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変わる想い

「ルキア!」

「どうしたのだ、一護」

「いや・・・寒くないか?」

もう、10月の半ばである。相変わらずの半袖のワンピース姿に、秋用のコートを着ていた一護が、それを脱いでルキアの肩にかけた。

「別にいうほど寒くはないが・・・・・」

コートを脱ごうとするルキアに、一護が言う。

「風邪ひかれちゃ困るし、着てろ」

「だが、貴様が寒いのではないか?」

「いいんだよ、俺は。秋用の服着てるしな」

「ふむ・・・・」

少し思案するルキア。

「よし、腕を組もう。密着していれば、寒さも少しは和らぐであろう」

ルキアは、一護の腕に体を寄せた。

ふわりとシャンプーの匂いがして、動悸が高鳴る。

柔らかい体が、隣にある。むにゅっとした感触がして、何かと思えば、ルキアの胸が腕にあたっていた。

「おいルキア、胸あたってるぞ!」

「ななななな、たわけ、貴様!」

ぽかぽかと殴ってくるルキアの攻撃を受けながら、思ったより柔らかかったと感触を思い出す。

「このムッツリスケベが!」

「のあっ」

ルキアが、蹴りを一護の背中に決めた。

「お前な~~~」

「なんだ、やるのか!」

「ほらいくぞ。スーパーしまっちまう」

もう夜も大分ふけてきた。

夕飯の材料が足りなくて、急きょ二人はスーパーにいくことになった。夕飯の足りない材料の他にお菓子やらジュースを買い込んで、帰宅した。

「お兄ちゃーん!」

遊子が、材料をうけとって忙しく料理をする。ただそれを、キッチンで待っていた。

「1個だけだぞ。夕飯の前だからな」

アイスのクーリッシュを、冷蔵庫から取り出すとルキアに与えた。

ルキアはアイスが好きだ。

夏にはたくさん食べていた。冬でもけっこう食べるらしい。

「おお、パイン味か・・・・・」

それを食べていると、途中で夕飯ができあがり、食べかけのまま冷凍庫に直した。

夕飯はカレーだった。カレーのルーの在庫がなくて、夕飯ができずじまいだったのだ。

遊子は、小学生だけれど料理の腕はそこらの主婦よりある。

「うむ、美味だ」

「ほんと、ルキアちゃん」

「あ、おいしいですわ~。さすが遊子ちゃん」

ルキアは地を出しそうになって、すかさず猫を被った。

おかわりまでして、その後にジュースとお菓子を食べた。

一護とルキアは、一護の部屋に戻った。

「ああこれ・・・・・・まぁいいか」

ルキアの食べかけのパインのアイスを口にする。それを見たルキアが真っ赤になった。

「き、貴様それは私のアイス」

「別にいいだろ。残りあんまなかったし」

「かかかかか、関節キッスなのだぞ!」

「なんだよ、それくらい。今更だろ?」

付き合っていないが、ハグやキスはする仲だ。

「それより、そんなに食ってよく太らねーな」

「カロリーをとった分は動いているからな」

一護が、ルキアの腰を掴んだ。

「ななななな!」

「俺としては、もう少し肉があるほうが好みかな」

「このたわけが!」

一護の顔面に蹴りを入れた。

「いてぇ!」

「貴様がセクハラをするからだ!」

「これくらいで、セクハラになるのか?」

ルキアを、壁においつめる。壁に手をあてると、ベッドの上でルキアは縮こまった。

その細い手をとって抱き寄せる。

「一護・・・・・・・」

「・・・・・好きだ」

「え」

紫紺の瞳が見開かれる。

「ずっと前から、好きだった・・・・・」

「クーリッシュがか?」

「そうだ・・・・・って違う!お前だよ!俺が好きなのはルキア、お前だ」

「わ、私は・・・・・」

ルキアはドクドクと高鳴る鼓動と、あがっていく体温を感じていた。

「別に、返事はいつでもいいから」

「一護、貴様ずるいぞ!これでは、貴様のことを異性として見てしまうではないか!」

「そう見てほしいから、告白したんだよ」

「私は・・・・・・・」

ルキアは死神で、一護は人間。

いつかこの現世を去らねばならない。

それでも、求めていいたのだろうか?この狂おしいまでの感情の正体に、ルキアも気づいていた。気づいて、知らぬふりをしていた。

そのまま夜になった。

いつものように、ルキアは一護のベッドで一緒に眠った。

寝れない。

一護は、ルキアを抱くような恰好で眠っていた。

一護はずるい。先に想いを告げてしまうなんて。

「はぁ・・・・」

大きなため息をついて、紫紺の瞳を瞬かせる。

「私も、貴様のことを好いておるよ・・・・・一護」

眠っている一護に告白する。

ずるいから、答えは出してやらないと思っていた。

曖昧な関係のままでいいと思うのは、罪なのだろうか?

告白して相思相愛になったら、別れの時が辛すぎる。

だから、身のうちに潜む思いを押し殺してきた。でも、あふれ出しそうだ。

「好きだ、一護」

「ん・・・ルキア?」

「貴様が好きだ一護」

ポロポロと、アメジストの瞳から涙を流した。

「なんで泣いてんだよ」

「いつか、貴様を置いていく」

「俺はそれでも、ルキアお前が好きだ」

「一護・・・・」

キスをした。はじめてのディープキスだ。

「は・・んう」

「会いにこいよ。現世を去っても。いつでも、いつまでも待ってるから」

例え別れが長いことになろうとも。

「今は伝令神機もあるし、何も一切連絡がとれないわけじゃない」

「そうだな・・・・・・」

またキスをした。

そして、そのまま二人は眠った。

多分、関係は今まで通り。でも、お互いが好きだと分かったので、もっと深い仲になるかもしれない。

想いをつげあっただけで、付き合うなどの約束もしなかった。

次の日からの日常も、変わらない。

ただ、お互いが好きだという意思をもっている。

でも、それでいいのだ。

急激に変わらなくても。

ゆっくりと、変わっていけばいい。

二人はまだ若い。

時間はまだたくさんあるのだ。










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