花に狂った王
「浮竹・・・・・?」
久しぶりに睦みあった夜、湯あみをして寝ようとした時に、ふと浮竹が視線を彷徨わせた。
「呼んでる」
「誰が」
「懐かしい花の神が」
そう言って、ベッドから降りてしまった。何処かへ行こうとする浮竹を止めると、むせるような甘い花の香に包まれた。
「行かなきゃ・・・・・」
「浮竹!」
本当に、どこかにいってしまいそうで、京楽は焦った。
「どこにもいっちゃだめだよ、浮竹!」
「大丈夫。きっと、戻ってくるから」
そう笑って、浮竹は夜の闇に消えてしまった。
「夢?」
はっと起きて、隣を見る。スースーと、規則正しい呼吸をしている浮竹がいた。
「誰にも、渡さない・・・・・」
寝ている浮竹を抱き締めると、浮竹が目覚めた。
「ん・・・・京楽?」
「君は僕のものだ。たとえ相手が神であろうと、渡さない」
一時期はむせるような甘い花の香をさせていた浮竹だが、それも最近では薄まり、浮竹が消えてしまう前兆なのではないかと恐れていた京楽を安心させた。
さっきの夢はなんだったのだろうか。
赤子の頃、浮竹を愛し、甘い花の香という祝福を与えた花の神が、浮竹を呼んでいるのだろうか。
たとえそうであっても、許さない。
浮竹を僕から奪うなんて、誰にもさせない。
絶対に許さない。
「まだ深夜だ・・・・もう一度、寝なおそうか」
京楽は、浮竹を寝かしつけて自分も目を閉じた。でも、眠気は一向にやってこなかった。
ベッドを降りて、開け放たれたままの窓から、月光がさしていた。
その光を浴びながら、久しぶりに強い酒を飲んだ。浴びるように飲んでも、眠気は訪れなかった。
朝になり、浮竹が起きてきた。
「おはよう」
「おはよう。もしかして、ずっと起きてたのか?」
浮竹が、心配そうに京楽の顔を覗き込む。
「大丈夫だよ。眠くなったら仮眠をとるから」
「無理はするなよ?約束だぞ」
指きりげんまんをした。
他愛のない、約束。
今日も一日が始まろうとしていた。
今日は、甘味屋にきていた。ルキアと苺花を誘ってだ。
「シロさんと京楽総隊長は、今日もあつあだね!」
「いやまぁ・・・・・あつあつなのか?」
浮竹が京楽を見ると、京楽はでれた顔で頷いた。
「そうそう、僕たちいつでもあつあつなの。寝る時も食事も風呂も仕事も・・・いつも一緒だからね」
「うわー大人なんだ」
「こら苺花、あまりこみいった話をするでない!」
「いいじゃないか朽木」
浮竹は、注文をとりにやってきた給仕係に、白玉あんみつを4人前頼んだ。
「あー、あたしも白玉あんみつ好き!」
「隊長いいのですか?おごってもらうなんて・・・・・」
「いいんだ。どうせ、京楽の金だし」
渡されていた金子を見せると、朽木家から一般人になったルキアが驚く。
「そんな大金、あまり持ち歩かないでください」:
「もっていると見せなければ、誰もとろうとしないさ。それに俺も元隊長だ。今では双魚理もあるし、賊ごときに遅れはとらない」
「それはそうですが・・・・・・・」
もってこられた白玉あんみつを口にして、ルキアは幸せそうだった。
「朽木はその・・・一護君と結ばれるものと思っていたんだが」
ずっと気になっていたのだ。あれほど、お互いを必要としあい、時に愛を囁きあった二人が離れ離れになり、違う伴侶をえるなんて、できるものなんだろうかと。
「一護のことは、まだ好きです。愛していますよ?でも、恋次も愛しているんです。私は、欲張りなのです」
白玉あんみつのメインである白玉を口にしながら、ルキアは言う。
「一護も、きっと同じ想いです。私を愛しながら、織姫を愛している」
「そういう、複雑な恋愛関係はちょっとわからないな」
浮竹が、白玉あんみつを口にする。
「隊長には京楽総隊長だけでしょうから。私には苺花もおりますし・・・もう、後戻りはできないのです」
アメジスト色の瞳が、少し悲し気に臥せられる。
「でも、私は今が幸せなのです。たまに一護とやり取りをして、恋次と苺花と過ごす毎日が。この結末を迎えても、後悔はしておりません」
「そうか・・・・・・」
「母上は、三角関係のドロドロなんだって、チカさんがいってたよ」
「苺花の名前の由来も、一護からですし」
「ああ、それには気づいてた」
京楽は、あまり口を挟まずに白玉あんみつを食べていた。
元上司と部下の話し合いに、ちゃちゃをいれるようなことはしない。
恋次との馴れ初めとかいろいろ聞いていたら、浮竹は涙目になっていた。
「朽木は苦労したんだな。阿散井副隊長と結ばれてよかった。できれば、結婚式をこの目で見たかった」
「ああ、それは私も思っています。隊長が、あの場にいたらどんなに泣いてくれるかと想像してしまいました」
甘味屋で、長いことしゃべっていた。
白玉あんみつを3回頼んで、ゆっくり食べて語らっていたら、いつの間にか夕方になっていた。
「僕たちはこれで失礼するよ」
京楽が、浮竹の腕をとる。
「ああ、朽木、またな!」
浮竹が勘定を済ませ、外に出る。
「急にどうしたんだ、京楽?」
「君の花の香がきつくなって・・・・浮竹?」
目の前の浮竹の姿の輪郭が、ぶれる。
「え。なんだこれ!?」
浮竹は、自分でも分かるほどのむせかえる花の匂いに、クラリときていた。
「浮竹!」
花に狂った王がやってくる。
「愛児を、返しにもらいにきたぞ」
花の神は、花びらになって浮竹を包み込んだ。、
それに、京楽が花天狂骨を引き抜いて、浮竹を守ろうと背後に隠した。
「神様だろうがなんだろうが、浮竹は渡さないよ!」
「京楽!」
浮竹が悲鳴をあげる。
京楽が構えていたはずの花天狂骨が、京楽の心臓に突き刺さっていた。
「浮竹・・・・逃げ・・・・・・・」
「京楽!!!」
「お前次第だ、愛児。この者を助けたいなら、我が元へこい。この椿の狂い咲きの王のところへ」
「分かったから、京楽を助けてくれ!」
そう叫んだ時には、ぶわりと京楽を、花びらが包み込んでいた。
花天狂骨が、地面に落ちていた。その柄を握りしめて、京楽は叫んでいた。
「浮竹、行ってはだめだ!」
「花に狂った天の骨を持つお前に、チャンスをやろう。愛児の墓の前で、覚悟を見せろ。その覚悟次第で、愛児を返してやろう」
花に狂った王は、浮竹を抱き上げて天に昇っていく。
「浮竹ーーーーーーー!」
京楽の叫び声は、どこまでも続いていた。
久しぶりに睦みあった夜、湯あみをして寝ようとした時に、ふと浮竹が視線を彷徨わせた。
「呼んでる」
「誰が」
「懐かしい花の神が」
そう言って、ベッドから降りてしまった。何処かへ行こうとする浮竹を止めると、むせるような甘い花の香に包まれた。
「行かなきゃ・・・・・」
「浮竹!」
本当に、どこかにいってしまいそうで、京楽は焦った。
「どこにもいっちゃだめだよ、浮竹!」
「大丈夫。きっと、戻ってくるから」
そう笑って、浮竹は夜の闇に消えてしまった。
「夢?」
はっと起きて、隣を見る。スースーと、規則正しい呼吸をしている浮竹がいた。
「誰にも、渡さない・・・・・」
寝ている浮竹を抱き締めると、浮竹が目覚めた。
「ん・・・・京楽?」
「君は僕のものだ。たとえ相手が神であろうと、渡さない」
一時期はむせるような甘い花の香をさせていた浮竹だが、それも最近では薄まり、浮竹が消えてしまう前兆なのではないかと恐れていた京楽を安心させた。
さっきの夢はなんだったのだろうか。
赤子の頃、浮竹を愛し、甘い花の香という祝福を与えた花の神が、浮竹を呼んでいるのだろうか。
たとえそうであっても、許さない。
浮竹を僕から奪うなんて、誰にもさせない。
絶対に許さない。
「まだ深夜だ・・・・もう一度、寝なおそうか」
京楽は、浮竹を寝かしつけて自分も目を閉じた。でも、眠気は一向にやってこなかった。
ベッドを降りて、開け放たれたままの窓から、月光がさしていた。
その光を浴びながら、久しぶりに強い酒を飲んだ。浴びるように飲んでも、眠気は訪れなかった。
朝になり、浮竹が起きてきた。
「おはよう」
「おはよう。もしかして、ずっと起きてたのか?」
浮竹が、心配そうに京楽の顔を覗き込む。
「大丈夫だよ。眠くなったら仮眠をとるから」
「無理はするなよ?約束だぞ」
指きりげんまんをした。
他愛のない、約束。
今日も一日が始まろうとしていた。
今日は、甘味屋にきていた。ルキアと苺花を誘ってだ。
「シロさんと京楽総隊長は、今日もあつあだね!」
「いやまぁ・・・・・あつあつなのか?」
浮竹が京楽を見ると、京楽はでれた顔で頷いた。
「そうそう、僕たちいつでもあつあつなの。寝る時も食事も風呂も仕事も・・・いつも一緒だからね」
「うわー大人なんだ」
「こら苺花、あまりこみいった話をするでない!」
「いいじゃないか朽木」
浮竹は、注文をとりにやってきた給仕係に、白玉あんみつを4人前頼んだ。
「あー、あたしも白玉あんみつ好き!」
「隊長いいのですか?おごってもらうなんて・・・・・」
「いいんだ。どうせ、京楽の金だし」
渡されていた金子を見せると、朽木家から一般人になったルキアが驚く。
「そんな大金、あまり持ち歩かないでください」:
「もっていると見せなければ、誰もとろうとしないさ。それに俺も元隊長だ。今では双魚理もあるし、賊ごときに遅れはとらない」
「それはそうですが・・・・・・・」
もってこられた白玉あんみつを口にして、ルキアは幸せそうだった。
「朽木はその・・・一護君と結ばれるものと思っていたんだが」
ずっと気になっていたのだ。あれほど、お互いを必要としあい、時に愛を囁きあった二人が離れ離れになり、違う伴侶をえるなんて、できるものなんだろうかと。
「一護のことは、まだ好きです。愛していますよ?でも、恋次も愛しているんです。私は、欲張りなのです」
白玉あんみつのメインである白玉を口にしながら、ルキアは言う。
「一護も、きっと同じ想いです。私を愛しながら、織姫を愛している」
「そういう、複雑な恋愛関係はちょっとわからないな」
浮竹が、白玉あんみつを口にする。
「隊長には京楽総隊長だけでしょうから。私には苺花もおりますし・・・もう、後戻りはできないのです」
アメジスト色の瞳が、少し悲し気に臥せられる。
「でも、私は今が幸せなのです。たまに一護とやり取りをして、恋次と苺花と過ごす毎日が。この結末を迎えても、後悔はしておりません」
「そうか・・・・・・」
「母上は、三角関係のドロドロなんだって、チカさんがいってたよ」
「苺花の名前の由来も、一護からですし」
「ああ、それには気づいてた」
京楽は、あまり口を挟まずに白玉あんみつを食べていた。
元上司と部下の話し合いに、ちゃちゃをいれるようなことはしない。
恋次との馴れ初めとかいろいろ聞いていたら、浮竹は涙目になっていた。
「朽木は苦労したんだな。阿散井副隊長と結ばれてよかった。できれば、結婚式をこの目で見たかった」
「ああ、それは私も思っています。隊長が、あの場にいたらどんなに泣いてくれるかと想像してしまいました」
甘味屋で、長いことしゃべっていた。
白玉あんみつを3回頼んで、ゆっくり食べて語らっていたら、いつの間にか夕方になっていた。
「僕たちはこれで失礼するよ」
京楽が、浮竹の腕をとる。
「ああ、朽木、またな!」
浮竹が勘定を済ませ、外に出る。
「急にどうしたんだ、京楽?」
「君の花の香がきつくなって・・・・浮竹?」
目の前の浮竹の姿の輪郭が、ぶれる。
「え。なんだこれ!?」
浮竹は、自分でも分かるほどのむせかえる花の匂いに、クラリときていた。
「浮竹!」
花に狂った王がやってくる。
「愛児を、返しにもらいにきたぞ」
花の神は、花びらになって浮竹を包み込んだ。、
それに、京楽が花天狂骨を引き抜いて、浮竹を守ろうと背後に隠した。
「神様だろうがなんだろうが、浮竹は渡さないよ!」
「京楽!」
浮竹が悲鳴をあげる。
京楽が構えていたはずの花天狂骨が、京楽の心臓に突き刺さっていた。
「浮竹・・・・逃げ・・・・・・・」
「京楽!!!」
「お前次第だ、愛児。この者を助けたいなら、我が元へこい。この椿の狂い咲きの王のところへ」
「分かったから、京楽を助けてくれ!」
そう叫んだ時には、ぶわりと京楽を、花びらが包み込んでいた。
花天狂骨が、地面に落ちていた。その柄を握りしめて、京楽は叫んでいた。
「浮竹、行ってはだめだ!」
「花に狂った天の骨を持つお前に、チャンスをやろう。愛児の墓の前で、覚悟を見せろ。その覚悟次第で、愛児を返してやろう」
花に狂った王は、浮竹を抱き上げて天に昇っていく。
「浮竹ーーーーーーー!」
京楽の叫び声は、どこまでも続いていた。
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