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奴隷竜とSランク冒険者22

冒険者ギルドにいくと、見慣れた顔があった。

自分たちよりも一回りほど年上の、浮竹と京楽の姿だった。

なんでも、違う大陸からやってきたらしい。

「異世界じゃなしに、こっち世界でも同一存在がいたのか」

浮竹は、ハイエルフの浮竹を見た。

京楽は、ダークネスドラゴンの京楽を見る。

「はじめまして。僕は京楽春水、君もそうだよね?」

『うん、そうだよ』

「じゃあ、こっちもはじめましてだな。浮竹十四郎だ。そっちも同じ名だろう?」

『驚いたね。同じ存在がいるなんて』

『こっちの京楽と俺は、年若いな。まぁ、俺たちが年齢を重ねすぎているだけだろうが』

「ちなみに、そっちは何歳だ?」

浮竹が尋ねると、ハイエルフの浮竹は。

『千は余裕でこしてるな』

『ボクもそれくらいいってるんじゃないかな。500から数えるのやめたけど』

「ふむ。まぁ、一緒に食事でもどうだ?」

浮竹は、ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽を誘い、自分のパートナーである京楽を伴って、高級レストランに入った。

『うわ~、高そうな店だね』

『Sランク冒険者だっけ。そんなに儲かるんだな』

「ああ。俺たちは金があるほうだからな。寄付したりもするけど、贅沢をするときもある」

京楽と浮竹は、いつものようにメニューを頼むが、ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽はどれがどんな料理か分からずに、困惑気味であった。

「この二人にも、俺たちと同じメニューを」

「はい、かしこまりました」

「日替わりランチにしておいた。支払いは俺がもつから、好きなだけ食べるといい。食べたいメニューが他にあるなら、好きに注文してくれ」

『わお、太っ腹』

『俺たちも金はあるほうだが、負けそうだ』

4人は、いろいろ会話をした。

ムーンホワイトドラゴンの浮竹は、ダークネスドラゴンの京楽に興味をもったようだ。

『浮気するなよ』

ハイエルフの浮竹に、釘を刺される。

「あいにく、俺には京楽がいる。奴隷だった俺を買ってくれた」

『ボクも似たようなものだよ。捕まって売られてたけど、誰も買わなかったけど浮竹が買ってくれた』

「そうか。似たような境遇だったんだな。ダークネスドラゴンは希少種だからな」

『ムーンホワイトドラゴンのほうが希少種だよ』

いろいろ話しあって、ハイエルフの浮竹は魔法書をつくる著者であると知って、浮竹は興味深そうにいろいろ聞いた。

そして、豪華な昼飯を食べ終えて、冒険者ギルドの前で別れた。



「ねぇ、浮竹。ダークネスドラゴンの僕は、人が憎いみたいだね」

「ああ。捕まって売られてたんだ。そりゃ、人を憎むだろう」

「浮竹は、憎まなかったの?」

「俺は、卵時代から奴隷だったからな。憎んでも何もならないから、そういう感情は抱かないようにしていた」

浮竹は、感情の怒りが乏しいかんじがしていたのは、そのせいだったのかもしれない。

「人を憎んでもなんにもならないからな。自分の運命を呪うこともしなかった。いつか、自由が訪れるという希望だけ抱いていた」

「僕が君を買って、自由にしてあげた。世界は広いね。同一存在が他にあるなんて」

「そうだな」

浮竹と京楽は、高級宿に戻った。

浮竹が、本棚からごそごそと何かをとりだす。

「なぁに、それ」

「ハイエルフの俺が書いた魔法書だ。J.Uと書かれているが、十四郎 浮竹 だったんだな」

「その魔法書の魔法、会得してるの?」

「いや。まつ毛を長くする魔法らしい。民間魔法は興味ないので、覚えていない」

「あ、こっちにもあるね。J,U著、皿が自動で並ぶ魔法・・・・・・なんか、どうでもいい魔法だね。魔力使って魔法を行使するより、自分で並べたほうが早そう」

浮竹は、苦笑する。

「このJ,.U著の魔法のすごいところは、とてつもなくどうでもいい魔法ばかりのところだ。だけど、新しい魔法なので集めるコレクターはいる。ダンジョンの宝からでてきた魔法書は、ほとんどがJ.U、ハイエルフの俺の作った魔法だな」

「魔法を作るとかすごいね」

「ハイエルフの中でも古参の、魔法に秀でた種族だろうな」

「そういえば、なんで浮竹はこんな民間の魔法書もってるの?」

「実にくだらない魔法なので、ある意味すごいと思って集めてた。俺もコレクターの一人になるわけだ」

浮竹は、本棚の中から一冊の本をとる。

「まともな魔法書はこれぐらいだな。ヘルムーン。月の隕石を落とす、攻撃魔法だ。規模がでかいでの、禁忌に近い」

「へぇ、ハイエルフの浮竹って、普通に攻撃魔法も作れるんだ」

「作ろうと思えば、オリジナルの攻撃魔法を作れるんだろう」

「今度会ったら、何か魔法を作ってもらう?」

「それもいいな」

浮竹は、ヘルムーンの魔法書を開く。

「京楽も覚えてみるか?」

「うん・・・んー、古代語だねぇ。読めるけど、字が汚いね。まぁ、大体の作りは理解したよ。呪文を唱えたら、使えそうだ」

「じゃあ、ちょっと練習してみるか」

「え、こんな宿の中で?」

「異空間を作る。ミラーハウス」

浮竹が魔法を唱えると、鏡でできた扉が現れた。

その中に入ると、虚無の何もない空間が広がっていた。

「こんな魔法、覚えてたんだ」

「この前、Sランクダンジョンで宝箱から出た魔法書の魔法だ。著者は魔法大学教授のエリット・ヴァンネット」

「宝箱に魔法書いれる係は、ダンジョンマスターになるけど、ダンジョンマスターも大変だね。攻略されてお宝をもっていかれるたびに、補給しないといけないなんて」

「けっこう高額でバイトの募集口あるぞ」

「遠慮しとく。とりあえず、この空間は魔法を使っても外の世界に支障はないんだね?」

「ああ」

「月よ形作れ。涙の銀を流し、今そこに銀の雨となって降りそそがん。ヘルムーン!」

京楽が、覚えた魔法書の呪文を詠唱すると、月の隕石が降り、何もない空間を壊していく。

「ねぇ、これって・・・・・」

「空間を破壊しそうな勢いだな。普通に魔法作らせたら、多分すごい攻撃魔法ができると思うのに、民間魔法の、しかもどうでもいいのばっかり書いてて・・・・才能の無駄だな。勿体ないと思うんだが」

「そうだね。勿体ないね」

浮竹と京楽はミラーハウスの空間から現実世界に戻る。

「ごっそり魔力もっていかれたよ」

「威力と比例して、魔力の消費量も多いな。他の初級魔法を極めた魔法のほうが、威力もコスパもいいか」

「でも、僕はヘルムーンの魔法気に入ったよ。隕石を降らせるなんて凄い」

「隕石なら、カラミティメテオのほうが使い勝手がいいだろう」

「うーん、月ってところがいいんだよ。君は月竜でしょ?だから、気に入ったの」

「そうか。月竜と呼ばれるのは、あんまり慣れていないからな」

「ハイエルフの君も凄いんだね」

「みたいだな」

浮竹と京楽は、今までSランクダンジョンで入手した魔法書をかたっぱしから持ち出して餞別し、売るのと覚えるのとで分けるのだった。

実は、魔法書のほとんどは見た時に興味がわいた魔法以外、覚えてなかった。

J,.U、十四郎 浮竹著の魔法書の群れは、いらないものとして売られていくのであった。

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