奴隷竜とSランク冒険者
そのドラゴンは、鱗ではなく白い羽毛を体表にもつ。
瞳の色は深い緑。
卵の頃、親元から盗まれて奴隷屋に売られて、生まれた時から奴隷だった。
人の姿をとれたが、それを知られるのが怖くていつも檻の中で子ドラゴンの姿でいた。
見せ物小屋に貸し出されて、値段が高いせいでそのドラゴンは奴隷ではあるがなかなか売れなかった。
しまいには、はく製にしようという意見まででたので、そのドラゴンは仕方なく人の姿を見せた。
更に値段はあがった。
ドラゴンでも人型をとれるのは真竜のみ。ドラゴンの中のドラゴン。
人の姿をしている時でもとれない、隷属の奴隷の首輪をいつか外して、自由になるのが夢だった。
名は、浮竹十四郎。
卵の頃に親が名付けた名前だが、親の顔は知らないが名前だけは覚えていた。
卵の頃でも、声は聞こえていた。
「ねぇ、君、人の姿をとれるんだよね?」
巨大な檻の中にとじこめられていた浮竹の前に、高ランクらしい冒険者の青年が現れた。
「僕は京楽春水。君を買ったんだ。今日から、君のご主人様ってわけ。名前は浮竹十四郎であってるよね。ねぇ、ドラゴンの姿も綺麗だけど、人の姿になって?」
隷属の首輪が、反応する。
京楽を主として、その命令に応えるように首を絞めつけてくる。
「わかった・・・・・」
浮竹は、人の姿になった。
虹色の不思議な衣服をまとった、長い白髪の緑の瞳をした青年の姿をとる。
「ああ、人の姿でも綺麗なんだね」
京楽と名乗った青年は、うっとりして浮竹を檻から出した。
「もう、自由だよ。といっても、僕の奴隷になるんだけどね」
「それは、自由とは言わない」
「うん、そうだね。でも、隷属の首輪は・・・・・」
京楽は、浮竹の隷属の首輪を外してしまった。
「京楽?」
「隷属の首輪は君には似合わない。ドラゴンなのに首輪なんておかしい。人の姿を取っている時も、僕の命令に従うように首を絞めつけてくるんでしょ。痛い思いをしてほしくない」
浮竹は、目を瞬かせた。
今逃げれば、きっと京楽は追ってきて、無理やり力ずくで従わせるのだろうか。それとも、声をあけて帰ってきてくれというのだろうか。
「ねぇ、今度はまたドラゴンの姿になって」
「どうしてだ」
「白いドラゴンを見るのも初めてだけど、鱗じゃなしに羽毛を持つドラゴンなんて初めて見た。
背中に乗って、空を飛んでみたい。ねぇ、いいでしょ?」
「隷属の首輪を外して、俺が逃げないと思っているのか?」
「うん。君は、そんなことしない子だ。自由になったところで、行き場所もなくのたれ死ぬだけだよ」
実際その通りなので、浮竹は大人しく自分の新しい主となった京楽を背に乗せて、ドラゴンの姿になって羽ばたいた。
「うわぁ、高いなぁ」
「しっかりつかまっておけ」
丘をこえて、街をぐるりと一回りして帰ってくる。
「君を買うのに、Sランク冒険者稼業でためたお金をほとんど全部使っちゃったけど、いい買い物ができたよ。僕は君の主だけれど、解放奴隷のような存在だ。気楽に京楽とよんでね」
「ああ・・・・・・」
浮竹は話そうか迷った。
満月の夜は竜化して、竜の羽毛の翼に角、尻尾をもつ半竜人の姿になれることを。
半竜人になれるドラゴンは、真竜の中でも僅かしかいない。
「京楽、俺は、満月になると・・・・・・」
「ああ、半竜人化するんでしょ。僕はSランク冒険者だよ。君と同じ真竜を何度か見てきたし、屠ったりもしたよ」
「ドラゴンスレイヤー・・・・・」
竜殺しの英雄は、ドラゴンスレイヤーと呼ばれる。
それは、浮竹にとって恐怖の存在だ。
「ああ、意味もなくドラゴンを討伐したりしないから。安心して。君を殺すつもりもない」
「どうして、俺を、買った・・・・・」
「だって、白い羽毛をもつ希少種の中の希少種ムーンホワイトドラゴンだよ!本でしか見たことがない!実物が売ってるなんて、買うしかないでしょ!」
勢いよくまくしたてられて、浮竹は半歩下がる。
「あ、ああ・・・・・」
「ああ、綺麗だ。ムーンホワイトドラゴンを手に入れたと知ったら、ギルドの奴らどんな顔をするだろう」
くすくすと、京楽は笑う。
この高位ランクの冒険者は、ただ自分の欲が赴くままに浮竹を買ったのだ。
それが、少し哀しくはあったが、解放奴隷となり、偽りであるが自由を手に入れた。
「京楽、春水。ムーンホワイトドラゴン、浮竹十四郎の名にかけて、汝を主と認める」
浮竹は親指を噛み切って血を流すと、京楽と契約を交わした。
主従の契約であった。
「僕のこと、ご主人様とか呼ばずに、普通に京楽ってよんでね」
「ああ、わかった。京楽、腹がすいた」
ぐ~と腹をならす浮竹に、京楽は笑って、居酒屋に連れていく。
「おや、そんな美人どこでひっかけてきたんだい」
居酒屋の女将が、浮竹の姿を見て驚く。
「ああ、僕のパートナーみたいな存在。契約してね。実はドラゴンなんだ」
「はいはい。ドラゴンスレイヤーだからって、竜が人に従うはずないでしょ。もっちと面白い冗談にしておくれ」
「冗談じゃないのに・・・・・・」
がっくりと項垂れる京楽に、浮竹は酒をすすめた。
「飲んで、気を紛らわせ」
「君は酒は飲んだことはある?」
「ない」
「じゃあ、君はカクテルを。女将さん、この子に甘いカクテルあげて」
「まーた、酔わせて食べるつもりでしょ」
「意地の悪いこと言わないでよ」
京楽が苦笑する。
「今まで、何人の女の子があんたにひっかかったことか。まあ、本人たちも悪い気はしていなかったようだし、別にいいけれどね。この子は・・・・あれ、よく見ると男の子かい?」
「そうだよ」
「俺は男だ。どこからどう見ても、男だろう」
中性的な容姿と服装と長い白髪のせいで、女性に間違われていた。
「京楽、あんた趣味変わった?」
「うーん。まぁ、いろいろあってね」
「俺は確かに京楽のものだが・・・・」
「もう手を出したのかい!」
「いや、違うよ。奴隷だったのを、買ったんだ」
「おやまぁ、かわいそうに。若いのに、奴隷だなんて。今日はあたしがステーキをおごってあげるよ。京楽に買われてよかったわね。こいつ、見かけはちゃらんぽらんだけど、けっこう誠実で一途な男だから。あたしが保証するよ」
女将に好き勝手いわれて、Sランク冒険者の京楽は酒を飲みながら、浮竹にも酒をすすめる。
「酔っても何もしないから、飲んでごらん。甘くておいしいよ」
浮竹は、おそるおそる綺麗なピンク色に光るカクテルを一口飲んだ。
「甘い!おいしい!」
「おかわりしたかったら、女将さんに注文するといい」
「もっと飲みたい」
「はいはい。この子、名前は?」
「俺は浮竹十四郎」
「十四郎ちゃんね。春水坊のお気に入りかい。パートナーってことは、同じSランク冒険者としてやっていくんだろうから、がんばってねぇ」
女将は、次の客のために料理を作りにいった。
「俺は・・・・その、Sランク冒険者になるのか?」
「うーん、正確にはちょっと違うねぇ。君は僕がテイムしたモンスターって扱いだ。一緒に戦うけど、冒険者登録とかはいらないよ。ただ、ギルドではじめ、いろいろ説明を受けてもらうけど」
「めんどくさい・・・でも、お前を主と認めた。仕方ないから、その説明は受けよう」
浮竹は何杯かカクテルを飲んで、眠ってしまった。
京楽は、浮竹をお姫様抱っこして、いつも泊まっている高級宿に戻る。
「ムーンホワイトドラゴン・・・・ああ、僕のものだ。君は、僕のものだ・・・・」
京楽は、眠る浮竹の唇に唇をそっと重ねて、浮竹と同じベッドで眠りにつくのだった。
瞳の色は深い緑。
卵の頃、親元から盗まれて奴隷屋に売られて、生まれた時から奴隷だった。
人の姿をとれたが、それを知られるのが怖くていつも檻の中で子ドラゴンの姿でいた。
見せ物小屋に貸し出されて、値段が高いせいでそのドラゴンは奴隷ではあるがなかなか売れなかった。
しまいには、はく製にしようという意見まででたので、そのドラゴンは仕方なく人の姿を見せた。
更に値段はあがった。
ドラゴンでも人型をとれるのは真竜のみ。ドラゴンの中のドラゴン。
人の姿をしている時でもとれない、隷属の奴隷の首輪をいつか外して、自由になるのが夢だった。
名は、浮竹十四郎。
卵の頃に親が名付けた名前だが、親の顔は知らないが名前だけは覚えていた。
卵の頃でも、声は聞こえていた。
「ねぇ、君、人の姿をとれるんだよね?」
巨大な檻の中にとじこめられていた浮竹の前に、高ランクらしい冒険者の青年が現れた。
「僕は京楽春水。君を買ったんだ。今日から、君のご主人様ってわけ。名前は浮竹十四郎であってるよね。ねぇ、ドラゴンの姿も綺麗だけど、人の姿になって?」
隷属の首輪が、反応する。
京楽を主として、その命令に応えるように首を絞めつけてくる。
「わかった・・・・・」
浮竹は、人の姿になった。
虹色の不思議な衣服をまとった、長い白髪の緑の瞳をした青年の姿をとる。
「ああ、人の姿でも綺麗なんだね」
京楽と名乗った青年は、うっとりして浮竹を檻から出した。
「もう、自由だよ。といっても、僕の奴隷になるんだけどね」
「それは、自由とは言わない」
「うん、そうだね。でも、隷属の首輪は・・・・・」
京楽は、浮竹の隷属の首輪を外してしまった。
「京楽?」
「隷属の首輪は君には似合わない。ドラゴンなのに首輪なんておかしい。人の姿を取っている時も、僕の命令に従うように首を絞めつけてくるんでしょ。痛い思いをしてほしくない」
浮竹は、目を瞬かせた。
今逃げれば、きっと京楽は追ってきて、無理やり力ずくで従わせるのだろうか。それとも、声をあけて帰ってきてくれというのだろうか。
「ねぇ、今度はまたドラゴンの姿になって」
「どうしてだ」
「白いドラゴンを見るのも初めてだけど、鱗じゃなしに羽毛を持つドラゴンなんて初めて見た。
背中に乗って、空を飛んでみたい。ねぇ、いいでしょ?」
「隷属の首輪を外して、俺が逃げないと思っているのか?」
「うん。君は、そんなことしない子だ。自由になったところで、行き場所もなくのたれ死ぬだけだよ」
実際その通りなので、浮竹は大人しく自分の新しい主となった京楽を背に乗せて、ドラゴンの姿になって羽ばたいた。
「うわぁ、高いなぁ」
「しっかりつかまっておけ」
丘をこえて、街をぐるりと一回りして帰ってくる。
「君を買うのに、Sランク冒険者稼業でためたお金をほとんど全部使っちゃったけど、いい買い物ができたよ。僕は君の主だけれど、解放奴隷のような存在だ。気楽に京楽とよんでね」
「ああ・・・・・・」
浮竹は話そうか迷った。
満月の夜は竜化して、竜の羽毛の翼に角、尻尾をもつ半竜人の姿になれることを。
半竜人になれるドラゴンは、真竜の中でも僅かしかいない。
「京楽、俺は、満月になると・・・・・・」
「ああ、半竜人化するんでしょ。僕はSランク冒険者だよ。君と同じ真竜を何度か見てきたし、屠ったりもしたよ」
「ドラゴンスレイヤー・・・・・」
竜殺しの英雄は、ドラゴンスレイヤーと呼ばれる。
それは、浮竹にとって恐怖の存在だ。
「ああ、意味もなくドラゴンを討伐したりしないから。安心して。君を殺すつもりもない」
「どうして、俺を、買った・・・・・」
「だって、白い羽毛をもつ希少種の中の希少種ムーンホワイトドラゴンだよ!本でしか見たことがない!実物が売ってるなんて、買うしかないでしょ!」
勢いよくまくしたてられて、浮竹は半歩下がる。
「あ、ああ・・・・・」
「ああ、綺麗だ。ムーンホワイトドラゴンを手に入れたと知ったら、ギルドの奴らどんな顔をするだろう」
くすくすと、京楽は笑う。
この高位ランクの冒険者は、ただ自分の欲が赴くままに浮竹を買ったのだ。
それが、少し哀しくはあったが、解放奴隷となり、偽りであるが自由を手に入れた。
「京楽、春水。ムーンホワイトドラゴン、浮竹十四郎の名にかけて、汝を主と認める」
浮竹は親指を噛み切って血を流すと、京楽と契約を交わした。
主従の契約であった。
「僕のこと、ご主人様とか呼ばずに、普通に京楽ってよんでね」
「ああ、わかった。京楽、腹がすいた」
ぐ~と腹をならす浮竹に、京楽は笑って、居酒屋に連れていく。
「おや、そんな美人どこでひっかけてきたんだい」
居酒屋の女将が、浮竹の姿を見て驚く。
「ああ、僕のパートナーみたいな存在。契約してね。実はドラゴンなんだ」
「はいはい。ドラゴンスレイヤーだからって、竜が人に従うはずないでしょ。もっちと面白い冗談にしておくれ」
「冗談じゃないのに・・・・・・」
がっくりと項垂れる京楽に、浮竹は酒をすすめた。
「飲んで、気を紛らわせ」
「君は酒は飲んだことはある?」
「ない」
「じゃあ、君はカクテルを。女将さん、この子に甘いカクテルあげて」
「まーた、酔わせて食べるつもりでしょ」
「意地の悪いこと言わないでよ」
京楽が苦笑する。
「今まで、何人の女の子があんたにひっかかったことか。まあ、本人たちも悪い気はしていなかったようだし、別にいいけれどね。この子は・・・・あれ、よく見ると男の子かい?」
「そうだよ」
「俺は男だ。どこからどう見ても、男だろう」
中性的な容姿と服装と長い白髪のせいで、女性に間違われていた。
「京楽、あんた趣味変わった?」
「うーん。まぁ、いろいろあってね」
「俺は確かに京楽のものだが・・・・」
「もう手を出したのかい!」
「いや、違うよ。奴隷だったのを、買ったんだ」
「おやまぁ、かわいそうに。若いのに、奴隷だなんて。今日はあたしがステーキをおごってあげるよ。京楽に買われてよかったわね。こいつ、見かけはちゃらんぽらんだけど、けっこう誠実で一途な男だから。あたしが保証するよ」
女将に好き勝手いわれて、Sランク冒険者の京楽は酒を飲みながら、浮竹にも酒をすすめる。
「酔っても何もしないから、飲んでごらん。甘くておいしいよ」
浮竹は、おそるおそる綺麗なピンク色に光るカクテルを一口飲んだ。
「甘い!おいしい!」
「おかわりしたかったら、女将さんに注文するといい」
「もっと飲みたい」
「はいはい。この子、名前は?」
「俺は浮竹十四郎」
「十四郎ちゃんね。春水坊のお気に入りかい。パートナーってことは、同じSランク冒険者としてやっていくんだろうから、がんばってねぇ」
女将は、次の客のために料理を作りにいった。
「俺は・・・・その、Sランク冒険者になるのか?」
「うーん、正確にはちょっと違うねぇ。君は僕がテイムしたモンスターって扱いだ。一緒に戦うけど、冒険者登録とかはいらないよ。ただ、ギルドではじめ、いろいろ説明を受けてもらうけど」
「めんどくさい・・・でも、お前を主と認めた。仕方ないから、その説明は受けよう」
浮竹は何杯かカクテルを飲んで、眠ってしまった。
京楽は、浮竹をお姫様抱っこして、いつも泊まっている高級宿に戻る。
「ムーンホワイトドラゴン・・・・ああ、僕のものだ。君は、僕のものだ・・・・」
京楽は、眠る浮竹の唇に唇をそっと重ねて、浮竹と同じベッドで眠りにつくのだった。
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