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堕天使と天使5

祓い屋を開いて、口コミで噂が広がり、依頼がくるようになっていた。

この世界は車や電化製品があって限りなく現代に近いが、魔法があって、冒険者ギルドもあり、ダンジョンもある。

出てくるのは西洋のモンスターだけでなく、和風の妖怪、霊などもでる。

種族の人だけでなく、亜人種から精霊、悪魔や天使、神族や魔族などがいた。

今回の依頼は、化けた狐の妖狐がでて、人をかどわかわして、最終的には骨となって発見されるという、人食いの妖狐退治の依頼だった。

祓い屋とはいうが、基本的に冒険者ギルドと役割は同じで、冒険者ギルドで溢れた依頼やら、こちらのほうが報酬金が低くて済むのでといった理由で、依頼はやってくる。

浮竹と京楽は、いくつか受注した依頼のうち、妖狐事件が一番深刻だったために、それに集中することにした。

まずは、被害のあった村に車で向かう。

妖狐といった類の妖(あやかし)には、銃といった武器がきかない。

特別に力のこもった武器ならきく。一番ききやすいのは聖なる力の宿った武器か、魔法だった。

浮竹も京楽も、魔法が使えた。

浮竹は最近になって天使の大上位クラスセラフに覚醒したので、京楽に魔法の初歩から教えてもらい、すでに上級魔法まで唱えれるようになっていた。

適正は全属性。

特に聖属性と炎の魔法が強かった。

京楽もほぼ全属性だが、堕天使のせいか聖属性は使えなかった。

「ここが、依頼のあった村か・・・・・」

浮竹と京楽がやってきたのは、浮竹と京楽の住むアラン王国の隣にある、リンガル帝国の隅にある村だった。

寂れていて、人口自体も200人はいないだろう。

「すまない、依頼を受けてやってきたんだが、村長はいるだろうか」

畑仕事をしていた男性に話かけると、顔を輝かせて村長を呼びに行った。

「妖狐を退治してくれる人ですな。まっててくだしい、今村長よんできますんで」

村長は、間もなく浮竹と京楽の前に現れた。

立ちっぱなしもなんだからということで、村長の家に招かれる。

「それでですな、山の方に妖狐が住み着いて、村人をかどかわして食ってしまうんです。皆で探すんですが、数日後には骨になっていて・・・・・」

村長は涙をにじませた。

「姪っ子もやられてしまったんです。どうか、この村を助けるために、妖狐を退治してください。お金はあまりありませんが・・・金貨40枚が、出せる精一杯の額です」

「金貨40枚で十分だ。その山の方へ途中まででいいから、誰か案内役を」

浮竹の言葉に、村長は頷いて2階から娘を呼び出して、浮竹と京楽を山の妖狐のいる方角へ、案内してくれることになった。

「私からもお願いします。どうか、妖狐を退治してください」

村長の娘は、器量よしで、京楽がちょっと興味ありそうな顔をしていたので、浮竹は思い切り京楽の足を踏んづけてやった。

「痛いよ、浮竹」

「自業自得だ」

「僕は浮竹一筋だってば。ちょっと興味がわいただけで、ただそれだけだよ」

「普通、一筋なら他に興味などわかないはずだ」

浮竹の冷たい言葉に、京楽は頭をかいた。

「いや、昔千人切りの京楽って言われてたくらい、節操なかったもんだから、つい」

「千人と寝たのか!」

浮竹がびっくりする。

「うーん。700人までは数えてけど、そこからは数えてない。なので、千人をこしているのかこしていないのか、分からないね」

「最低だ」

「ああ、だから過去の話だってば。浮竹も、今の僕を見てくれるでしょ?」

「それは・・・・・」

浮竹は顔を赤くした。

「私が案内できるのはここまでです。この奥に、神社があります。妖狐はそこを塒(ねぐら)にしているらしいと・・・・」

「分かった。気をつけて、帰ってくれ」

「はい・・どうが、ご武運を」

浮竹と京楽は、まだ昼であるが、周囲を警戒しながら神社があるという道を進んでいく。

しばらくすると、その神社が見えた。

傾国の美の美しい女性が、神社の奥に入っていくのを見つけた。

「浮竹、見た?さっきの凄い美人」

「ああ。まさに人ならざる者といった風体だな」

「ああ、昔の僕なら口説いてズキューンバキューン」

台詞の途中で、浮竹がアイテムポケットから取り出したハリセンで頭を殴られた。

「ふざけてないで、行くぞ、京楽」

「うん」

絶世の美女には尻尾があり、その尻尾は9つに分かれていた。

「妖狐でも、九尾の狐か!また厄介な!」

浮竹が、まずは結界をはった。

式を飛ばして、円陣を魔法で描き、外に逃げられないようにする。

「あら、新しい獲物?村長に退治してくれとお願いされたのでしょう?そうやって、強い者をとって食うようにしているの。ちゃんと村人を襲わないって約束はしていたけど、全然獲物がこないから、村人を襲ってしまったの」

「なんだい、話を聞く限りでは、僕らは人未御供よろしく、村長に騙されたってことかな」

「ええ、そうよ」

「あの村長、戻ったらぎったんぎったんにしてやる」

珍しく本気で怒る浮竹を前に、京楽は魔法を唱える。

「ダークフレア」

「ホーリーランス」

「あははは!魔法なんて私には効かないわ!この九尾の尻尾で吸収できるのよ!だから、冒険者ギルドから派遣されてきたやつらも、返り討ちにして食ってやったの。きゃははは!」

浮竹は、式を呼び出す。

それは戦乙女のヴァルキリーだった。

「いけ!」

式のヴァルキリーは、物理攻撃をしかける。持っている聖なる槍で、九尾の妖狐の足を貫いた。

「あああ!人間ごときが!いいえ、この匂い・・天使と堕天使か!」

京楽も、式を呼び出す。

それは、3つの頭をもつケルベロスだった。

九尾の妖狐に火のブレスを浴びせる。

「なんなの、お前たち!私には魔法は効かないのに、式如きで・・・・・・」

「そう。その式如きに祓われてよ」

ケルベロスは、九尾の妖狐を文字通り爪で引き裂いた。

「いやあああああ!!!」

浮竹の式のヴァルキリーが、トドメの槍を繰り出す。

「後で、村長に謝ってもらわないとな」

「ぎゃあああ」

九尾の妖狐は断末魔をあげて、体を灰に変えていく。そして最後は小さな魔石になってしまった。

「この魔石、小さいけど魔力純度高いね。冒険者ギルドで買いとってもらえば、金貨100枚はいくと思うよ」

「命を狙われたにしては、安い値段だな」

「まぁ、そう言わないでよ。村長も必死だったんでしょ。あの村を守るために」

神社の奥には、冒険者や旅の者と思わしき荷物や衣服と一緒に、骸骨が散乱していた。

「それにしても、こいつ一体何人食ったんだろう」

「10人は食ってるんじゃないのか」

「普通、妖怪は人を食えば食うほど力があがるのに、式だけで片付けれるなんてラッキーというかなんというか」

「どのみち、魔法が効いていれば魔法で倒せただろう。九尾の妖狐というが、かつ東の極東で暴れまわって、国を崩壊させた九尾の大妖狐とはクラスが違いすぎる」

「そうだね。とりあえず、村に戻って報告して、警察呼ぼう。村人を守るためだからと、冒険者や旅人をだまして食わせた罪で逮捕されるだろうね」

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「そんな、なぜ生きて・・・・本当に、妖狐をやっつけてくれたのですか!」

「そういうそっちは、僕らを妖狐の生贄にしようとしていたね。警察呼んどいたから、大人しく捕縛されてね」

村長は、項垂れた。

「これは私の罪です。お約束通り、代金の金貨40枚はお支払いします」

「えらいものわかりがいいね?」

京楽が訝しがるが、村長も腹をくくったのだろう。

金貨40枚を報酬として手に入れて、呼んだ警察に村長を引き渡し、九尾の妖狐に冒険者をえさとして与えていたことを話して、捕縛してもらった。

「さて、この村はどうなるのかな?」

「きっと、娘が村長の後を継ぐだろう。こういう閉鎖的な村は、血統を重んじる」

「じゃあ、戻るとしますか」

浮竹と京楽は、車で冒険者ギルドにまでやってくると、九尾の妖狐が残した魔石を買い取ってもらった。

「これは、小さいですが魔力の密度が純粋に高いですね。これなら、金貨140枚の買取りになりますが、いかがいたします?」

「ああ、その値段で頼む」

「やったね。思ったより高く売れた」

「ああ、そうだな」

京楽と浮竹は、思ったよりも収入があったので、焼き肉食べ放題の店にやってくると、一人金貨5枚はらって、席につくと、高級肉を注文しまくった。

浮竹も京楽もたくさん食べたので、金貨5枚以上の分は食べただろう。

「たまには、店で食べるのもいいね。いつもは僕が調理するけど」

「お前の料理はチートだ。なぜ、あの食材でこんなものができるのかってかんじで」

「僕は100歳を超えているからね。趣味は料理。腕を磨いてたら、そこらへんのシェフ並みになっちゃった」

「まぁ、うまい飯にありつけて、俺は嬉しいが」

「よーし。明日の夕食、楽しみにしててね。ちょっとこまったものを出してあげる。帰る前に、スーパーで買い物していこっか」

「ああ」

こうして、妖狐退治は終わり、浮竹と京楽は次の退治依頼を受けるのだった。





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