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堕天使と天使14

ヴァンパイアの京楽からもらった、小粒のルビーがついたネックレスは、ヴァンパイアの京楽の呪いの血がついており、そのお陰で悪魔や堕天使から魂を狙われないようにしてくれるという、優れものだった。

堕天使の京楽からつけてもらい、浮竹はそのネックレスがお気に入りだった。

「また、そのネックレスいじってるのかい」

「ヴァンパイアのお前が、俺の為に作ってくれたからな。何より、お前の手で渡されたことの意味が大きい。お前からもらったプレゼントのように思える」

「浮竹」

「ん?」

「僕は、君を裏切らないから。君の傍にずっといる。誓うよ」

「どうした、改まって」

浮竹は首を傾げた。

「君が不安になってるんじゃないかと思って」

「ああ・・・でも、大丈夫だ。お前は今俺の隣にいてくれている。俺は信じている」

浮竹は、京楽に抱きしめられていた。

「絶対に、君を一人にはしない」

「ああ、約束だ」

2人は、深い口づけを交わし合った。


「今日の依頼は・・・・悪魔王サタンの退治・・・却下だ。強すぎる」

「誰だろう、そんな依頼出したの」

「大悪魔アスタロトと書かれている」

「アスタロト・・・あの子、ここを便利屋か何かと勘違してるのかな」

「知り合いなのか」

大悪魔アスタロトは、悪魔王サタンの配下ではなく、敵対関係にあった。

「ちょっと昔ね。何度か会って会話をしたくらいだよ」

「お前のことだから、ちょっかいかけようとしたんじゃないのか」

「ぎくっ」

京楽との性的関係者に、悪魔もけっこういる。

大悪魔ヴェルゼブブのように。

「この依頼は・・・悪魔シェリネの討伐。ネクロマンサーを作り、死者を蘇らせて自分だけの王国を築こうとしている。決まりだな」

「悪魔シェリネ。聞いたことのない名前だね」

「ネクロマンサーは脅威的だ。すぐに向かうぞ」

浮竹と京楽は、魔界にやってきた。

シェリネの話を他の悪魔から聞きながら、居場所を突き止めた。

悪魔はただでは教えてくれないのだが、京楽の顔の広さのお陰で、大悪魔ヴェルゼブブのお気に入りだということで、話を聞けた。

魔界の隅に、その屋敷はあった。

すでにネクロマンサーはおり、死者の悪魔を蘇生させていた。

「セイントフェザースラッシュ」

聖なる羽の攻撃で、ネクロマンサーと召還された死者の悪魔が怯む。

そこに、京楽がもう一つの弱点である炎の禁忌を放つ。

「ゴッドインフェルノ!」

「ぎゃああああああ!!」

「うわあああああああ!!」

死者の悪魔たちは、腐った体をなくして魂となって転がった。

その魂を、浮竹が回収していく。そして、浄化させた。

「なんだお前たちは!私のネクロマンサーを退治するなんて、許さないわよ!」

「お前はネクロマンサーがどれだけ危険な存在か分かっているのか。その気になれば古の悪魔も復活させれる。もっとも、お前の手で作り出されたネクロマンサーは、そこいらの死者の悪魔を蘇らせるのに手いっぱいのようだが」

「私は、ネクロマンサーを作りまくって、死者の国を作るのよ!誰にも邪魔はさせない!」

「ホーリーノヴァ!」

「うぎゃあああ!」

浮竹の聖なる魔法で、ネクロマンサーが息絶えた。

「邪魔をしないで!あなた天使ね!その魂、喰らってくれる!」

悪魔シェリルは、浮竹の魂を食おうとした。

「ぎゃっ!」

小粒のルビーのネックレスが輝き、襲ってきたシェリルは体を半ば崩壊させかけていた。

「なんて力・・・・そのネックレス・・・原初の王の血の呪いか・・・・」

「僕の浮竹を食べようだなんて、不届き者だね。永遠に地獄を味わうといいよ。カースワールド」

京楽が、悪魔シェリルを呪いの世界に沈める。

「いやだ、死にたくない!」

「死なないよ。永遠に、苦しみ続けるだけさ」

「もっといやあああ」

「ホーリーノヴァ!」

浮竹は、いくら悪魔とはいえ永遠に苦しみ続けるのはかわいそうだと、とどめをシェリルにさした。

「どうして?浮竹、君を食べようとしたんだよ」

「だからって、死ぬこともできずに永遠に苦しむのはかわいそうだ」

「浮竹は、悪魔にも甘いね。悪魔は狡猾だから。気をつけてね」

「分かっている」

シェリルの討伐に成功して、魔石を入手する。

ちなみに、シェリル討伐の依頼者は大悪魔ヴェルゼブブであった。

ヴェルゼブブに浮竹を会せるわけにもいかず、浮竹を先に人間界に返して、京楽はヴェルゼブブの元に向かった。

「やあ、シェリルの討伐はすんだか」

「どうして、君が依頼なんて。自分で処分すれすむことでしょう?」

「悪魔の派閥争いで、無益に悪魔を殺すことは相手に敵対していると思われるからな。シェリルは悪魔王サタン様の敵対者だ」

「じゃあ、僕たちはサタンの敵対者を殺したってことになるの?」

「そうなるな。だが、天使と堕天使だ。シェリルは悪魔の中でも孤立していたから、まぁ問題はなかろう」

「今度からは、君の名の依頼は受けないからね」

京楽は、ヴェルゼブブを睨んだ。

「けちだな」

「けちでも、悪魔の争いに浮竹を巻き込みたくない」

「報酬の大金貨千枚だ」

「金には惜しまないんだね」

「金で済むことなら、苦労はしない」

ヴェルゼブブと京楽の関係はけっこう長かったために、ヴェルゼブブは京楽を利用することに疑問を感じない悪魔だった。

「悪魔になる気は、相変わらずないのか」

「ないね。浮竹がいる限り、悪魔にはならない」

「お前のことだ。天使の浮竹に手を出したら、たとえ大悪魔の私でも、噛みついてくるんだろうな」

「当たり前だよ!浮竹に手を出したら、躊躇なく殺すからね。僕は、神の元12使徒だ。悪魔を滅ぼす役目をしていた。どんな大悪魔だろうが、殺せる手段をもっている」

京楽の鳶色の瞳が、殺気を帯びる。

「その、殺せる手段が欲しいんだがな」

「君には利用されたくない。諦めるんだね」

「今回は、そうさせてもらおう」

「今回だけじゃなくて、今後もね」

「さぁ、それはどうだろうな」

ヴェルゼブブは、愉快そうに笑って、京楽を人間界に戻した。

「けっこう、長かったな。何をしていたんだ」

「ヴェルゼブブと、ちょっとね」

「浮気か!」

「うわぁ、違うって!!」

京楽がヴェルゼブブと関係をもっていたことを知っている浮竹は、本気ではないが、京楽の浮気を疑う。

「僕が愛しているのは、今は君だけだよ。ねぇ、信じて?」

抱きしめられて、キスをされて、浮竹は大人しくなった。

「分かった。信じる」

「ありがとう」

後に、冒険者ギルドに魔石を提出したら、悪魔の魔石と分かってギルドマスターに呼ばれるのであった。


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