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奴隷竜とSランク冒険者20

「ねぇ、浮竹、浮竹ってば!息をしてない!?そんな、浮竹!!!」

京楽は、人型のまま動かなくなった浮竹を抱きしめて、涙を流した。

「リザレクション!!!」

死者を蘇生できる魔法を使ってみる。

「生き返らない!どうして!浮竹ぇええええ!!!」

「呼んだか?」

ひょこっと風呂場から、浮竹が顔を見せたものだから、涙や鼻水でぐちゃぐちゃになった京楽を見て、浮竹は詫びた。

「ああすまない。今日、脱皮したんだ。人型で脱皮すると、死体みたいなのが残るの、言うの忘れてた」

「浮竹ぇぇぇぇ!!生きてる、生きてるんだね!?」

「ああ、生きているぞ。我ながら立派に脱皮したな。ただの死体に見える」

「浮竹のばかああああ!!心配したんだからねえええ!!!」

涙をぼとぼとと流して、京楽は風呂に入り、身を清めて衣服をきたばかりの浮竹にすり寄り、抱きしめてきた。

「うわ、鼻水と涙ふけ。服が汚れる」

「うきたけえええええ」

「ああ、俺が悪かった。落ち着くまで、抱いていていいぞ」

「ううう、ほんとに、心配したんだからね」

ぼとぼとと、涙の止まらない京楽。

京楽が泣き止み、落ち着くまで3時間はかかった。

「すまない。ほんとはドラゴン化して脱皮しようと思ったんだが、ドラゴン化しても死体みたいなのが残るから、処理がめんどうだから人型のままでいいかと思って」

「君が脱皮するなんて、初めて聞いた。どうして教えてくれなかったの?」

「いや、単純に俺が忘れてた。脱皮は10年に1回だから」

「10年に1回・・・・・奴隷時代も脱皮してたの?」

「ああ。死んだと思われて、逃げれそうだったんだが、うまくいかなかった」

京楽は、膝に浮竹を乗せて、その白い髪を手ですいていた。

「もう、しばらくは脱皮はしないよね?」

「ああ。早くても8年は先だ」

浮竹は、さらにすまなさそうに謝った。

「お前に、謝罪しておかなければならないことがある。体を重ね合わせ続けた結果、お前に俺の刻印が刻まれた。背中の肩甲骨あたりを見てくれ」

姿見の鏡やらで、なんとか肩甲骨の部分を確認すると、ドラゴン型の紋章があった。

「俺と同じ時間を生きる呪いを、お前は受けた」

「え」

「俺はドラゴンだ。人の数十倍は生きる。お前は人だ。百年もしない間に死んでしまう。でも、刻印を刻めば同じ時間を生きられる。俺は、お前に同じ時間を生きて欲しいと思って、刻印が刻まれるのを見て見ぬふりをしていた」

「僕はいいよ。浮竹と同じ時間を生きれるなら、何百年何千年生きたっていい」

「でも、知り合いは死んでいくぞ?それでもいいのか?」

「僕には、浮竹が一番だから。それに、まだまだ寿命を迎えるにも若すぎるし、まだまだ知り合いも生き続ける」

「うん」

浮竹は、ほろりと涙をこぼした。

二人して、泣いた。

「一緒の時間生きられるの、嬉しいよ」

「ただし、俺が死んだらお前も死ぬ。それでもいいのか?」

「君のいない世界に興味なんかない。構わないよ。君が死んだら、僕も死ぬ」

「京楽・・・・・」

「浮竹・・・・・・」

二人は、自然と唇を重ね合わせた。

「それにしても、この脱皮した抜け殻どうしよう」

「焼いちゃえば?」

「それもそうだな。外に出して焼くか」

人目のあるところで焼くと、人を焼き殺したと間違われそうなので、深夜にアイテムボックスの中に浮竹の脱皮したものを入れて、人気のない森までくると、魔法で火をつけた。

「おお、我ながらよく燃えるな。いい匂いがするだろう」

「ほんとだね。金木犀みたいな、甘い匂いがする」

「その昔、ムーンホワイトドラゴンの数が多かった頃、脱皮した品は上流階級者のお香として流行ったことがある」

浮竹は、この世界に生まれてまだ20年と少しだ。

ムーンホワイトドラゴンは成人するまでは早いが、成人してからは年を重ねない。

京楽も20代半ばほどの姿で、二人はこれから20代の容姿を保ったまま数百年、数千年を生きるのだ。

「浮竹に、永遠の愛を」

「なんだ、急に」

「うん・・・・浮竹が死んじゃったと思って、あとをおおうと思ってた」

「すまない・・・・俺が、事前に知らせていれば」

「うん。今度からは、些細なことでもいいから、知らせてね?」

「ああ」


その日の夜、浮竹は夢渡りをした。

異能力者のもう一人の浮竹が出てきて、その場に浮竹の脱皮した死体のようなものがあって、もう一人の浮竹はショックで言葉を失っていた。

「あ、俺は生きてるぞ。それは脱皮した後の残骸だ・・・・気絶しとる」

『うあ・・・・あれ?ドラゴンの俺?生きているのか!?」』

もう一人の浮竹も、涙をボロボロこぼして、ドラゴンの浮竹に抱き着いた。

『死んでない・・・・生きてる・・・暖かい・・・よかった』

「すまない。俺は、羽毛をもつドラゴンだが、10年に1回脱皮するんだ。脱皮すると、死体みたいなのが残る。これの処理も大変でな」

夢の中で、ドラゴンの浮竹は自分の脱皮したものに火を放った。

『わあああ、もったいない!』

「いや、死体コレクターでもない限りいらんだろ。燃やす」

完全に灰になったのを確認すると、もう一人の浮竹は涙を流していた。

「どうしたんだ?」

『いつか、俺やお前もこうなるのかと思って・・・・』

「思い込みしすぎだ。ほら、向こうの世界の京楽が待ってるぞ」

ゆらゆらと、夢が薄れていく。

向こう側の京楽の声が聞こえた。

『浮竹、朝だよ、起きて』

「じゃあ、俺は戻るな。またな、異能力者の俺!」

『ああ、またな』

すーっと、異能力者の浮竹もドラゴンの浮竹も消えて、夢の残骸だけが残った。



「浮竹、浮竹?」

「ん、ああ・・・夢渡りをしていた。もう一人の異能力者の俺に会っていた。俺の脱皮したのがあって、気絶してた。燃やしたけど」

「夢の中まで、脱皮してたの」

「なんかわからんが、夢の中でも脱皮してた」

「向こうの浮竹、ショック受けてたでしょ」

「気絶してた」

「あらまぁ。ちゃんと謝った?」

「ああ。謝った」

朝食を食べて、顔を洗って歯を磨き、身支度を二人で整える。

浮竹と京楽は、ピクシー探しのクエストに出かけるのであった。




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