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堕天使と天使2

「ねぇ、僕のパートナーになってくれない?」

京楽は、ある日そんなことを言い出した。

京楽とは、何度か体を重ね合った。同じ部屋で暮らしてる友人というには、この関係は不適切だ。恋人同士といったほうがいいのだろう。京楽は、浮竹に恋人になってくれといっているのだった。

つまりは、人生のパートナーになってほしいということだった。

「僕の人生のパートナーになってよ。名実共に君が欲しい、浮竹」

「俺は・・・・その、どっちでもいい」

体を重ねたし、相性も悪くないし、一緒に暮らしたこの半年で京楽のことが好きになっていた。ただ、浮竹は感情を外に出すのがあまり上手ではないのか、「どっちでもいい」とぶっきらぼうに言ってしまったが、本当は京楽とパートナーになりたかった。

「じゃあ、決まりね。君は今日から僕のもので、僕は今日から君のもの」

「そんな、もの扱いはやめろ」

「どうして?」

「どうしてもだ」

浮竹は、一度言い出したら聞かないことがある。

「ガブリエル母さんに会いたい。天使として覚醒した今なら、天界にも行けるだろうか?」

「行けるよ。なんなら、門を開こうか?」

京楽は、そう言って天界に通じる門を出した。

「僕は堕天使だけど、まだ悪魔にまでは落ちてないからね。門を出すことはできるんだ。ただし、僕自身は堕天使だから入れないけど」

「ちょっと、行ってくる」

「行ってらっしゃい」


天界の門をくぐると、そこは聖なる力で満ち溢れていた。

浮竹は普段着のまま、背の6枚の翼を生やせて、天界を彷徨い歩いた。

「こっちよ。こちらに、来なさい」

優しい懐かしい声がした。

そっちの方へ行くと、まだ年若い幼い天使たちが遊びまわっていた。

その中心に、ガブリエルはいた。

「久しぶりね、京楽。天使として覚醒したのね。でも、こっちの世界には戻ってこないのね?」

浮竹の育ての親である大天使ガブリエルは、少し悲しそうな顔をしていた。

「母さん、俺はあなたに感謝を、ありがとうを言いにきたんだ」

「よして。ハーフの子たちを8歳まで育てた後は、人間界に追放するようにしてきたわ。浮竹、あなたはセラフと人間のハーフだった。それでも8歳になった時、私はあなたを人間界に置き去りにした」

「それでも、ガブリエル母さんがいなかったら、俺は、いや俺を含めた天使のハーフたちは生き延びれなかっただろう」

浮竹は、可憐な少女のまま時を止めた、ガブリエルの前に座って、手を握った。

「俺を育ててくれてありがとう。俺に人の愛し方を教えてくれてありがとう」

「浮竹・・・・あら、あなた、ちょっと堕天使の匂いがするわね?これは・・・うそ、京楽のものじゃない!あなた、あの食いちからすで有名な、京楽の手にかかったの!?」

「京楽は、そんなに有名なのか?」

「京楽は、あろうことか女神にまで手を出した堕天使よ。天使はおろか、堕天使や悪魔とさえ寝る、色欲魔よ!」

「その・・・・いま、俺の家で一緒に住んでるんだが」

「悪いことは言わないから、すぐに追い出しなさい。あなたも、いずれあの堕天使の爛れた欲の騒動に巻き込まれてしまうわ」

「でも、京楽は俺に人生のパートナーになってほしいって」

ガブリエルは、ふっと意識を失った。

「母さん、母さん?」

「ああ、ごめんなさい。浮竹、あなたはセラフとしては生きないのね。そう、人間として生きるなら、京楽と一緒にいても・・・・・やっぱりだめ。別れなさい」

「それはできないんだ。もう、俺は京楽のものだから」

今度こそ、ガブリエルはショックで意識を失い、子供の天使たちに囲まれるのだった。

天界での天使の成り立ちは、世界樹の実から天使が生まれる。

天使同士の間でも子は産まれるが、出生率が低くて、普通の天使は世界樹の実から生まれた。

浮竹の場合、父がセラフで母が人間であった。

ハーフの子が生まれると、時期の遅い早いはあるが、神々は子供を没収する。

今でも、天界のどこかに父親はいて、人間世界のどこかに本当の母親もいるのだろう。

ちなみに、堕天使京楽は、元々は天使の生まれなので世界樹の実から生まれた。

素行がよくなくて、ある程度の年齢に達すると、同じ天使の少女を誘惑して、抱いた。

それは果てしなく続き、しまいには人間界に降りて、人間もそして悪魔とも寝た。

堕天する原因となったのは、女神に手を出したからだった。

浮竹は失神してしまったガブリエルに傍にあった毛布をかけると、天使と人間のハーフの幼い子供たちに、起こさないように言い聞かせて、天界を去り、元の人間界の自分の自宅に戻った。

「どうだった?」

「お前のことを言うと、即刻別れろと言われた」

「そりゃそうだろうね。僕は色欲魔だから。女神にまで手を出したって言われてたでしょ」

「ああ」

「あれが原因で、堕天使になっちゃったんだよねぇ」

京楽は、夕飯を作ってくれていた。

これまた、どこのレストランの料理ですか的なものが作られていて、デザートは苺のシャーベットだった。

「あ、俺苺は好きなんだ」

「よかった。特売日だったんだよ」

お金は、浮竹のものであったが、貯金はけっこうあったので、クレジットカードを京楽に持たせて、買い物を自由にできるようにさせた。

あと、パソコンとスマホも買い与えてやった。

「ここ数日で、もしもサキュバスが来たら、教えてね。別れをちゃんと言わずに別れた子だから、今の僕が愛している君にちょっかいをかけてくるかもしれない」

「ああ、分かった」

その日の夢の中で、ガブリエルとよく似た女性に誘惑された。

反抗しようとしたが抗えず、けれど交わることも断固拒否していると、生気だけを吸われて、目覚めた。

「ココア!何してるんだい!」

「だって、京楽が悪いのよ!あたしに愛を囁いておきながら、こんなセラフもどきと愛を交わし、おまけに人生のパートナーになるなんて!」

「ココア、君との関係は遊びだ。それを君も知っていて、関係をもったでしょ」

「それでも、あたしは京楽がいいの!京楽の生気はすごくおいしいんだから!この子の生気もおいしいけど・・・・・」

ココアと呼ばれたサキュバスは、スレンダーな体をしていたが、露出度の高い衣装を着ていた。

水着と言っても過言ではない出で立ちだった。

「京楽、この子は?」

「僕の1年前まで、よく関係をもっていたサキュバスだよ」

京楽の性生活は爛れていたと聞いていたので、そんな存在が現れても、特別浮竹は驚きはしなかった。

「京楽は、俺のものだ。帰れ」

「何よ!ちょっと顔がいいからって調子のらないでよ!」

「ココア、怒るよ!」

「何よ何よ!みんなして、まるであたしが悪いみたいじゃない。もういいわ、あたし帰る!」

ココアという名のサキュバスは、悪魔の翼を広げて魔界に戻ってしまった。

「・・・・・おいしそうな名前だった」

浮竹の言葉に、京楽が笑いだす。

「あはははは、サキュバスに生気を抜き取られたっていうのに、平気な顔してるあげくにおいしそうって・・・・・」

「何か変か?」

「ううん、君は今のままでいてね」

口づけられて、浮竹はその身を京楽に任せた。

「愛しているよ、十四郎」

「あっ」

京楽は、睦言になると下の名前で呼んできた。

「んんっ」

平らな胸をなでられて、首筋から鎖骨、胸にかけてキスマークを花のように散らしていく。

「んあっ」

唇を重ねられて、浮竹は自分から口を開いて、京楽の舌を受け入れた。

「んんっ」

京楽の手にはローションがあり、ああ、そういう行為に及ぶのだと、今更ながらに他人事のように感じていた。

「んっ」

指が入ってきて、いい場所をかすめて中を解していく。

「あああああああ!!!」

京楽は、いれる前に浮竹のものをしごいて、精液をださせた。

その快感に、頭が真っ白になる。

その間に、熱に引き裂かれた。

「んああああ!!」

ぐちゅりと音をたてて、京楽の巨大なものが入ってくる。

そんなものを受け入れる器官ではないそこは、うねって京楽を排除しようとした。

「ああ、いいね。一度中で出すよ」

「ああ、春水、春水」

「うん、僕はここにいるよ」

浮竹は、京楽の背中に爪痕を立てた。

ずぐっと音がして、最奥にまで入り込んできた京楽のものは、浮竹の中に精液を放っていた。

コンドームがあるのだが、京楽はつけたがらない。

後処理とかめんどそうだし、つけてみればいいとすすめたのだが、断固拒否された。

「ああ、やっぱり生がいい。君の中を、生で味わって精液をぶちまけている男の名前、分かるかい?」

「あ、春水・・・・・・」

「そう、正解」

京楽は、また熱を浮竹の中に放っていた。

「ひあああああ!!!」

オーガズムで、浮竹はいっていた。

「あ、あ、ああああ」

京楽は、何度も浮竹を犯し、貪った。

「もうやああああ」

浮竹がもう出すものがなくなっても、いじってきた。

「やあああ!」

最後の一滴まで、浮竹の中に注ぎ込む。

浮竹の熱が弾けるのを感じながら、浮竹は意識を失った。

気づくと、ベッドの上だった。

普通のべッドから、キングサイズのベッドに買い替えたので、京楽と2人で寝てもまだ広さが少しだけあった。

後始末はちゃんとしてくれたみたいで、シーツを変えられた布団の中で、身じろぐ。

「ん、起きたの?」

「ああ」

「まだ夜明け前だよ。もう一度、寝て」

「分かった」

「愛してるよ、十四郎。僕の人生のパートナー」

「俺も愛してる、春水」

浮竹は、また微睡みの中に沈んでいく。

夢を見ていた。

名前も知らぬ父親が出てくる夢だった。噂では、セラフの中でもかなりの高位の身分だそうで、大天使であるガブリエルにも匹敵するとかしないとか。

しょせん夢は夢。

それでも、夢の中では父と本当の母と過ごす夢だった。

幸せだった。

だが、神に邪魔された。

ハーフの子として、ガブリエルに託された。

顔もあまり知らぬ本当の父と母より、育ての親であったガブリエルのほうが、数倍愛しいと感じるのだった。


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