

「ただの友人だ」

「親友っていってよ」

「いくら親友でも、話すつもりはない」

浮竹は頑なで。今までも告白されて、好きな人がいるんだと何度も聞いてきたけど、その好きな人が誰なのか、京楽には非常に気になった、

もしも、その相手と相思相愛だったらどうしようという不安に駆られた。

「けち」

「うるさい」

浮竹は、京楽に教えるつもりはなかった。

「そういうお前こそ、この前付き合ってた女の子はどうしたんだ」

「振られた」

「お前が?」

「そう。他に好きな人がいるんでしょうって。私を見てくれていないって、ビンタされたよ」

「ビンタはきついが・・・本当に他に好きな子がいるなら、その子と付き合えばいいのに」

ふいっと、浮竹がまた視線を逸らす。京楽と視線を合わせようとしない。この手の会話になると、浮竹はいつも京楽から視線を逸らした。

「こっち見てよ」

「いやだ」

「ねぇ、こっちを見て?」

「なんなんだ・・・・・・・」

ふわりと。柑橘系の香水の匂いに包まれた。京楽の匂いだ。京楽は、浮竹を抱き寄せていた。今までもこんな行為をされたことは何度かあるが、抱きしめてくる力が強いので、その名を呼ぶ。

「おい、京楽!?」

「悔しいなぁ。君の好きな人が僕ならいいのに」

かっと、腕の中の浮竹が朱くなった。
その様子に、ドクンと京楽の鼓動が高鳴る。

「聞いてもいい?」

「何も聞くな・・・・・放っておいてくれ」

ねえ。

優越感に浸ったまま、想いを告げてもいいかな?

「浮竹・・・・・・」

翡翠の瞳に引き込まれるように、気づけば口づけしていた。

「きょうら・・・・・く・・・・・?」

酸素を求める唇に、深く唇を重ねると、突き飛ばされた。

「弄ぶな!」

「違う!」

京楽は、真剣な表情そのもので、もう一度浮竹の細い体を抱き寄せた。

「君が、好きなんだ!」

「!」

腕の中の浮竹の体が、強張る。

ああ。

言ってしまった。

これで、僕たちの友情も終わりだね。

つっと、浮竹の翡翠の瞳から涙が零れ落ちた。

「俺で遊ぶのは止めてくれ・・・・・お前が好きなんだ。この気持ちを、弄ばないでくれ」

京楽の背中に手が回される。

「浮竹!?本当に!?」

浮竹が、はっとなって体を離そうとする。でも、京楽は逃がさない。

「今の言葉、君が僕を好きで、僕も君が好き・・・・両想いって受け取っていいんだね?」

顔を真っ赤にした浮竹を抱き上げる。

「京楽!」

「今はもう女の子と付き合っていない。フリーだよ。将来護廷13番隊の席官クラス入りは間違いなし!おまけに上流貴族でお金もある!こんな優良物件他にないよ!」

抱き上げた浮竹が、真っ赤になった。

「ああ、もう!」

やけくそ気味に、浮竹は叫んだ。

「俺はお前が好きだ大馬鹿野郎!」

「大馬鹿野郎だよ。君が振り向いてくれないと思って、好きでもない女の子と付き合って、廓では女を買って・・・・・知ってた?僕が付き合う子、瞳の色に緑がまざっているか、色素の薄い子なんだよ?」

浮竹の髪は白い。色素を失ってしまったせいだ。肌の色も白い。おまけに肺の病を抱えていて、病弱だ。

「それは知ってた」

静かに、浮竹は呟いた。

「俺は・・・男だし、病弱だし、金もないし、将来護廷13番隊の席官クラス入り間違いなしだが、優良物件には程遠い。それでもいいのか?」

「いいよ。何もかも、受け入れるから。君の病弱なところさえ愛しい」

「京楽・・・・・・」

二人は、また口づけた。
無理やり指で浮竹の口を開けさせて、舌をいれると怒られた。

「いきなり舌をいれるやつがあるか!」

ぼかっと、殴られても、京楽は幸せそうだった。

「今晩は赤飯だ!」

「ばか!」

浮竹を抱き上げて、くるくると京楽はまわる。

やがて落ち着いた二人は、寄り添いあって桜の木の下に座った。

「午後の授業、はじまっちゃったね」

「こんな気分で、授業なんて受けれるか」

二人で顔を見合わせて、くすくすと笑いあう。
これからの関係が、何百年も続くとはその時はおもっていなかった。

告白は、桜の木の下で。


「という話があってさぁ」

「完全にのろけ話じゃねーか!」

わかめ大使を食べていた日番谷は、京楽の話につっこみを入れた。

「でもさぁ、もめたんだよねぇ」

「何がだよ」

「どっちが受けになってどっちが攻めになるかで」

ブーーーー!

日番谷は、お茶を吹き零していた。

「そういう専門用語使うのやめろ。松本ぉ!何録音してやがる!」

松本は、テープで京楽の会話を録音していた。
ずっと話をきいていた浮竹が、零す。

「俺は攻めがよかったんだ。なのに、見た目がいいほうが受けだといって、京楽が襲ってきてな・・・・・・」

ブーーーー!

日番谷はまたお茶を吹き零した。

「だから松本おおおおお!録音するなああああ!!!」

「きゃああああああ!隊長、おこっちゃいや!」

腐っている松本は、どこまでも腐っていた。

「今でも、僕を抱きたいと思うかい、浮竹?」

「いや、今のままでいい。抱かれる側に慣れてしまった」

「かわいいね、浮竹は」

「あっ、京楽・・・・・・」



「・・・・・・・蒼天に座せ、氷輪丸!松本おおおおお、お前もだああああ!」

氷輪丸を避けて、二人は逃げ出した。

そして松本は、氷輪丸の攻撃をもろに受けて、せっかく録音したテープを破壊されて泣いていた。

「酷い!隊長のばか!」

「ばかはお前と京楽と浮竹だーーーー!!」




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