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奴隷竜とSランク冒険者19

「白哉に見合い話がきているのを、台無しにしてほしい?」

浮竹が、ルキアの言葉に首を傾げた。

「そうなのです。兄様に見合いの話がきているんですが、隣国の王族の姫君で・・・・こちら側からお断りするのが無理そうなので、是非京楽殿と浮竹殿でお見合いをめちゃくちゃにしてほしいのです」

「ねぇ、それしたら僕らが隣国に睨まれない?」

「大丈夫です!兄様が、脅しをかけるはずなので」

「はぁ・・・・・まぁいいけど、依頼料はもらうよ?」

「京楽、知り合いなんだから金をとらなくてもいいだろう」

「こっちは商売なんだよ。浮竹、金はもらうべし」

「ふむ」


そうして、浮竹と京楽は、白哉のお見合いを無茶苦茶にするべく、行動を開始した。

まず、白哉にめちゃめちゃださい服を着させて、お見合いに挑ませた。

でも、隣国の姫は。

「変わったファッションですね。とてもお似合いですわ」

と言って、幻滅しない。

白哉の凛と整った美貌は、男にしておくのは勿体ないほどで、ださい服を着させても、佇まいや所作で上流貴族の品格が滲みでる。

次に浮竹と京楽がとった行動は、薄めたモレ草を姫君に盛った。

「おほほほほ、ちょっとお花摘みに」

そう言って、1回だけトイレにいっただけで、進歩なし。

「おかしい。モレ草は薄めたが、トイレから出れるはずがない」

「あの姫君、もしかして毒とかに強いのかも」

浮竹と京楽は、お見合いの席の近くでこそこそとやりとりをする。

次に二人がとった行動は、王国の騎士団長である四楓院夜一を巻き込んでの、すでに恋人がいる作戦だった。

「ほう、お主、わしというものがありながら、見合いをするとは何事じゃ」

「あの、こちらの方は?」

「四楓院夜一。私の知り合いだ」

「お主、見合いを成功させたくないのじゃろう!なぜに恋人と言わぬ!」

夜一が白哉のそっけない態度にきれて、本当のことを言ってしまい、夜一は機嫌を損ねて早々に退場してしまった。

こそこそと、浮竹と京楽が会話する。

「なあ、白哉は本当にこの見合いを不成功にさせたいのか?」

「そんなの、僕が知りたいよ」

「さっきから、何をしているのかと思えば、兄らか」

白哉に見つかり、素直に義妹のルキアが、お見合いをぶち壊してほしいと依頼をしてきたと白状する。

「心配をかけなくとも、見合いは断る。姫、私はこのムーンホワイトドラゴンに命を握られている」

「え、どういうことですの」

「私と結婚すると、竜の厄災が末代まで続く」

浮竹は、外に皆を出すと竜化してムーンホワイトドラゴンになった。

「ひっ、ド、ドラゴン!」

姫君は、失神寸前であった。

「このドラゴンに呪いをかけられているのだ。結婚すると、体に鱗がはえてきて、いずれドラゴンのような体になる」

白哉の落ち着いたものいいと、いつもの服装に着替えての凛とした口調に、姫君は顔を青くする。

「ほら、見合いをするから、姫君の腕にも鱗が・・・・・」

「きゃああああああ、いやあああああああ!!こんなお見合いお断りよ!!」

白哉は、幻覚の魔法で姫の腕に鱗を生えさせているように見せたのだ。

姫は混乱して、それが魔法による幻覚と分からず、分かったところで触感なども伴っているので、本当に鱗が生えたと感じるはずだった。

「ドラゴンに末代まで祟られるなんていやよ!いい男だけど、それよりも私の美貌がドラゴンの呪いで鱗にまみれて醜くなってしまうのはいやよ!」

姫君が連れていた従者たちは皆文官で、魔法に詳しくなかった。

「皆の者、早く国に帰って、穢れを祓うために神殿にこもりますわよ!」

そう言って、姫君は馬車に乗って、お見合いの舞台であった朽木家を飛び出していった。

「俺の呪い・・・・・」

「浮竹、大丈夫、浮竹に呪いなんてないよ」

「知っている」

「すまぬ、浮竹。兄のドラゴンというのを利用させてもらった」

白哉は、すまなそうな顔をして、浮竹に謝った。

「まぁ、結果オーライだからいいだろう。ドラゴンの鱗が生える呪いか・・・・実際に、あるんだがな」

「え、あるの?」

「邪竜の呪いだ。邪竜の中でも呪いに特化した者が使える、呪詛にある」

「ひええええ」

「大丈夫、俺は使えないし、大地母神の大神官長クラスになれば解ける呪いだ」

「大地母神の大神官長は、白金貨5万枚以上は払わないと、処置してくれないよ」

「だから、邪竜の呪いに特化した者の呪いだ。普通はそんな呪い受けない。初期段階であれば、神官の祝福でも治る」

「そういうものなの」

「ああ、そういうものだ」



「兄様、見合いは無事破綻したのですね!」

「ルキア、浮竹と京楽を巻き込まなくとも、断っていた」

「しかし、隣国の王族。上流貴族とはいえ、王族には・・・・・」

「私は、冒険者だ。緋真亡き今、他の妻を娶るつもりもないし、見合いを上の身分から押しかけられたら一応は見合いはするが、ちゃんと断る。余計な心配をかけてすまぬ、ルキア」

「兄様!」

「ルキア・・・・・・」

二人は見つめ合い、白哉はルキアの中に亡き妻の面影を見て、懐かしそうな顔をしていた。

「ルキア、一護と共に、今度恋次も一緒にSランクダンジョンに挑まぬか?」

「え、いいのですか。私と一護はまだAランクですよ!」

「Sランクの者が一人以上いれば、ダンジョンには入れる」

「やった!一護に、伝えてきますね。あと、恋次にも」

ルキアは、同じ朽木家に暮らすことになった一護と恋次を探しに行った。

ルキアは一護と恋次と結婚している。

一夫多妻ならぬ、一妻多夫である。


「はぁ。依頼料ももらえそうにないし、帰ろうか」

「そうだな」

「まて、浮竹、京楽」

「「ん?」」

「これをやる。迷惑をかけた償いだ」

「わお、神の秘薬エリクサーじゃない。白金貨20万枚はするよ。いいの?」

「ああ。我が家にはそれがたくさんある。使いことも少ないので、やる」

「金持ちは違うな・・・・・・」

浮竹と京楽も、Sランク冒険者として財はそこそこにあるが、さすがに上流貴族にはかてない。

もっとも、京楽が引き継ぐはずの上流貴族の財もかなりのものであるのだが、京楽は上流貴族であることを嫌い、ほぼ出奔した形になっている。

「ありがたくもらっておくよ。緊急時に使うかもしれないから、とっておくね」

神の秘薬というだけあって、エリクサーはどんな状態異常や怪我でもたちどころに癒してくれる。

浮竹は、エリクサーを見るのは初めてで、小瓶の中につまった虹色に光るきらきらした液体を、太陽の日に透かせて、飽きる事なく眺めていた。

「じゃあ、僕たちはこれで。行くよ、浮竹」

「ん、ああ。白哉にルキア、またな」

エリクサーをアイテムポケットにしまいこむ。

「エリクサーあるなら、邪竜討伐もできるな」

「うん。でも、今のところ活動中で駆除依頼の出ている邪竜はいないよ」

「まぁ、ドラゴンは珍しいし、その中でも邪竜はさらに珍しいからな」

白哉のお見合いは見事に破綻し、隣国の姫君はドラゴンの呪いを恐れて、報復行動などには出ずに、白哉とルキアは、また共にいれるのは変わりなかった。

朽木家に、ルキアの夫として婿入りした一護と恋次もいるのだが。

朽木家は静かなところだったが、ルキアが結婚してからというもの、ことあるこごとに一護と恋次が騒ぐので、たまに白哉が二人を氷漬けにしたりするらしい。


「さて、次の依頼は何かいいのあるかな~」

「お、ピクシーの捜索依頼だってさ。依頼料は少ないが、ピクシーを見てみたい」

「じゃあ、その依頼受けよっか」

京楽と浮竹は、早くも次のクエストを探すのであった。

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