好きから始まる物語 略奪
その日は休みだったので、動物園に来ていた。
平日だったので、客はまばらだった。
「ああ、あの虎・・・兄様のようだ」
「白哉に?」
「気品があり、気高く美しい・・・それでいて、大人しく見えて獰猛で・・・・・」
「白哉って獰猛なのか?」
白哉の、揺れ動くことのない綺麗な顔を思い出す。
「兄様を怒らすと、怖いぞ」
「お前何やらかしたんだよ」
「秘密だ」
ルキアは笑った。悪戯めいたその微笑みに、一護は見惚れていた。
「そろそろ昼だな・・・・休憩にするか」
昼食は、一護特製の弁当だった。
ルキアのものには一護の顔が、一護にはルキアの顔がかかれたキャラ弁だった。
「ぬう、勿体なくて食べられぬ」
「まだいつでも作ってやるから、普通に食え」
「約束だぞ!」
「ああ」
昼食をとった後は、パンダやコアラなど、かわいい系の動物を見て回った。
そして、動物園の一角にある触れ合いコーナーに行くと、兎とモルモットがいた。
「兎・・・・美味そう・・」
「こらルキア!ここの兎は愛玩用だぞ!」
「わ、わかっておる」
そう言いながら、よだれを垂らしそうな顔をしていた。
奥の方に進み、カンガルー、ワラビー、羊、鹿・・・・大型の動物に触れる。
エサをもって近づくとわらわらと寄ってきた。
「くすぐったい・・・・・」
ルキアは、餌を何度もやった。
3時頃に動物園を出て、今度は近くにある水族館に行った。
キラキラと泳ぐ、アマゾンコーナーのネオンテトラをルキアはずっと眺めていた。
「好きなのか、この魚」
「何故、こんなに美しいのであろう」
グッピーも泳ぐ次の水槽にきても、水槽の前にへばりついていた。
「なんでかまでは分からないけど、綺麗だな。ルキアのアメジストの瞳みたいだ」
「私の目は、ここまで美しくない」
やがて、海月の前にくると、ルキアはまた足をとめた。
「さっきの美しい魚たちとは違うが、これも美しいな」
ゆらゆらと漂う海月。
まるで、自分のようだ。
尸魂界がありながら、現世で人間の一護相手に現を抜かす、漂う海月。
「一護、大切な話があるのだ」
「なんだ?」
「その、家に帰ってからでよい」
「変なやつ」
そのままイルカショーを見て、ラッコを見て、貝がうまそうだと、ルキアは笑っていた。
家に帰宅しても、結局ルキアは大切な話とやらをしてくれなかった。
そのまま夜になり、ルキアは涙を零しながら、眠ってしまった一護を抱きしめ、そっとキスをした。
「たくさんの思い出をありがとう、一護・・・・・・」
明日。
明日、尸魂界に戻らなければならない。
次にやってこれるのは、いつか分からない。
伝令神機があるとはいえ、メールでは思いを伝えることに限度がある。
悲しいが、一護とは別れよう。
白哉に言われていた。
現世の時間を堪能して戻ってきたら、四楓院家の当主に嫁ぐのだ。
「一護・・・永遠に、貴様だけを愛している」
ルキアは、書き置きだけを残して。現世を後にした。
尸魂界に戻ったのだ。
「ルキア・・・・・・」
朝起きると、ルキアがいなかった。
さよならという言葉の書き置きがあった。現世を離れたら、四楓院家に嫁ぐと書いてあった。
一護は、けれど絶望していなかった。浦原のところにいくと、尸魂界に連れていくことできないと言われた。
「ルキア・・・・・」
手紙には、また会おうと書いてあった。
いつかまた、現世にやってくる。
例え、他の男の元に嫁いでも、永遠に俺だけを愛していと書いてあった。
信じよう。
ルキアの言葉を。
でも、いてもたってもいられなくて、空座神社まで来ていた。
神社や寺には、自然の力で尸魂界への穴が開くことがあるのを知っていた。
一護は見つけた。
小さな小さな穴を。
それを、でたらめな自分の霊圧をぶつけて、広げると、空間の狭間に入った。
穿界門から断界に入るのとは違い、どちらかというと黒腔(ガルガンタ)に似ていた。
微かな・・・本当に、微かなルキアの霊圧を辿って道を進む。
虚がたくさん出没した。たくさん殺した。
死覇装は、虚の返り血でべっとりと汚れていた。
やっと出口を見つけて、外に出る。
流魂街の外れにいた。
瞬歩で瀞霊廷にまで移動して、ルキアの霊圧を辿って四楓院家にまでくると、見張りの死神たちを蹴り飛ばして、四楓院家の当主の前にくる。
「一護!?貴様、どうやってここに・・・・」
ルキアが吃驚していた。
ルキアは白無垢姿で、まさに四楓院家の当主に嫁ぐ瞬間だった。
「四楓院夕四郎咲宗、悪いけどルキアは俺のものだ」
四楓院家の当主は驚くことなく、こうなることが分かっていたようで、ルキアの方を向いた。
「朽木ルキアさん。あなたを慕う死神代行がこう言っているのです。僕は、僕を想ってくれない妻などいりません。この結婚話、なかったことにしていただきます」
「四楓院夕四郎咲宗殿!」
「どうか・・・黒崎一護と、お幸せに・・・」
「一護・・・どうしてきたのだ・・・・」
ルキアはボロボロと泣きだした。
「愛しいお前が逃げるなら、追いかけて捕まえるだけだ」
「一護!」
「ルキア!」
ルキアは、白無垢姿であった。
「これって、略奪婚なのか?」
「貴様、ばか!」
朽木白哉は静かに怒っていた。
だが、義妹が一護と離れられないことを確認すると、長い溜息をついた。
「黒崎一護。ルキアの結婚を台無しにしたのだ。責任はとってもらう」
「ああ、いいぜ。この命をかける!」
「一護!」
ルキアに、心配するなと、視線を送る。
「散れ、千本桜・・・・・」
千の刃を、斬月で弾く。
「やめてください、兄様、一護!」
「ルキア、お前はどいていろ」
「兄様!」
一護と白哉は何度も切り結びあった。
お互い、細かい傷がいっぱいできて血を流す。
「兄は・・・・どうしても、我が義妹、ルキアを攫って行くのだな?」
「ああ」
白哉は、剣を収めた。
一護も、斬月をしまう。
「ルキア・・・・黒崎一護を想う気持ちに、変わりはないか?」
「ありません、兄様」
「そうか・・・・黒崎一護。4大貴族同士の婚姻を無駄にしたのだ。ルキアともども、おって沙汰を言い渡す」
「兄様!」
ルキアが目を見開く。
「黒崎一護、ルキア、一度朽木家に来い」
言われた通りに朽木家にいくと、一護もルキアも湯あみをさせられて、虚の血にまみれていた一護の服は洗われた。その血をがついた白無垢を着ていたルキアも、普通の恰好に戻った。
「さて、黒崎一護。私の大切な義妹であるルキアを、奪いにくるまで、愛しているのだな?」
「ああ」
「ルキア、正直に話せ。この黒崎一護を、愛しているのだな?」
「はい、兄様」
白哉は、天を仰いだ。
平日だったので、客はまばらだった。
「ああ、あの虎・・・兄様のようだ」
「白哉に?」
「気品があり、気高く美しい・・・それでいて、大人しく見えて獰猛で・・・・・」
「白哉って獰猛なのか?」
白哉の、揺れ動くことのない綺麗な顔を思い出す。
「兄様を怒らすと、怖いぞ」
「お前何やらかしたんだよ」
「秘密だ」
ルキアは笑った。悪戯めいたその微笑みに、一護は見惚れていた。
「そろそろ昼だな・・・・休憩にするか」
昼食は、一護特製の弁当だった。
ルキアのものには一護の顔が、一護にはルキアの顔がかかれたキャラ弁だった。
「ぬう、勿体なくて食べられぬ」
「まだいつでも作ってやるから、普通に食え」
「約束だぞ!」
「ああ」
昼食をとった後は、パンダやコアラなど、かわいい系の動物を見て回った。
そして、動物園の一角にある触れ合いコーナーに行くと、兎とモルモットがいた。
「兎・・・・美味そう・・」
「こらルキア!ここの兎は愛玩用だぞ!」
「わ、わかっておる」
そう言いながら、よだれを垂らしそうな顔をしていた。
奥の方に進み、カンガルー、ワラビー、羊、鹿・・・・大型の動物に触れる。
エサをもって近づくとわらわらと寄ってきた。
「くすぐったい・・・・・」
ルキアは、餌を何度もやった。
3時頃に動物園を出て、今度は近くにある水族館に行った。
キラキラと泳ぐ、アマゾンコーナーのネオンテトラをルキアはずっと眺めていた。
「好きなのか、この魚」
「何故、こんなに美しいのであろう」
グッピーも泳ぐ次の水槽にきても、水槽の前にへばりついていた。
「なんでかまでは分からないけど、綺麗だな。ルキアのアメジストの瞳みたいだ」
「私の目は、ここまで美しくない」
やがて、海月の前にくると、ルキアはまた足をとめた。
「さっきの美しい魚たちとは違うが、これも美しいな」
ゆらゆらと漂う海月。
まるで、自分のようだ。
尸魂界がありながら、現世で人間の一護相手に現を抜かす、漂う海月。
「一護、大切な話があるのだ」
「なんだ?」
「その、家に帰ってからでよい」
「変なやつ」
そのままイルカショーを見て、ラッコを見て、貝がうまそうだと、ルキアは笑っていた。
家に帰宅しても、結局ルキアは大切な話とやらをしてくれなかった。
そのまま夜になり、ルキアは涙を零しながら、眠ってしまった一護を抱きしめ、そっとキスをした。
「たくさんの思い出をありがとう、一護・・・・・・」
明日。
明日、尸魂界に戻らなければならない。
次にやってこれるのは、いつか分からない。
伝令神機があるとはいえ、メールでは思いを伝えることに限度がある。
悲しいが、一護とは別れよう。
白哉に言われていた。
現世の時間を堪能して戻ってきたら、四楓院家の当主に嫁ぐのだ。
「一護・・・永遠に、貴様だけを愛している」
ルキアは、書き置きだけを残して。現世を後にした。
尸魂界に戻ったのだ。
「ルキア・・・・・・」
朝起きると、ルキアがいなかった。
さよならという言葉の書き置きがあった。現世を離れたら、四楓院家に嫁ぐと書いてあった。
一護は、けれど絶望していなかった。浦原のところにいくと、尸魂界に連れていくことできないと言われた。
「ルキア・・・・・」
手紙には、また会おうと書いてあった。
いつかまた、現世にやってくる。
例え、他の男の元に嫁いでも、永遠に俺だけを愛していと書いてあった。
信じよう。
ルキアの言葉を。
でも、いてもたってもいられなくて、空座神社まで来ていた。
神社や寺には、自然の力で尸魂界への穴が開くことがあるのを知っていた。
一護は見つけた。
小さな小さな穴を。
それを、でたらめな自分の霊圧をぶつけて、広げると、空間の狭間に入った。
穿界門から断界に入るのとは違い、どちらかというと黒腔(ガルガンタ)に似ていた。
微かな・・・本当に、微かなルキアの霊圧を辿って道を進む。
虚がたくさん出没した。たくさん殺した。
死覇装は、虚の返り血でべっとりと汚れていた。
やっと出口を見つけて、外に出る。
流魂街の外れにいた。
瞬歩で瀞霊廷にまで移動して、ルキアの霊圧を辿って四楓院家にまでくると、見張りの死神たちを蹴り飛ばして、四楓院家の当主の前にくる。
「一護!?貴様、どうやってここに・・・・」
ルキアが吃驚していた。
ルキアは白無垢姿で、まさに四楓院家の当主に嫁ぐ瞬間だった。
「四楓院夕四郎咲宗、悪いけどルキアは俺のものだ」
四楓院家の当主は驚くことなく、こうなることが分かっていたようで、ルキアの方を向いた。
「朽木ルキアさん。あなたを慕う死神代行がこう言っているのです。僕は、僕を想ってくれない妻などいりません。この結婚話、なかったことにしていただきます」
「四楓院夕四郎咲宗殿!」
「どうか・・・黒崎一護と、お幸せに・・・」
「一護・・・どうしてきたのだ・・・・」
ルキアはボロボロと泣きだした。
「愛しいお前が逃げるなら、追いかけて捕まえるだけだ」
「一護!」
「ルキア!」
ルキアは、白無垢姿であった。
「これって、略奪婚なのか?」
「貴様、ばか!」
朽木白哉は静かに怒っていた。
だが、義妹が一護と離れられないことを確認すると、長い溜息をついた。
「黒崎一護。ルキアの結婚を台無しにしたのだ。責任はとってもらう」
「ああ、いいぜ。この命をかける!」
「一護!」
ルキアに、心配するなと、視線を送る。
「散れ、千本桜・・・・・」
千の刃を、斬月で弾く。
「やめてください、兄様、一護!」
「ルキア、お前はどいていろ」
「兄様!」
一護と白哉は何度も切り結びあった。
お互い、細かい傷がいっぱいできて血を流す。
「兄は・・・・どうしても、我が義妹、ルキアを攫って行くのだな?」
「ああ」
白哉は、剣を収めた。
一護も、斬月をしまう。
「ルキア・・・・黒崎一護を想う気持ちに、変わりはないか?」
「ありません、兄様」
「そうか・・・・黒崎一護。4大貴族同士の婚姻を無駄にしたのだ。ルキアともども、おって沙汰を言い渡す」
「兄様!」
ルキアが目を見開く。
「黒崎一護、ルキア、一度朽木家に来い」
言われた通りに朽木家にいくと、一護もルキアも湯あみをさせられて、虚の血にまみれていた一護の服は洗われた。その血をがついた白無垢を着ていたルキアも、普通の恰好に戻った。
「さて、黒崎一護。私の大切な義妹であるルキアを、奪いにくるまで、愛しているのだな?」
「ああ」
「ルキア、正直に話せ。この黒崎一護を、愛しているのだな?」
「はい、兄様」
白哉は、天を仰いだ。
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