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堕天使と天使13

京楽は、その日大悪魔ヴェルゼブブに、悪魔にならないかと誘惑された。

大悪魔ヴェルゼブブは若い美しい男性で、京楽と関係をもったことが何度かあった。

京楽が、長年堕天使をしているのに疑問を抱いていた。京楽ほどの堕天使ならば、更に堕ちて悪魔になれば、強力な悪魔が生まれるだろう。

きっと、色欲の大悪魔アスモデウスには及ばないが、そこそこの色欲の悪魔になりそうなかんじであった。

「僕は、今大好きな天使がいるからね。天使が悪魔と関係をもつのは御法度。まぁ、関係をよくもってた僕が言えたぎりじゃないけど」

「だから、悪魔にならないのか。今悪魔になれば、俺の加護がつくぞ」

「いらないよ、そんなの」

「昔は俺の眷属になりたがっていたくせに」

ヴェルゼブブは笑った。

この、憎んでも憎みきれない京楽のことが、一時期心から好きだった。

でも、京楽は本能のままにふらふらといろんな種族の男女を問わずに、関係をもつ。

それを憎むことはなく、悪魔も堕天使も、存在はほぼ変わらない。

ただ、悪魔は悪魔の派閥に左右されることが多く、ヴェルゼブブは悪魔王サタンの派閥に組していた。

悪魔王サタンも、ヴェルゼブブも、元を正せば天使で、堕天使となって悪魔になった。

今や、魔界を牛耳る存在となったサタンは、天使の時は1位の天使ルシフェルと名乗って、神に愛されていた。

それを裏切り、神を傷つけた罰だと堕天使に落とされて、悪魔となった。

神も、追放して堕天使となった者が悪魔王にまでなるとは、思っていなかっただろう。

「用事はそれだけ?じゃあ、僕は浮竹のところに帰るから」

「待て。これをもっていけ」

「何?」

「浮竹というその天使を堕天使にして、共に悪魔になればいい。そのための・・・」

「いらない」

京楽は、きっぱりと断った。

「だが、このまま天使に熱を入れていれば、その天使側が黙ってはおるまい?」

「いや、意外と大丈夫。浮気したら殺すとか言われてるけど、浮竹に一筋の間は周囲は何もしてこないよ」

ヴェルゼブブは、落胆する。

「そうか。もういけ。お前の顔はしばらく見たくない」

「じゃあ、また遊びにくるからねぇ」

「だから、しばらく見たくないと言っているだろうが!」

「あはははは、じゃあねぇ」

堕天使の京楽は、悪魔と堕天使がよく遊びにくる魔界の入り口にいた。

そこで、天使時代に悪魔とよく関係を持った。

サキュバスやインキュバスが大抵だったが、中には大悪魔ヴェルゼブブのような存在もいた。

寵愛されるを嫌い、束縛を嫌い、それが今では浮竹という、こともあろうか大天使長ミカエルと人間のハーフであるセラフに夢中なのだという。

自由気ままで羨ましいとさえ思った。


「京楽、何処に行っていたんだ」

「うん?ちょっと魔界の入り口まで」

「何をしにだ。浮気か?浮気なら、右ストレートでまずは・・・」

「ちょっと、なんでまず最初に浮気を疑うの」

「フェンリルの俺が、お前に気を付けろと言っていたからな」

「フェンリルの浮竹は僕のこと苦手だからね。真に受けないでよ」

「それもそうだな」

浮竹は、パソコンに向き直って、ドイツ語の翻訳を続け出した。

「今日は何を食べたい?」

「お前」

「そうそう、僕を・・・って、ええ!?」

京楽は真っ赤になった。

冗談のつもりで言ったので、そんな反応をされた浮竹はもっと真っ赤になった。

「つ、次の依頼のことを話し合おう」

「う、うんそうだね」

お互い、ぎくしゃくしながら、次は人を襲うハーピー退治に行くことになった。

車を運転して3時間の場所に、ハーピーは出没した。

巣を作っていて、ハーピーが群れていた。

通りすがりの人を襲い、怪我をさせたり子供が二人ほどハーピーに連れ去られて、食い殺されていた。

「一掃するしかないね」

「ああ。手加減は必要ないんだろう。ヘルインフェルノ!」

穏やかな午後に、ハーピーのつんざかんばかりの悲鳴があたりに響き渡った。

飛び立って逃げようとするハーピーに、フェザースラッシュで、京楽は堕天使の翼を広げて攻撃する。

今日のフェザースラッシュには猛毒を仕込んでいたために、攻撃を浴びたハーピーは泡をふいて息絶えていく。

「あそこが巣の中心だ。ゴッドインフェルノ!」

炎の禁忌をぶつけると、ハーピーは黒こげになってみんな死んでしまった。

「なんか、むしょうに焼き鳥が食べたくなってきた」

「食べる?ハーピー、食べれるらしいよ。人間の顔の下は」

「食べない。人間の顔をもっているんだ、亜人に近いかんじがしていやだ」

「卵は全部割れたね。ヒナも死んだようだし、戻ろうか」

「ああ」

依頼主のところにいき、金貨50枚をもらい、ハーピーから抜き取った魔石を冒険者ギルドで買いとってもらうと、数が多かったので金貨10枚になった。

まずまずの収入に、少し贅沢をしようということになり、ロブスターを中心とした魚介類のメニューに、年代もののワインを開けた。

「いやぁ、ヴェルゼブブが僕を誘惑してきてね。悪魔にならないかって」

「それでお前は、わざわざヴェルゼブブに会ってきたのか」

「中途半端な返事だとしつこいからね。嫌だと、はっきり言ってきたよ」

「ああ、そうだな」

浮竹は、酔っていた。

京楽にしなだれかかり、口にしたワインを口移しで飲ませた。

「浮竹?」

「俺を食べたいと言っていただろう。今なら、いいぞ」

ごくりと唾を飲みこんで、食事が終わった後に風呂に入り、浮竹をベッドに組み敷いた。

「いいんだね?」

「いちいち、聞くな」

浮竹は赤くなった顔を手で隠していた。

「あっ」

膝を膝で割られて、敏感な場所を撫でられて、浮竹が声を漏らす。

「ふふ、もうこんなになってる」

「ばかっ」

「十四郎、好きだよ」

「俺も好きだ、春水」

体を繋げ会う時だけ、お互い下の名前で呼び合う。

「ああっ」

衣服を脱がされ、胸の先端を甘噛みされる。

そのまま手でしごかれて、浮竹は京楽の手の中でいってしまった。

「ん・・・・・」

京楽のローションにまみれた指が入ってきて、浮竹はその異物感に目を閉じる。

「いれるよ?いいかい?」

「いちいち、聞くなと言っている・・・あああああ!!」

聞いておいて嫌だと言っても、きっとやめないだろう。

いっきに引き裂かれて、浮竹はその熱量に一瞬呼吸するのを忘れた。

「あ、あああ、あああ」

京楽に深い口づけをされて、息をする。

「んう」

「気持ちいい?」

ごりごりと奥を抉ってやると、浮竹はこくこくと頷いた。

「あ、もっとお前を感じたい」

「いっぱいあげるからね。君が僕で溺れるように」

何度も前立腺をすりあげながら、京楽は浮竹の感じる場所ばかりを攻め立てた。

「ああああ!!!」

浮竹は吐精していた。

それでも京楽の勢いは止まらずに、浮竹はいきっぱなしのままさらにドライのオーガズムでいかされる。

「ひああああ、やああ!!!」

「注いであげるから、しっかり受け止めてね?」

「あ、春水」

「ふふ、僕を欲しがる十四郎の顔、好きだよ」

「あああああ!!」

熱い熱を胎の奥で受け止めて、浮竹はまたいっていた。

「ほら、まだまだ僕は元気なんだから。満足するまで、付き合ってね?」

「この色欲魔人が・・・・・」

そう言いながらも、浮竹は京楽の背に手を回す。

情事が終わり、後始末をして眠っていると、京楽の元にヴェルゼブブがやってきた。

「ちょっと、なんで人間界に来てるの!」

「お前を悪魔にしにきた」

「なんで!」

「上からの命令だ。悪魔王サタンを凌駕しうる存在が発覚した。お前は狙われている。監視下に置くためにも、悪魔に・・・・・・」

「ならないよ。僕は、悪魔にはならない」

「そうだ。京楽は悪魔なんかにはさせない」

いつの間にか起きていた京楽が、ヴェルゼブブを威嚇した。

「お前が、セラフの浮竹か。なるほど、神好みの力をもっているな」

ヴェルブブは、浮竹に近づくと、いきなりキスをしてきた。

「んあ!?」

いきなりのことで、浮竹は目が点になっていた。

「美味い魂をしている。一度食べたいな」

「僕のものだから、だめ!」

浮竹を後ろに庇い、京楽はヴェルゼブブに炎の魔法を放った。

「今すぐ悪魔になれとは言わない。だが、近いうちにまたくる」

「もう来るな!」

「そうだ、来るな!」

浮竹は、相手がヴェルゼブブだとは知らなかったのだが、高位の悪魔であることは分かった。

「京楽、まさかあの悪魔と浮気を・・・・・」

「してない、してない。それに、あの子は僕を悪魔にしたいだけで、君の魂はうまそうだから、つまみ食いしたい感覚だよ、きっと。ねぇ、僕を信じて?」

「ああ・・・・信じる」

浮竹は、素直に頷いた。

「愛してるよ、浮竹」

たとえ、この身が悪魔になろうとも。

堕天使でなくなろうとも、愛している存在は変わらない。

京楽は、いつまで自分が堕天使でいられるのか、自分でも分からなかった。



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