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奴隷竜とSランク冒険者2

「浮竹、そっちに行ったよ!」

「わかってる!アイシクルブレス!」

京楽はSランク冒険者だ。でも、戦闘が長引けば怪我もするし、Aランク以上推奨のダンジョンでは苦戦することもある。

昔はパーティーを組んでいたのだが、同じパーティーに所属していた女性と色恋沙汰になり、その女性は隠していたのだが、パーティーのリーダーと婚約していて、Sランクのパーティーを追放された過去をもつ。

何度かAランクの冒険者に交じって冒険をしていたが、戦力差がでかくて、ソロに移行することになって早3年。

今は、元奴隷の浮竹をパーティーに入れて、テイムしたドラゴン扱いだが、二人で冒険をしていた。

「京楽、こいつら氷に強い。俺は炎を出せないから、炎の魔法で焼き払ってくれ」

「はいよ!バーストロンド!」

「ぎゅいいいいいいい」

「ぎいいいいいい」

昆虫型の氷属性のモンスタ―たちは、断末魔の悲鳴をあげた。

今いる場所は、Sランクダンジョンの22階層。

草原地帯のダンジョンだった。

前の階層は森林地帯だった。

次の階層は、砂漠になる。

体力を温存するために、一度この22階層で食事と睡眠をとっておく必要があった。

「サンダーボルト!」

浮竹は、魔法も使う。

氷属性のムーンホワイトドラゴンなので、炎系の魔法は使えないが、他の氷、風、水、地、雷、闇、光の魔法は使えた。一番得意とするのは、氷の魔法だ。

アイシクルブレスという、人型でも氷のブレスを吐けた。

京楽と生活するようになって2週間が経っていた。

京楽の戦いのサポートをして、ダンジョンに挑み、モンスターを討伐して素材をアイテムポケットにしまいこみ、ボスを倒してお宝をゲットする。

そんな毎日が続いていた。

「お、お宝だ。何々・・・・氷属性の魔法の威力をあげるピアス。いいね。浮竹、つけてごらん」

「でも、こんなマジックアイテム、高いだろう」

「マジックアイテムなんて、高ランクダンジョンにはいっぱい出るから、気にしないでいいよ」

京楽は、浮竹にピアス穴をあけて、氷結のピアスというものをつけてしまった。

「う、耳が痛い」

「そりゃ、穴あけたからね」

「俺は別によかったのに」

「君の戦力がUPすると、僕も助かるからね」

「むう」

今日は、満月だ。

不満そうな顔と裏腹に、半竜人化した浮竹は尻尾がゆらゆら揺れていた。

本当は、嬉しいのだ。

それを感情に表せないでいるのだが、京楽は分かっているのかいないのか、とにかく浮竹を甘やかす。

22階層のモンスターを一掃して、セーブポイントでアイテムポケットから取り出したテントをはり、浮竹と京楽は少し早めの夕食をとって、寝ることにした。

「じゃあおやすみ、浮竹」

隣のテントに移動しようとする京楽の、服の裾を浮竹が掴む。

「ん?どうしたの」

「今日は、満月だ。一人は、嫌だ・・・・・・・」

満月の夜は、孤高なるドラゴンでも孤独に耐えかねて、人里に降りてきたりする。

「分かった分かった。一緒に寝よう?」

ゆらゆらと、浮竹の尻尾が揺れる。

「仕方ないから、一緒に寝てやる!」

「はいはい」

言葉とは裏腹に嬉し気に揺れるドラゴンの尻尾を見て、京楽はクスっと笑った。

「んー京楽、それはミノタウロスのシャトーブリアンのステーキ・・・独り占めは・・・」

「なんの夢を、見ているんだが」

むにゃむにゃという浮竹の頭を、京楽は愛し気に撫でる。

冒険者ギルドで浮竹を見せたが、ムーンホワイトドラゴンだという事実は、公表しないことにした。

希少すぎるのだ。

奴隷として、捕まって売られたら大変なので、ただのホワイトドラゴンということにした。

ホワイトドラゴンでも珍しい。

浮竹を買ったことを知ったギルドのギルドマスターは、京楽のパートナーとの位置にいることを許してくれて、テイムされたモンスター扱いではなく、一人の人のしての扱いをしてくれた。

それを他の冒険者にも強制したが、異議を申し立てる者はいなかった。

ドラゴンをテイムするテイマーがいないわけではないのだ。人型をとるモンスターの場合、基本モンスター扱いではなく、人扱いになる。

睡眠を十分にとって、23階層に挑む。

砂漠地帯は暑く、天にある太陽がじりじりと体力を奪っていく。

「アイシクルフラワー・・・・・」

暑さに耐えかねた浮竹が、クーラーのような魔法を使った。

「ああ、涼しい。生き返るよ」

「暑いのは、苦手だ」

陶器の器に氷をいれて、水を入れて溶かして飲んだ。

「水、普通は貴重だけど僕や君みたいに、水魔法を使える冒険者は特に水を所持する必要性がないからね」

「早く、砂漠地帯の23階層を抜けよう」

「そうだね」

途中で狂暴化したビッグサンドワームに襲われることはあったが、浮竹のアイシクルブレスで氷像と化してしまい、氷を解かされる前に京楽が粉々にした。

24階層。

ボスのフロアの、最終階層であった。

いたのは、闇属性のヒュドラ。

「ホワイトレイ!」

浮竹が光の魔法を放つと、ヒュドラの頭が一つもげた。

「浮竹、君って奴隷だったから戦闘経験はないっていってたけど、覚えてる魔法の数も多いし、何より強いね!」

「奴隷の頃、することがなかったので、魔法の本を読み漁っていた」

「いいことだね!」

「よくない!奴隷だったんだぞ!」

「うん、奴隷だったことはいいことじゃないけど、本を読んで知識をためこむことはいいことだよ。特にドラゴンはブレスの他に多数の魔法を操るから」

「俺もドラゴンだ!固有スキル、「凍れる者」をもっている。氷結系の魔法は、誰にも引けをとらない。アイシクルブレス!!!」

「ぎゅるるるるるる!!!」

闇のヒュドラは、ダークブレスを吐くが、それをアイシクルブレスが相殺する。

「こっちだよ、ヒュドラ。浮竹ばかり相手してないで、僕も相手してよ!」

京楽は、剣でヒュドラの8つあった首のうち、2つを斬り捨てた。

浮竹がすでに1つの頭を破壊しているので、残ってる頭は5つ。

それぞれ、違う魔法の詠唱に入る。

「合唱魔法か!完成する前に、叩くよ!」

「分かっている!アイシクルブレス!!!」

「ヘルインフェルノ!」

魔法で攻撃して、詠唱が止まったところを、京楽の剣が5つの首を切り落とし、ドラゴンの姿になった浮竹が、白い羽毛を血で汚しながらヒュドラの心臓部分に噛みついた。

「ぎゃるるるるーーーーーああああーーーーー」

断末魔の悲鳴をあげて、ヒュドラが倒れる。

浮竹は、人の姿に戻ると、べっとりとヒュドラの血にまみれていた。

「ああ、せっかくの美貌がだいなしだ。キュアクリーン」

京楽が、浄化の魔法で浮竹のヒュドラの血を落とす。

「どうした」

「ドラゴンの姿に戻る時は、事前に言ってね。危うく、剣で傷つけるところだった。この剣、魔剣でドラゴンスレイヤーの剣っていわれてて、ドラゴン系の血肉をすするのが大好きだから」

「う、俺を食うなよ!」

「大丈夫。ちゃんと持ち主の意思を反映してくれるから」

「クイタイ。レアなドラゴンの血肉、クイタイ」

「ちょ、しゃべった!」

「ああ、うん。意思があるからね。だめだぞ、ドラゴンスレイヤー。この子は僕のもの。僕のものに手を出したら、たとえ僕の愛用する魔剣とはいえ・・・・・」

ぞっとするほどに冷たい顔で、京楽は魔剣に囁やいた。

「ワカッタ。ワカッタからおろうとスルナ」

魔剣はカタカタと震えた。

Sランンクダンジョンを踏破して、戦利品をもって冒険者ギルドに戻った。

「おお、十四郎に春水、無事であったか」

ギルドマスター通称山じぃといって、引退した元Sランク冒険者で、ドラゴンスレイヤーの異名も持っていた。

「これ、今回の獲物。Sランクダンジョンを踏破したよ。ボスはヒュドラだった。魔石は大きいから、けっこう値段すると思うよ」

「ヒュドラ!それを二人だけで倒してしまうとはのう」

Sランクダンジョンで手に入れたマジックアイテムや金銀財宝をひきとってもらい、白金貨2千枚をもらった。

「白金貨が2千枚・・・・・」

ちなみに、浮竹の奴隷の頃の値段は白金貨20万枚だ。

「やっぱ冒険者稼業はもうかるね」

「そ、そうだな」

報酬金を手に、高級宿に戻ると、浮竹はそわそわしていた。

「どうしたの?」

「白金貨2千枚だぞ!とられたらどうする」

「僕が奪うバカはいないよ。そんなことしようとしたら、容赦なく殺すからね。過去にいたけど、殺したし」

「京楽・・・・」

「ん?」

「ダンジョン、それなりに楽しかった。また行こう」

浮竹は、京楽の頬にキスをして、ベッドにいくと布団にくるまってしまった。

「ふふ。君なりの精一杯の愛情表現ってところかな」

「う、うるさい」

布団をかぶってごぞごそしながら、浮竹は眠気が訪れるをゆっくりと待つのであった。

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